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我が帝国は、成れり。  作者: 尚文産商堂
第2章「才能の開花」
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第9話

 大広間に入ったルイスたちは、領主と対峙することになった。

「私が相手にするのは、ルイス・プロープグナートル、ただ一人」

 領主は、この大勢の兵士に囲まれながらも、怯む様子は一切ない。それどころか、こちらを威圧するように、仁王像の如き表情で睨みつけているほどだ。

「ここにいるぞ」

 ルイスは、そのような戦場の異様な空気の中、領主の前に名乗り、そして歩み寄った。領主は片眉を上げることなく、誰一人として音を立てないこの空間の中で、声を発した。

「なぜ、我が領土を侵す」

「こちらは、ただ国王陛下に忠誠を誓い、戦をしている。疑義は、ダッケンバル国王陛下に申されよ」

「ならば、問おう。国王への忠誠は、揺るがぬか」

「一切揺るがぬ。現在の国王陛下は聡明なるお方である。故に、こちらは忠誠を誓う」

「……そうか、話し合いで解決とはいかぬか」

「その通り。我が力は陛下への忠誠。この剣によって、お主を斬る」

 それから、どちらともなく剣を構えた。音もない世界、何一つ動かないこの空間の中で、二人は同時に動いた。

 ルイスの剣は、領主の剣をしっかりと受け止め、そして火花と共に跳ね返す。だが領主もさすがと言うべき身のこなしで、したから上から、次々とルイスを苦しめる。


 だが、勝負は一瞬の隙から分かれた。それは、風の音か、だれかのくしゃみか。それはもうどうでもいいこと。金属性の高いキンという音が部屋に響き渡り、その直後ルイスの剣が領主の首元に向けられた。

「……貴殿の負けだ」

「……そのようだな」

 それだけで、もはや一目瞭然だった。誰が勝ったか、誰が負けたか。周りから兵がじりじりと近づいてくる。だが、動けないと分かるや否や、すぐに近くの紐で領主を縛り上げてしまった。

 それから数分後、ゆっくりとマインダイス公爵がホーンラル公爵を連れて、部屋に入ってきた。

「ふむ、すでに勝敗は決したようだな」

「はい、閣下」

 ルイスが(こうべ)を垂れ、マインダイス公爵に答える。そのすぐ後ろでは、後ろ手に縛られたまま立たされた元領主の姿があった。だがその姿は、まさか敗者だとは言うことができず、キッと前を睨み、誇りまでは負けていないといった感じだ。

「この者は、本来ならば極刑に値する。だが、ダッケンバル国王陛下の遠縁にあたる。そのため、特別な場所に留置することが決まった。これは王令である」

 その場でマインダイス公爵が、元領主に告げる。

「いいだろう。何処へでも連れて行け。我はいずこであろうとも、ダッケンバルを呪おう」

 だが、その呪いの言葉は最後まで言うことができなかった。兵士にマインダイス公爵が猿轡をするように命じたためだ。

「連れて行け」

 ホーンラル公爵にマインダイス公爵が命じた。そして、その一行が廃墟となった大広間の中からいなくなると、ルイスの方に向き直った。

「ルイス・プロープグナートルと言ったか」

「はい、閣下」

「おぬしは、この戦において、多大なる貢献をした。それゆえ、特別に勇士見習いとして、王都の士官学校へ入学を推薦する。ついてくるか?」

 ルイスは、一瞬だけ、近くにいた幼馴染を見た。だが、思いを振り切るようにして、真っ直ぐに、迷いなくマインダイス公爵へ答えた。

「閣下、喜んで行かせていただきます」

 マインダイス公爵はルイスの返答に満足そうにうなづいた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ただの農民じゃないのか??教育がすごいのか?違和感ハンパない
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