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集会

夕日が雲に隠れ、透過する光が僅かに闇夜を照らす地上。


そこには、荒野を歩く一人の少女の姿があった。


青ローブを風で揺らし、その上で靡かせるのは白のロングヘア―。


その髪には、彼岸花のヘアピンが一つ。


周りには2つの宝珠のようなものが浮かんでいる。


そして背後の二つの光が形作る光輪と、そこから広がる注連縄。


守護四天が一人、”生命”の魔法少女――――べクトリス。


南部の治安の悪さから開発が放置された荒野を、迷うことなく進んでいく。


やがてベクトリスはある建物の前で止まった。


古びた大きな建物だった。電気が点いておらず、闇そのものを体現しているよう。


ベクトリスはその白髪を揺らしながら、淡々とその建物に消えていった―――――



■     ■



「おーいおいおい、”浄化”と”生命”はまだなのかっす?」


薄月夜からの採光が広い部屋を僅かに照らす中、オレンジ色の短髪の少女が粗暴そうな口調で言い放った。


燃えるような深紅のドレスに、所々に走るどこか神聖を帯びている白のライン。


そして、背後の二つの光が形作る光輪と、そこから広がる注連縄。


”光”――――ソ―リスの姿だった。


少女――ソ―リスが視線を向けて答えを請うのはもう一人の、深海のような青色をしたロングヘアーの少女。


「まだです。常日頃彼女達は遅刻していますので通常通りです」


薄青色の質素なドレスに、所々ブロックのような物体がくっついている。


そして、変わらぬ光輪と注連縄。


”結界”――――ムルス。


ムルスは傍の木箱に腰を降ろしていた。


「全く、あいつらルールは守って欲しいなっす」


そうソ―リスが呆れ気味に呟くと、ふと廊下から足音がした。


コツコツと。


やがてその足音は部屋へと入ってきた。


「……遅れた」


姿を現したのは、一番小さな体躯の少女。


金純の髪を揺らし、純白の滑らかな、神が着るような服を纏う。


そして、やはり光輪と注連縄。


”浄化”――――プルガチオだった。


「30分くらい待ちましたよ」


「……ここ、私の所から遠いの」


無表情のまま言うプルガチオに、ソ―リスが反応する。


「だったら早く出たらいい話だろっす」


「……時間が、私の邪魔をするの」


「意味が分からないっす」


天を見上げるプルガチオに、ソ―リスは肩を竦める。


その次の瞬間、入口にいつの間にかもう一人少女が立っていた。


”生命”ことベクトリス。白髪が暗闇の中でもよく目立った。


「遅いぞっす。一応リーダーやってんならちゃんとしろっす」


「別にいいだろ。どうせ緩い集まりだ」


「まぁそうだけどっす……」


四人がそれぞれの定位置に座る。


最初に、ムルスが声を発した。


「それでは、近況報告といきましょうか」


まず最初に口を開いたのはソ―リス。


「じゃまずウチからっすね」


澄んだアルトが暗闇に響く。


「南部は特に何も変わりないっす。強いて言えば、最近民衆が煩くなってきたくらいだっす」


「そちらもですか。西部でも少し民衆が騒がしくなっています」


「……私のところは、ほとんど変化なし」


各々が言っていく中、最後にベクトリスが残った。


「……俺の所―――東部は少し荒れている程度だ」


ソプラノが響く。


空気と調和して、妙に風流艶美さがあった。


「そうっすか~……最近全体的にこうなってんだっすね~」


ソ―リスが腕を頭後ろで組みながら呟く。


「恐らく国の影響でしょう。最近修正アンチマギである法純政会の獲得議席数が増加したそうですし」


「らしいな」


ムルスの発言に、ベクトリスが頷く。


今度は、ベクトリスが口を開いた。


「だったら各々は警戒しつつ、襲ってきたら殺すということにしよう」


「ま、それが無難だと思うっす」


「……面倒くさそう」


「そうしましょうか」


各々が賛成の意を示した後訪れたのは、静寂だった。


特に話すような議題もないのだ。


「―――暇っす」


ソ―リスが暗い天井を見上げながら呟く。


「あぁそうだな……」


ベクトリスが目を瞑る。


そして、深く息を吐いた。


白い吐息が、空気へと消えていく。


―――それと同時だった。


建物の入り口の方から、沢山の足音が慌ただしく動く振動が伝わってきた。


「ん~?何だっす?」


ソ―リスが首を傾げる。だがその表情はどこか愉快そうだ。


「随分沢山の足音ですね」


「ま、手荒なお出迎えといったところか」


やがて部屋の入り口にそれらは姿を見せた。


たくさんの包丁やらバールやらを持った濁った目をする人々。


先頭の男が張り叫んだ。


「こいつらだ!捕まえて凄惨な目に合わせてやる!!」


そう言って果敢に一歩を進もうとすると、ソ―リスが突然声を発した。


「なんか血気盛んなところはいいっすけど、蛮勇ってのは正義とは違うんすよ?」


騒がしくなった室内にも、その声は澄み渡った。


瞬間、男の眉間に幾重もの血管の筋が浮き上がった。


「何だと?!何が蛮勇だって?! 俺達は日々お前たちにいつ牙を向かれるか分からない恐怖に怯えているんだぞ!!」


「は?そんなの知らないっす。文句なら勝手に魔法少女作り出したマスコットに言えっす」


肩を竦めながらそう言い放つソ―リスに、男は更に血管を浮かせた。


「ふざけるな!! もう話しても無駄だな! 思い知れ民衆の意を!!」


そう言って先陣を切って一番近くのソ―リスへと立ち向かって行く。


だがパン、という音と暗闇を過った一瞬の閃光の後、男は上半身を無くしていた。


ドシャ、と下半身が倒れる音がした。


驚愕の表情をして固まる民衆達の前で、肩を竦めるソ―リス。


「……だったら猶更魔法少女嘗めないでほしいっすね~」


いつの間にか、座ったままのソ―リスの手の平に丸い何かが浮いていた。


妙に明るく輝き、まるで太陽のような玉だった。


「ただの人間ごときに、ウチらが負ける訳ないだろっす」


その玉からまた部屋から暗闇を消すほどの閃光が走ると、また一人の半身が泣き別れた。


「また出直してくるっす~」


そう言って不気味な笑みと共に手をヒラヒラと振るソ―リス。


他の三人も、それが当たり前であるかのように悠然と座っていた。


だが、民衆達は一瞬放心していたが、突如余裕の笑みを浮かべ始めた。


思わぬ事に、ソ―リスが首を傾げる。


「何余裕かましちゃってんのっす?」


再び鮮明の玉に魔力を込めようとした時だった。


魔力が妙に練りにくい感覚があった。


段々と魔力が乱され、やがて玉がそれに耐えれず砕け散った。


砕け散った瞬間、鮮明が世界に融和するように消えていった。


「……? 一体何がっす?」


何が原因かを考えると、妙にニヤつく民衆の帰結するのはある意味当然のことだった。


「おい、お前ら何をした?」


同じく違和感に気づいたらしいベクトリスが聞くと、民衆達はより深い――、一種の愉悦に近い笑みを浮かべていた。


「やっと効いた」


民衆の中から、中年の男が姿を現し、何かのカプセルを摘まんで大っぴらに見せる。


「これこれ、魔力阻害薬。俺達はともかく、魔法少女には天敵だろ? 最近やっと開発された」


「あーなるほどっす」


ソ―リスが納得したように一人頷きしたかと思うと、ゆっくり立ち上がった。


下を向いているため、表情は伺えない。


ベクトリス達も、僅かに眉を潜めている。


それを苦痛に耐えているからだと思った民衆達が、嘲笑った。


「そんなに無理しなくてもいいんだぜ? 彼らが優しく介護してくれるからな」


民衆がニタリと笑う。その中には、熱っぽい視線も含まれていた。


一人の男が耐えきれなかったのか、堂々とソ―リスに近づいていく。


「なぁ、まず俺からな? 安心しろ、他共々優しく扱ってやるから―――――」


男が何かを続ける前に、その下品な顔を業火が包んだ。


勢いよく燃えるそれは、パチパチと油の焼ける心地よい音を鳴らす。


だが心地よいはずのそれは、地獄の開始の合図でしかなかった。


男は叫ぶ暇もなく燃え尽き、炭化した体を地面に打ち付けた。


ニヤけた笑みのまま入口で固まる民衆に、ソ―リスが顔を上げる。


「こ~んな程度でウチらをどうこうできるとか、ふざけてるっすね~。

お礼にお前らの魂風前の塵にしてやるっす」


その表情は、民衆どころか、世界を嘲笑するほどの深い深い笑みだった。













〇補足

中西は守護四天ではありません。これはネタバレとかではなく、そう思っていると後々のストーリーを楽しめないと判断したためです。

知っていても特に今後楽しめない、とかはないので安心してください。




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