クマを探せ!
三匹のクマの物語の中に、“クマ”や“くま”というワードが出てきます。是非、探してみてください。
個人企画『クマ祭り後夜祭』参加作品です。
昼休みの教室には、にぎやかな声があふれていた。
机をくっつけて弁当を広げるグループ。
購買のパンを奪い合って笑う男子たち。
窓際では、風にあおられたカーテンが、ゆらゆらと揺れている。
そんな中――
一人だけ、弁当も開かず、机いっぱいに紙を広げてうなっている少女がいた。
「あれ、亜季? 何してるの?」
コンビニ袋を片手に、奈津紀が覗き込む。
亜季は顔を上げ、深いため息をついた。
「奈津紀……今、クイズ研究会から問題を出されてて」
差し出された紙には、大きくこう書かれていた。
『クマを探せ!』
「この物語の中に、“クマ”が十匹いるらしいの」
「へえ」
「八匹までは見つけたのよ……」
「え、すごくない?」
「でも……あと二匹がどうしても分からないの」
「どれどれ」
奈津紀は紙を受け取り、読み始めた。
※皆さまも一緒に探してみてください。
◇◇◇◇◇
深い森の奥に、仲良しの三匹がいました。
白いクマのシロ、黒いクマのクロ、茶色のクマのチャロです。
ある秋の日、三匹は森のいちばん大きな木の下で、不思議な木の実を見つけました。
赤く、丸い、きらきら光る実。
「わあ、なんていいにおい!」とシロ。
「食べてみようぜ」とクロ。
「三つに分けようね」とチャロ。
三匹がひとくち食べると――
「おいしい!」
それは、今まで食べたどんな木の実よりも甘い果実。ほっぺたが落ちそうな味でした。
それからというもの、三匹は毎日その木の実を探して食べました。
朝も昼も夕方も、ぽりぽり、むしゃむしゃ。
けれど、ある日。
「あれ? もうないよ?」とチャロ。
「ほんとだ……」とシロ。
「食べ尽くしちゃったな」とクロ。
森の中を隈無く探しても、赤い実はひとつも見つかりませんでした。
三匹は顔を見合わせました。
「ほかの森へ行ってみよう」
「きっとどこかに、またあるよ」
「そうだな!」
こうして三匹は、森を出て旅に出ました。
最初にたどり着いたのは、川のそばの森でした。
そこには、六枚の葉っぱに包まれて、青い実がなっていました。
「きれいだね」
ぱくり。
「……すっぱい!」
三匹は顔をぎゅっとしかめました。
次の森では、太くて逞しい木に、黄色い実を見つけました。
「今度こそ!」
ぱくり。
「……にがい!」
三匹は川の水をがぶがぶ飲みました。
「見つからないね」とシロ。
「でも、あきらめたくない」とチャロ。
「どこかにあるはずだ」とクロ。
三匹は、てくてく、てくてく歩き続けました。
空は夕焼け色、柔らかな風に導かれて、三匹は小さな森にたどり着きました。
そこには、見たことのない木が一本立っていました。
枝には、あのときと同じ、きらきら光る赤い実。
「これだ!」
三匹は声をそろえました。
でも、今度はすぐに食べませんでした。
「全部食べちゃったら、またなくなっちゃうね」
シロが言いました。
「憎まれたらイヤだな……。少しだけ食べて、あとは残そうぜ」
クロも腕を組んで言いました。
「それから、種も植えよう!」
チャロがそう言うと、シロとクロは頷きました。
三匹は実を三つだけ食べました。
やっぱり、とびきりおいしい味でした。
残った実の種を、森のあちこちに植えました。
「大きくなあれ」
「春にまた会おうね」
春が来るころ、その森には小さな芽がたくさん顔を出しました。
それを見て、三匹はにっこり。
「今度は、食べ尽くさないよ」
「うん、大事にしよう」
「みんなで分け合おうな!」
こうして三匹は、新しい森で、おいしい木の実を育てながら、幸せに暮らしました。
めでたし、めでたし。
◇◇◇◇◇
※ここから解説です。
「……なるほどね」
奈津紀が顔を上げる。
「え、分かったの?」
「ええ。亜季は、どれを見つけたの?」
「まず三匹、シロ、クロ、チャロ」
「うん」
「それから――
『赤く、丸い──あかく、まるい』
『隈無く──くまなく』
『六枚──ろくまい』
『逞しい──たくましい』
『憎まれたら──にくまれたら』」
「……さすがね。やるじゃない!」
「でしょ? これで八匹。だから残り二匹なのよ」
奈津紀はにやりと笑った。
「ふっふ~ん、聞きたい?」
「……聞きたい」
「交換条件よ。デカ盛り牛丼を奢りで」
「……やっぱりそれなのね。分かったわよ、奢るわ」
「交渉成立ね。それじゃあ解説するわ──まず一つ目。ここ」
『空は夕焼け色、柔らかな風』
「え……どこ?」
「“色”と“柔”をよく見て」
「字……?」
「そう。“色”の上の部分は“ク”みたいな形。“柔”の上の部分は“マ”みたいな形」
「……あっ!」
「文字の形で“クマ”」
「そんなところに……!」
「これで九匹」
「あと一匹……」
「最後はここ」
「大きくなあれ」
「春にまた会おうね」
「……セリフ?」
「縦に読んでみて」
「大きく
春にまた……」
「“く”“ま”」
「あっ! 縦読みの“くま”だわ!!」
亜季は目を見開いた。
「なるほど……これで十匹……!」
「スッキリした?」
「した!」
「じゃあ、約束」
「はいはい、今日の放課後ね」
こうして二人は、クイズ研究会からの挑戦を見事に解き明かしたのだった。
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