第39話
「では、裁決を行う。しかしその前に、両者から意見を聴取する。まずはカラ・リンド男爵から述べよ」
国王が命ずると、あらかじめ用意していたようで、男爵はすぐに懐から紙を取り出して朗読を始めた。
「ルイス・プロークグナートルへ対する訴追は以下の通りである。なお、以下、ルイスを甲とし、カラ・リンド男爵を乙とする。
一つ、国境線の侵犯。これは、陛下がお定めになられた勇士団領の境界線を、甲が侵犯したことによる。第3代の裁決によれば、『故意または過失を問わず、定められた境界線を超越した者は、国王大権の侵犯である』とした。この裁決に従い、甲は侵犯に対する償金を乙に対して支払うべきである。なお、金額は別に定める。
一つ、公共利用権の侵害。これは、公共のものである温泉を、甲が占有し、甲の利益のために用いていることである。第2代の裁決によれば、『公共の利用であるものは、常に公共のために利用されなければならない』とした。この裁決に従い、甲は占有している温泉を、一般に無料で開放しなければならない。また、過去に入浴したものに対して、償金を支払わなければならない。
一つ、資材の浪費。前項によって公共利用権を侵害した行為によって、整備された温泉街は、また違法性を伴うものである。そのため、これらの建材も、また違法性に問わなければならない。よって、違法性に問われる建材を利用したとのことで、償金を支払わなければならない。
以上、3つの罪状に対する裁決をよろしくお願いいたします」
男爵は紙をたたみ、国王へと差し出す。国王はそれを受け取ると、机の上へとそっと置いた。
「カラ・リンド男爵の言い分は了解した。他に述べる事柄はないか」
ずっと立ったままの男爵だが、国王からの下問に対して、何もないと答えた。
「うむ、座りなさい」
「はい」
そして男爵は座ることができた。