第31話
翌日、樽の中身を数えると、なんと数千プロウになった。それらは全て、山のふもとにある村に返すことにした。この金が詰まった樽を村長へ託すことにしたルイスは、5人全員で村長の家へと向かい、引き渡すこととなった。
「ありがとうございます、勇士さま」
村長の建物には、大きな教会が併設されていて、そこで樽を村長へと引き渡した。ルイスは村長と握手を交わし、感動のあまり泣き出している村長から声を掛けられている。
「当然のことをしたまでだ」
教会は、全村人が揃っているようだ。それも、ふもとの村だけではなく、ルイスが着任したこの勇士団領に属している全ての村から来たようだ。合わせて100人にはなるだろう。そのうち4分の1ほどは高齢であるが、半分は働き盛りのような感じだ。
「それにしても……」
ルイスは集まってくれた人らの肌に気が付いた。老若男女関係なく、肌がきれいなのだ。きめ細かい肌を維持している。畑仕事でつかれているであろう人も、肌荒れ一つないのだ。
「それは、湧水に秘密があるのです」
村長がルイスたちに話す。どうやら、温泉が湧いているようだ。だが、肌がきれいになると言うその効能を聞いて、真先に飛びついたのはランゲルスとエルラの2人だった。女である2人は、他の3人よりも美肌といった単語に敏感のようだ。
「そう言えば、ここに来た時からあの川は暖かかったね」
エルラが、思い出したように言う。洗濯用の水源としてしか使っていなかったが、何やら考えがあるランゲルスは、エルラと共に湧水を使えないかと考えるようになった。