第254話
「陛下、お持ちしました」
「そこにおいてくれ」
侍従が持ってきたのは木箱だった。
それも恭しく目線の高さに掲げて部屋へと入ると、それをマウンダイス国王が示したサイドテーブルの上へ置く。
「宰相となってから忙しい日々を続けていただろう。だが、今まで公爵章はあったが、宰相のための記はなかった」
と、ここでサイドテーブル上にある木箱の箱を開ける。
侍従は開けられた箱を斜めに持ち上げて、ルイスへと中身をみえるようにした。
「頸飾、特別に作らせたものだ。勲章のように胸に佩用するものは多数もあるが、頸飾となれば公爵章にあるものだけだ。さらにこれはその中でも特別な地位を占めることを示すためのものである」
国王は宣言をし、木箱を閉じさせて岩屋へと渡させる。
実際に手渡しをするわけではなく、侍従が岩屋の横に立つだけであったが、これで引き渡しは済んだということのようだ。
「このようなもったいないもの、一介の臣下である自分にはもったいないものであります」
「ルイスよ、君はすでに一介の臣下ではない。私の大切な、家族と同義ともいうべき存在である」
座ったままではあるが、国王はルイスへとにこやかな顔で伝えた。




