第25話
「どうかな」
儀式用の衣装に着替えたルイスは、同じ部屋にいた友人たちに服装を見せる。あの王都襲撃事件から2ヶ月が経ち、王都もやっと復興の兆しが見えてきた。そんな中、襲撃事件で功績があった者の栄典授与が行われることになり、ルイスは晴れて勇士団への入団が認められた。
「いいんじゃないか」
クリスが、ルイスの上から下までを眺めて、あっさりとした感想を述べた。そこに、ブニークトがやってきた。
「うん、ちゃんと着付けができているようだな」
「先輩、ありがとうございます」
ブニークトに礼を言うと、アッハッハとブニークトは笑った。何がおかしいのかわからないルイスたちに、ブニークトは簡単に説明を始めた。
「今日、陛下から勇士団へ入団を承認された時点から、僕たちは同志だ。同一階級だとさほど上下はないんだよ。まあ、先輩ではあり続けるけど、それ以上の意味は基本ない」
「そうなんですか」
ルイスは驚いたように言った。さあ、そんなことよりも、とブニークトがルイスの肩を掴んで言う。
「勇士となる覚悟はあるか」
「……はい」
ルイスは若干の間を空けて、ブニークトに返事をした。それでいいとブニークトが言ってくれ、そして全てが整った。
「……以上の功績を認め、ここにルイス・プロープグナートルを勇士団の一員として認め、勇士領の一部の領有を認める」
国王は、平たい儀礼用の剣で、ルイスの両肩を軽く叩く。ルイスは一段下になった踊り場のようなところで、入団儀礼を受けていた。
勇士団は、一応は騎士団のひとつだ。そのため、騎士団の入団儀礼と同様の手続きをとることになっている。一方で、今回、国王がその入団儀礼を執り行っているが、本来であればルイスが入る勇士団団長が行うべきである。それほどに、国王がルイスにかける思いが強いということであろう。
ちなみに、勇士団は1つではなく、国中のあちこちに存在している。今回、ルイスが加入する勇士団は、ブニークトが副団長を務めている勇士団である。そして、彼らの勇士領は、王都からみてルイスたちの村を抜け、山間にある。そのため、これからその地域へと出向くことになっているのだ。
すべての儀式が終わると、国王は自ら手をとりルイスを立たせ、軽く抱擁した。そして、傍らに控えていた侍従から、1つのメダルを手渡した。
「勇士団員として、貴殿を認める。ゆえに、このメダルを授ける」
勇士団メダルと通称されるメダルだ。表には国王の紋章が、裏には各勇士団の紋章が刻まれている、純銀製のメダルである。直径5センチメートルか、もう少し大きいぐらいのメダルで、通常は左胸に佩用することになる。
「感謝いたします。我が忠誠をこのメダルに賭けましょう。我が命を、この剣に賭けましょう。我が体を、この鎧に賭けましょう」
3つの賭けと呼ばれる忠誠の儀式だ。平たく言うと、忠誠を魂とみて、魂と命と体という三位を、国王への忠誠、ひいては神への忠誠と置き換えているのだ。ゆえに、国王に従えなくなった場合、神への離反とされ、国王から離れることができるという理屈だ。
「よろしい、歓迎しよう、ルイス・プロープグナートル。勇士団員よ」
これで、全て終わった。後は、祝福の拍手が、会場を包み込んでいた。