第35話
ルイスたちが温泉を開いてから5年。リンド男爵は、いよいよ、王へと告訴を行うことを決めた。宣言をした通り、開湯から5年は待ったのだ。
ルイスたちに訴状が届いたのは、リンド男爵が国王へと訴え出てから半月後だった。そのころには、温泉街も大繁盛し、マウンダイス公爵による別荘の建設が始まっていた。この日、ルイスたちは勇士団領庁舎にいた。ルイスは執務室に詰めていると、クリスが入ってきた。
「訴状?」
「そう、訴状。お隣のリンド男爵領の権利を侵害しているという話らしいよ」
5年間でルイス以外の4人も、文字を読めるように勉強していた。だから、読みはしっかりできるようになっていた。計算はランゲルスが特に必要だろうと言うことで、彼女だけはしっかりと勉学に励んでいる。そのために、ルイスは家庭教師を雇い、彼らに一から教え込んでいた。
「とはいっても、権利侵害なんてこれっぽちもしてないぞ。一体どういうことなんだ」
「さあ。これだけだと何とも言えないなぁ。とりあえず、陛下が裁定のために会合を開くから、申し開きがあれば集まれってさ」
「いつだよ」
訴状がようやくルイスの手に渡り、クリスは執務机に両手を置きつつ、ルイスの答えを聞こうとした。
「半月後じゃないか。今からでも行かないと」
そう言って、ルイスは正装の準備をする。それからクリスにルイスは尋ねた。
「どうだろ、他の人らに話して、同行する人を集めてくれないか。できれば4人ほど」
「よっしゃ分かった」
クリスが意気込んで、あっというまに執務室から出ていった。




