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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第5部「二つの王国」:第1章「領土」
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第112話

「ここだよ」

 さっき来たようで、騎士団長を店主は少し驚いた表情で迎えた。

「団長閣下、またいらしてくださるとは……」

「この者らに、例のものを」

 挨拶もせずに、騎士団長は店主へと告げる。この金額でな、と金貨を1枚渡すと、目を丸くして、それですぐに元の顔つきに戻ってから分かりました、と答えた。少しお待ちください、と店主が言い、部屋の奥へと歩き、コップを2つ持って戻ってきた。

「君らはまだ飲んだことがないだろう。この店の裏メニューである酒類だ。フルーツ果汁を複数混ぜ合わせたうえで発酵させ、そこに胡椒など香辛料を加えたものだ。飲んでみるがよい」

 だめなら全部飲んでやるから気にするな、と騎士団長は二人に笑いながら言ったが、二人は笑えるような状況ではない。ここで飲み干さなければ、おそらくは騎士団長の顔に泥を塗るようなことになるだろう。そうならないように、目配せをし、一気に飲み干す。

「あ、おいしい……」

 ランゲルスがつぶやく。ルイスは何も言わず、飲み干したコップを店主へと返した。

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でございます、いかがでしたか。何かございましたら、何なりとお申し付けください」

 店主がコップを受け取りながら答えた。騎士団長がそれを見ながらルイスへと尋ねる。

「どうだ」

「なかなかおいしかったですが、わたしにはあまり合わないようです」

「ふぅむ、そうか。なら仕方ないな」

 ルイスも行こうかと思い、ランゲルスへと向くと、彼女はお酒をじっと見ていた。

「どうした」

 ルイスが尋ねると、考え込んでいるようだ。そしてランゲルスはルイスへと向いて聞いた。

「ねぇ、酒類は確か私たちのところでは売ってなかったわよね。これはもうかる気がするわ」

 ランゲルスは、特に儲かる方向への嗅覚に優れている。だから温泉街なんて言う突飛な発想もできたのだし、そのために大金持ちにもなれた。そのことはルイスはよく知っている。だから、こう言ってきたとき、ルイスはためらわなかった。

「じゃあしよう。ただ陛下の即位式が終わってから、詳しく話し合うことにしよう」

 ルイスが提案すると、ランゲルスは軽くうなづいた。そしてコップを戻し、騎士団長の後ろ2歩をルイスに続いて歩いて、即位式の会場へと向かった。

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