ワタシと。
順番は数日後、修正します。
笹本くんは誰かとデートとかしたことある? と聞くと笹本くんはヘラヘラしながら、うん。といった。
最近の笹本くんはそこはかとなく嬉しそうで、幸せそうで、私が何をしても怯えたりしなかった。
「うん、先生と少し」
あっそう。
空気とか相手の気持ちとか読まずに彼はヘラヘラと答えた。聞いてもないのにその概要を伝える。嫌がらせ?
その癖、ワタシとアイツの間にどういうことがあったのかとかは聞いてこない。自分から他人に近寄ろうとしないのは相変わらずで、凄くそれが嫌だった。
「あ、あの。いや、きょ、今日ね、今日は早く終わらしてほしいんだ。あの、姉さんが僕の作った料理以外食べたくないっていうからさ、アハハ」
あの、キチガイが、まともなものを食べようとしていることに驚いた。
嘘でしょう?
「嘘じゃないよ、姉さんは僕の手料理しか食べない」
だってあの女……。
「もう止めたんだ。止めてくれたんだ、僕のために。だから、もう僕は秋穂ちゃんに脅される必要性もないんだ」
は? じゃあ何で今日もここにいるの?
「秋穂ちゃん、それじゃ納得しないかなって思って。秋穂ちゃんもいろいろ辛いことがあったから僕にそうしてるんじゃないかなって。そうなら、僕、秋穂ちゃんの友達だし、僕には秋穂ちゃんと違って秋穂ちゃん以外の友達いないし、友達なら友達の為に何かしてあげないとって思ったんだ」
そういってニコニコ彼は笑う。好きなだけ蹴っていいし、殴っていいし、叩いてもいいけれど、時間は守ってほしいっていう。
ワタシは何だか舐められたような気がして彼を押し倒した。押し倒して、ワイシャツをボタンごと引き裂いた。彼の滑らかな鎖骨が夕日の色に染まる。
「そ、そういうこと……友達同士じゃ、しないんじゃないかな」
ワタシは友達同士が嫌だった。友達以上の関係でありたかった。
だから。
「でも秋穂ちゃんがしたいならいいよ。僕は秋穂ちゃんの友達だから」
その友達はカタカナで表現するトモダチのように冷え切っていて、歪んでいて、冷たかった。
ワタシは他人がワタシに魅力を感じていることに敏感だ。ワタシは傍目に見ても綺麗だし可愛いし、性格がいい。だから周りは羨んだ目でワタシを常に見てきたし、その恩恵に与ろうと取り巻いた。その眼差しが何とも言えなかった。
それなのに、笹本くんはワタシにこれっぽちも美しいだとか可愛らしいという感情を持っていなくて、ただ同情していた。慈愛しかそこにはなかった。
ああこの子はきっと、何かしらに苦しんでいて、心が疲れていて、当たり散らしたいんだろうというような、大人が子供を型にはめるようなそういう目でワタシを見ていた。
そうじゃない。そうじゃないの。
ワタシはただ、君が、笹本くんが……。
ぽっかりと開いた口からは言葉が出なくて、ワタシはただ強く彼の胸を叩いた。
笹本くんの馬鹿。