ぼくとねえさん。
「そんなものよりもあれ、食べきらないと。ほら、腐っちゃうじゃない。今ね、ソーセージ作ってるのよ。貴方も……どうしたの? 何で吐いてるの? よしよし」
どんなものにも限界がある。僕にも限界というものがある。
痛みや苦痛は耐えられる。羞恥や性的な行為も目を瞑れば耐えられる。陵辱も現実を忘れればいい。
でも、それはいつか崩れ落ちる。耐え切れなくなった防波堤から水が溢れ出るように僕の感情はそこそこに限界を迎えていた。
毎日、嫌がらせを受けて、狂気の館に足を向ける日々。
秋穂ちゃ……さんは僕を毎日虐める。心をひねり上げるような陰湿な嫌がらせをしたり、野球のボールを僕に何度も思い切りぶつけたりしてくる。学校を休むと、家にまでやってくる。姉さんがいない時を狙って、僕をせせら笑いにやってくる。
先生は僕の携帯電話に“記念写真”を送ってきたり、誰も見てないところで無理やり唇を押し付けてくる。僕は先生を見る度に吐き気を催すようになり、ついにこの前の授業の時に吐き出した。
姉さんは毎日部屋に篭っていて、僕の買ってきた料理には口をつけない。偶に髪を振り乱し、叫び声を上げながら部屋に入ってきて僕と、する。
みんなみんな狂ってる。
自分でいうのもアレだけど長く持った方だと思う。
だから死のうかなと思った。
簡単なのは校舎の屋上。でも屋上を覗いたら、先客がいた。網目の向こう側に立っていて、じっと下を睨んでた。側で目付きの悪い女の人がおかしそうに笑ってた。
次に割腹死をしようと思って包丁を探した。家の包丁は姉さんが部屋に持って行ってしまったので、断念。
今度は首を吊ろうと思い、縄を買って、背の高い木を探したけれど背の高い木は僕の身長では縄を掛けれない。水死しようにも顔を上げてしまう。道路や線路に飛び込むのは迷惑が掛かるからできない。
僕はどうしたら死ねるだろうかと考えて、何故僕が死ななければならないのだろうと思った。僕は何か悪いことをしただろうか。姉さんのあれだって姉さんが勝手にやったことで僕は関係なくて、秋穂ちゃん……さんのアレだって僕は悪くないのにスタンガンとか催涙スプレーとか掛けられて、先生も僕にひどい事をするようになって。ああ、僕全然悪くないじゃないか。
姉さんをかばう必要なんてこれっぽちもなくて、姉さんのせいで僕はおかしくなって、僕の人生はおかしくなって、ああ死んじゃえよもう。全員死んじゃえ。
みんな死んじゃえ……ということで僕はみんなを殺すことを考え始めた。