第13話
ルイスは訓示を受け、それから第9区へと向かうことになった。
「本日は、よろしく願います」
「こちらこそ、どうぞよろしく」
二人一組が大原則であり、ルイスもその原則に従って相棒がいる。挨拶をしている相手は、その相棒であるエンディケール・ブニークトだ。
エンディケール男爵の長男であり、唯一の息子であるブニークトは、ルイスの先輩に当たる。すでに勇士となって2年が過ぎ、仮にルイスが勇士となった時、そのパートナーとして行動をすることになる予定である。もっとも、パートナーと言っても、名ばかりのもので、訓練の時や、パーティーといった行事の時に共に居るだけだ。平時は、互いに与えられた領地に居ることが多い。
「第9区だったな」
「そうです」
ルイスは、ブニークトのすぐ横を、緊張しながら歩いている。真新しい甲冑や帯剣は、誰であろうと緊張することであろう。
そして、町の人の目は、新人を見守る暖かい視線になっている。ルイスは、そんな状況でブニークトに尋ねる。
「第9区は、もうちょっとだな」
「はい、先輩」
ルイスたちは、ちょうど第5区を通っているところだ。ここは抜け道になってて、勇士訓練場運動場から第9区へのほぼ一直線の道になる。
「第9区は、最近強盗が出没しているという話をよく聞く。心していないとな」
「分かっています、先輩」
そう言いながらルイスは剣の柄に手をかけながらも、周囲の警戒を怠らずに、どっしりとした足取りで歩いていた。




