第3話
戦場へは、脱走兵が出ないように見張りがつけられつつ、1週間かけて到達した。かなり激しい戦いになっているようで、高台に置かれている徴集兵用の幕屋は、ほとんど誰もいなかった。
だが、その幕屋に、一人の公爵が待っていた。
「ようこそ、この戦場へ」
その男性公爵は、ルイスたちが幕屋の中に入りきらないと見るや否や、全員を一度外へと出した。それから、演説の続きをはじめる。
「改めて、ようこそこの戦場へ。私はマウンダイス公爵だ。この戦争の司令官をしている。さて、君たちには期待をしている。なにせ、我々の軍は劣勢に立たされている。だが、必ずや君たちのおかげでこの戦争に勝利ができるだろう」
演説慣れしているようで、どうやら、徴集兵が来るたびに、似たような話をしているようだ。徴集兵の方はと言えば、一応聞いているふりはしている。だが、誰もがここで死にたくはないと思っているので、士気はかなり低かった。その中で、ルイスだけが違っていた。
「よし、ではこの中で組を作ってもらう。ここにいる人らで5人組を作ってもらい、そのうちの一人が組長となってもらう。敢闘団、勇士団の団員がなるべきなのだが、人数が足りないのでな」
敢闘団、勇士団というのは、騎士階級の最下層の団である。敢闘団の方が上で、敢闘団に入団すると同時に、準爵という最下位の爵位を授かる。彼らは戦時には国王の名のもとで戦闘を行う専門集団である。ゆえに、このような時には、徴集兵の上に立ち、指揮を執ることになる。
一方で、最前線で戦闘を行うために、死亡率が最も高いことになる。そのために、このように人員欠乏となりやすいのだ。
ルイスは、公爵が言うやすぐに、近くにいたランゲルス、エルラ、シュトール、クリスに声をかける。
「な、組になろう」
「他の人よりも、生き延びれそうだしね」
エルラがすぐに答える。
「よし、じゃあ、俺らで組な」
そして、組長としては、誰も迷いなくルイスを選んだ。そのことを公爵へ奉告すると、うむと公爵はうなづいた。ただ、それだけだった。