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策謀

『―――――只今を持って、魔法少女関連法に関する協議会を終了します。次回会議につきましては、継続期間中である為2週間後とします』


中央区行政機関の協議会の終わる音と共に、多くの人々が協議会室を後にしていく。


やがて閑散となった場には、一人の黒髪の若い男の姿があった。


その男が深い溜息を吐く。その表情はどこかやつれていた。


すると、ふと首筋に何か温かいものが当たる感覚がした。


振り返って見てみると、コーヒー缶を差し出すもう一人の白髪の若い男だった。


「お疲れさん、コーヒーいるか?」


黒髪の若い男がコーヒー缶を受け取る。


「ありがとうな」


プシュ、と爽快感のある開音が静かな場に響く。


「かぁあ! やっぱ仕事終わりのコーヒーはたまんねぇわ」


黒髪の男がそう叫ぶ隣に、白髪の男が座る。


「何なら今日は例の薬が完成したからと、修正アンチマギの連中一層五月蠅かったからなぁ」


そう言って白髪の男も深い溜息を吐いた。


誰もいないこの会場は、どこか静謐としている。


「本当だ。チンパンジーが座っているのかと思ったわ」


「チンパンジーは言い過ぎだ。せめてとっちゃん坊やにしてやれ」


「ハハハ。大して変わらないだろ、それ」


二人の男が笑う。笑いの声が会場に反響する。


だが、やがて白髪の男の笑い声が溜息に変わった。


「だが本当に……はぁ、法純政会の連中が獲得議席数を増やしてからずっとこのサマだ。やれ魔法少女は弾圧だ、やれ魔法少女は政府で管理すべきだ……」


「昔は魔法少女とも上手く付き合ってたんだがなぁ」


黒髪の男が言うと、白髪の男が苦笑する。


「そうだな……中立派の法政本会がまだ全盛期だったからな」


「やつら、本当に魔法少女を何だと思ってんだろうな」


「政治の道具か……あるいはやつらロリコンなのかもしれんな」


白髪の男が冗談めかしく言うと、黒髪の男がコーヒーを拭いた。


「ブッ……それは傑作だな。同人誌が多く作られそうだ」


二日洗わずヨレヨレの袖で口元を拭く黒髪の男。


「あぁそうだな」


白髪の男がゆっくりと立ち上がる。


そして黒髪の男に背を向けた。


「……じゃ、俺は先行くわ。冗談無しに、魔法少女規制法の改正による規制強化は時間の問題だろうさ。やつらには、今の俺達は所詮夾雑物でしかない。お互い、踏ん張ろうな」


手をヒラヒラと振って、白髪の男は入り口の闇へと消えていった。


残された黒髪の男は、またコーヒーを啜った。


「夾雑物、か……」


そうボソリと呟いた声は、反響する前に空気に漸減していく。


だがふと気づくと、入口に少女が立っていた。


「失礼します、赤坂魔法開発機構局長」


少女が頭を下げると、纏っている落ち着いたドレスが揺れた。


「お、ルナサーチャーか。よくここまで来たな、芸術庁の管轄外なのに」


少女を横目で見ながら、黒髪の男はコーヒー缶を傾ける。


「宇都宮芸術長に報告したところ、性急に北宮魔法開発機構局長に報告するように言われ、ここへ入ることが許可されました」


「そうかい。で、報告ってことはやっぱり例の殺人の件か?」


「はい。魔力跡を調査したところ、恐らく”生命”である可能性が高いと判明しました」


少女が凛とした表情を浮かべながらそう報告すると、黒髪の男は興味深いといった表情をした。


「……”生命”か……ここ近年活動してなかったのにな」


「はい。守護四天の中で最も情報が少ないです」


黒髪の男が、やや隈のできた目でスッと天井を見上げた。


天井電気の眩しさに、男が数舜目を細める。


「守護四天……”浄化カーソン・オーリー”、”ルーベン・ライト”、”結界シュワン・バウンダリー”、纏め役である”生命ニューコープ・ライフ”の魔法少女。それぞれが名前に由来する魔具を持つ。――――不思議なもんだ」


「私達の参考体でもあります」


少女が言うと、男は視線を下ろして少女を見た。


その視線の先にあるのは、首に印刷された番号。


―――――”001”。そうはっきりと印刷されていた。


「そうだったな。あのマッドサイエンティストどももよく作ったよ、人造魔法少女なんてもん」


黒髪の男はコーヒー缶を傾け、ズズと最後まで飲み切る。


そしてコーヒー缶を握りつぶした。


「ま、守護四天なら現状俺らにできることはねぇ」


そう言い捨てると、男も入口へと歩く。


入口前で、少女と相対した。


身長差の大きい二人が、近くで向かい合う。


「一つ、よろしいでしょうか」


「なんだ?」


黒髪の男が視線を下ろすと、少女と目が会った。


「櫻花東部高校にて、魔法少女をメインテーマとして調査しようとしている生徒が確認されたのですが如何いたしますか?」


「知らん。好きにさせてやれ。今そんなのに構ってるほど暇じゃない」


即答でそう答えた黒髪の男は、そのまま少女とすれ違い消えていった。


最終的に、その場には姿勢を正したままの少女だけが残った。






〇補足

修正アンチマギリズム・アンチマギリズム

アンチマギは魔法及び魔法少女排斥が目的である一方で、暴力ではなく議会による決議によるものとしている一方で、修正アンチマギリズムは暴力を手段として使おうとする主義のことである。


簡単に言うと、マルクス主義と修正マルクス主義を逆にしたものである。


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