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推理

クマを探せ!

作者: 平嶋 翠梨
掲載日:2026/02/14

三匹のクマの物語の中に、“クマ”や“くま”というワードが出てきます。是非、探してみてください。

個人企画『クマ祭り後夜祭』参加作品です。

 昼休みの教室には、にぎやかな声があふれていた。


 机をくっつけて弁当を広げるグループ。

 購買のパンを奪い合って笑う男子たち。


 窓際では、風にあおられたカーテンが、ゆらゆらと揺れている。


 そんな中――


 一人だけ、弁当も開かず、机いっぱいに紙を広げてうなっている少女がいた。


「あれ、亜季? 何してるの?」


 コンビニ袋を片手に、奈津紀が覗き込む。


 亜季は顔を上げ、深いため息をついた。


「奈津紀……今、クイズ研究会から問題を出されてて」


 差し出された紙には、大きくこう書かれていた。


『クマを探せ!』


「この物語の中に、“クマ”が十匹いるらしいの」


「へえ」


「八匹までは見つけたのよ……」


「え、すごくない?」


「でも……あと二匹がどうしても分からないの」


「どれどれ」


 奈津紀は紙を受け取り、読み始めた。



※皆さまも一緒に探してみてください。


◇◇◇◇◇


 深い森の奥に、仲良しの三匹がいました。


 白いクマのシロ、黒いクマのクロ、茶色のクマのチャロです。


 ある秋の日、三匹は森のいちばん大きな木の下で、不思議な木の実を見つけました。

 赤く、丸い、きらきら光る実。


「わあ、なんていいにおい!」とシロ。

「食べてみようぜ」とクロ。

「三つに分けようね」とチャロ。


 三匹がひとくち食べると――


「おいしい!」


 それは、今まで食べたどんな木の実よりも甘い果実。ほっぺたが落ちそうな味でした。


 それからというもの、三匹は毎日その木の実を探して食べました。


 朝も昼も夕方も、ぽりぽり、むしゃむしゃ。


 けれど、ある日。


「あれ? もうないよ?」とチャロ。

「ほんとだ……」とシロ。

「食べ尽くしちゃったな」とクロ。


 森の中を隈無く探しても、赤い実はひとつも見つかりませんでした。


 三匹は顔を見合わせました。


「ほかの森へ行ってみよう」

「きっとどこかに、またあるよ」

「そうだな!」


 こうして三匹は、森を出て旅に出ました。



 最初にたどり着いたのは、川のそばの森でした。

 そこには、六枚の葉っぱに包まれて、青い実がなっていました。


「きれいだね」


 ぱくり。


「……すっぱい!」


 三匹は顔をぎゅっとしかめました。



 次の森では、太くて逞しい木に、黄色い実を見つけました。


「今度こそ!」

 

 ぱくり。


「……にがい!」


 三匹は川の水をがぶがぶ飲みました。


「見つからないね」とシロ。

「でも、あきらめたくない」とチャロ。

「どこかにあるはずだ」とクロ。


 三匹は、てくてく、てくてく歩き続けました。



 空は夕焼け色、柔らかな風に導かれて、三匹は小さな森にたどり着きました。


 そこには、見たことのない木が一本立っていました。


 枝には、あのときと同じ、きらきら光る赤い実。


「これだ!」


 三匹は声をそろえました。


 でも、今度はすぐに食べませんでした。


「全部食べちゃったら、またなくなっちゃうね」

 

 シロが言いました。

 

「憎まれたらイヤだな……。少しだけ食べて、あとは残そうぜ」


 クロも腕を組んで言いました。


「それから、種も植えよう!」


 チャロがそう言うと、シロとクロは頷きました。


 三匹は実を三つだけ食べました。

 やっぱり、とびきりおいしい味でした。


 残った実の種を、森のあちこちに植えました。


「大きくなあれ」

「春にまた会おうね」


 春が来るころ、その森には小さな芽がたくさん顔を出しました。


 それを見て、三匹はにっこり。


「今度は、食べ尽くさないよ」

「うん、大事にしよう」

「みんなで分け合おうな!」


 こうして三匹は、新しい森で、おいしい木の実を育てながら、幸せに暮らしました。


 めでたし、めでたし。


◇◇◇◇◇



※ここから解説です。



「……なるほどね」


 奈津紀が顔を上げる。


「え、分かったの?」


「ええ。亜季は、どれを見つけたの?」


「まず三匹、シロ、クロ、チャロ」


「うん」


「それから――

『赤く、丸い──あか()()るい』

『隈無く──()()なく』

『六枚──ろ()()い』

『逞しい──た()()しい』

『憎まれたら──に()()れたら』」


「……さすがね。やるじゃない!」


「でしょ? これで八匹。だから残り二匹なのよ」


 奈津紀はにやりと笑った。


「ふっふ~ん、聞きたい?」


「……聞きたい」


「交換条件よ。デカ盛り牛丼を奢りで」


「……やっぱりそれなのね。分かったわよ、奢るわ」


「交渉成立ね。それじゃあ解説するわ──まず一つ目。ここ」


『空は夕焼け色、柔らかな風』


「え……どこ?」


「“色”と“柔”をよく見て」


「字……?」


「そう。“色”の上の部分は“ク”みたいな形。“柔”の上の部分は“マ”みたいな形」


「……あっ!」


「文字の形で“クマ”」


「そんなところに……!」


「これで九匹」


「あと一匹……」


「最後はここ」


「大きくなあれ」

「春にまた会おうね」


「……セリフ?」


「縦に読んでみて」


「大き()

 春に()た……」


「“く”“ま”」


「あっ! 縦読みの“くま”だわ!!」


 亜季は目を見開いた。


「なるほど……これで十匹……!」


「スッキリした?」


「した!」


「じゃあ、約束」


「はいはい、今日の放課後ね」


 こうして二人は、クイズ研究会からの挑戦を見事に解き明かしたのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

誤字・脱字、誤用などあれば、誤字報告いただけると幸いです。

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― 新着の感想 ―
暮らす クマの 「暮マ」の斜めグマ 食べ尽くしちま 森の中を隈無く の逆さグマ はダメかなあ?
すごくむずかしかったです。 ですが、言葉遊びの大好きな私。 つい夢中になっていました。 楽しかったです。
なるほど、これは確かに頭を柔らかくしないと全問正解は難しいですね。 このお題は頭の体操の機会としてとっても良いですね。 そしてお題である劇中作もまた、「足るを知る事の大切さ」を始めとする様々な教訓が盛…
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