第12話
ルイスは、マウンダイス公爵のそばにいた。王宮内の、玉座の間そばにある、15畳かもう少し大きめの衛兵詰所の中だ。本当ならば、隊長1名隊員20名で、そのうち隊長含む5名がいるはずなのだが、今はルイスと公爵しかいない。今日のルイスの役割は、街の中を巡察し、安全を確保することである。マウンダイス公爵は、王宮の警護隊長としてではあったが、ルイスの後見人ということもあり、アドバイスを授けているところだ。
「いいか、ルイス。王都の巡察は、決められた時間に、決められた区域を歩き、犯罪を未然に防ぐことに、その意味がある」
「はい、閣下。心得ております」
ルイスの返答を聞き、公爵は、うんうんと満足そうにうなづく。そして、部屋の中を半歩ほど歩き、再びルイスに尋ねる。
「そう言えばルイス。君の巡察域は何区なんだ」
「閣下、第9区があてがわれております」
「ふむ、あそこか……」
王都の区域は、王宮がある第1区を中心とし、内環状道と呼ばれる道路で第1区とそれ以外が分けられる。内環状道の外側は、放射状に道路がある。道路は16本あり、それぞれに建国の英雄と呼ばれる人たちの名前がつけられている。王都は外環状道と呼ばれる道路までで、その外側は、今はあまり使われないが、石積みの城壁と堀がある。ちなみに、内環状道にも、同じ構造の城壁と堀がある。第9区は、商店が立ち並ぶ商業地域であり、小さな店が所狭しとある、王都建造以来の街だ。
「あの辺りは、強盗が出るという噂がある。心してかかれよ」
「閣下、心得ました」
ルイスは敬礼し、公爵の前から走って持ち場へと向かった。まずは、集合場所である、勇士訓練場運動場へと向かうことになる。




