第99話
決闘にもルールがある。証人や立会人についてもだが、闘っている当人にも、それなりのものが課せられる。攻撃する場所、周囲の状況、防御の姿勢、そして終了の方式。これらはあらかじめ、一定の共通認識があるため、話し合うこともなく行うことができた。攻撃場所というのは、基本的にすでに鎧があるところとされ、武器は主武器として剣を、さらに損傷による継戦不能となった時に備えて、スペアの武器を持つことが許されている。ただ、ルイスはそれを持たず、相手方となる隊長は槍を持っている。防御は鎧がすることから、態勢をとることは腕などではじくようにする程度とされた。最後の決闘の終了の方式は、相手が死ぬまでや傷がついた時点で終わりという複数の方式がある中、武器が壊れスペア武器もなくなった時か地面に倒れ起き上がれなくなった時のどちらかということになった。
先手はルイスだった。ジャブの意味合いも込めて、軽く斬りかかる。それを隊長は左へと避けた。隊長の反撃も軽いものだ。剣を振りかぶり、大上段から一気に振り下ろす。ルイスは受けることもなく、右へと避ける。
ジリジリと反時計回りに少しずつ回転をしていると、思い切り一歩隊長が踏み込んだ。ルイスはすぐに対応し、腕を使ってそれをいなす。
「やるな」
「そちらこそ」
ルイスは隊長からの声に答える。それからは乱打戦だ。剣は鈍器ではないが、まるでそのように使っている。殴りかかり、斬りかかり、そしてまた殴る。鎧とぶつかるごとに火花が散り、周りの観客が息を飲む。しかし、まだ動き続ける。
何十回という殴り合いの果てに、まず隊長の剣が負けた。ルイスが剣を真っ直ぐに突くと、それがたまたま剣の腹に当たり、そこからパッキリと折れた。ルイスの勢いはそれで止まらず、グングンと力とスピードを増していき、そして最初の致命傷を隊長へと与えることとなる。