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結成

※北見とか吉住とか名前がありましたが、赤坂、住吉に変更・統一しています

いつも、というのは存在し得るのだろうか。


毎日が同じであるように見えるが、細かい場所にフォーカスすれば必ず異なるだろう。


枯れた葉、浮流する雲……


だがそれはあくまで細かいもの。


いつも、を根本的に揺るがすような事柄は早々起こらないはずなのだ。


そう思いながら俺は、教室向こうの廊下へ意識を向ける。


何人もの人の気配。朝礼の時間には普通ないものだ。


「えーそれではー今回のお仲間を紹介しますー。入ってきてー」


教師の声掛けに従い、扉がガラガラと開けられる。


同時に平穏がガラガラと音を立てて崩れていく感覚もあった。


扉から続々と制服姿の男女が入ってくる。


どれもこれも知らない顔。


だが、最後の一人は違った。


紅い短髪の粗暴そうな見た目をした女子。


今朝の遅刻の原因でもあった。


「はい、じゃあ皆さん自己紹介してー」


合図に従い、右端の生徒から軽くお辞儀をする。


「浅見が丘東部から来ました、深見です」


「同じく袴田です」


「横田です」


ドミノ倒しのようにお辞儀をしていく彼彼女ら。


最後に、例の女子生徒が残った。


「中西っす」


そう言って他よりも浅いお辞儀をする。


顔を上げた彼女と目が会った。


一瞬驚いた顔をしていたが、瞬きする間に元の仏頂面に戻っていた。


無事に自己紹介が終わり、教師がニコニコ笑顔で手を叩いた。


「はいはい、それでは振り分けは先生がしまーす。まず深見君とここの5人が――――――」


指示に従い、5、6人ほどのグループが淡々と作られていく。


やがて彼女だけが残る。


「じゃあー最後中西さんここでー」


そう言って最後に教師が指さしたのは俺の辺り。


中西は再び一瞬仏頂面を崩したが、すぐ先生に従って近くに寄ってきた。


「はーいそれじゃあまずは好きな物とか、軽い会話をしてくださーい」


各々のグループが机を固めたり、椅子だけを囲んで座ったりしていく。


俺のグループも例に漏れず机を固めた。


余っていた一席に中西が座る。


「じゃ、まず俺からやな。俺は住吉。好きな音楽は『翼をください』や」


俺の隣の彼が関西弁で意気揚々と子を張り上げる。


「じゃあ次私。赤坂です。趣味は絵を描くこと、などです」


「僕は、田中です……好きな、事は、漫画を読むこと、です……」


周りの喧騒に負けずに、友人とクラスメイトが自然の流れに従い自己紹介していく。


残りは俺と赤短髪の彼女。


「……生田。趣味は漫画」


最後が嫌だった俺は、早々に自己紹介を済ませる。


全員の視線が、最後の人へと集まる。


本人は面倒くさそうに椅子にもたれかかった。


ギシ、と椅子の音がなる。


「……私は中西。趣味は散歩」


吐き捨てるように言う。


次に訪れたのは静寂だった。


寄せ集めであるこのグループでは、会話が続かない。


周りの喧騒が、やけに大きく聞こえる。


漫画でも読もうか、と思った時だった。


「はーい、じゃあそろそろグループで何を主題で考えるか決めて下さーい。

グループの活動は2か月なので、それ以内で終わるものでー」


そう先生が気だるげに叫ぶと、喧騒が更に大きくなる。


だが俺達のグループは誰も提案することがないのか至って静かなものだった。


耐えられなくなったのか、或いは案があるからか、友人こと田中がスッと手を挙げた。


「……あの、いいですか」


「……どうぞ」


ビクビクとしながら田中が立ち上がる。ガタリ、と椅子の動く音がやけに鮮明に聞こえた。


「……ぼ、僕……魔法少女関連の探求がしたい、です」


その言葉に、全員が目を見開いた。


特に中西に至っては顕著だった。


一瞬にして、周りの喧騒が消えうせる感覚がした。


「おい、マジで言ってんのかいな?」


住吉が眉間に皺を寄せながら聞く。


「う、うん。本気だよっ!」


田中が叫ぶ。それは表情共に真剣そのものだった。


それに対して、赤坂が口を開いた。


「魔法少女ですよ? 国に目を付けられる可能性がありますよ?」


「ぼ、僕は本気だよっ! パンドラの箱だからこそ探求しがいがあるんじゃないかな!」


……珍しい。彼がここまではっきりと自己を主張するなんて。


どうやらそれほどまでに魔法少女のことを調べたいらしい。


だがそも魔法少女というのは国があまり快く思っていない。


言わば触らぬが吉、という類である。


それでも、俺の答えは最初から決まっている。


「……俺は賛成」


手を軽く挙げ、意を表す。


ざわり、と空気が揺れる。


だがそれを遮るように、また手が一つ、掲げられた。


「私も賛成」


挙げた本人は不機嫌そうにフン、と鼻を鳴らした。


空気がシン、となる。


「お前らマジでやるんか?」


住吉が呆れと懐疑心の混ざったような表情をする。


「でっでも、賛成3だよ?それに、今後の為にもぼ、僕は必要だと思うんだ」


「……今後の為、というのは?」


不意に赤坂が問いかける。


それに対して、田中はビクリと肩を震わせたものの、真剣に答えた。


「説明しにくいけど……魔法少女を理解することは、国を理解することにも繋がると思うんだ。それにぼ、僕達の生活を助けてる存在でもあるから、知って欲しいってお思ったんだ」


「なるほど……なら私も賛成しておきます」


また一つ、手が掲げられる。


「おい赤坂、マジかいな」


住吉が驚愕の表情を浮かべるが、赤坂はさして表情を変えずに言う。


「私は自身の価値観を養うためなら問題ないと思っています。それに、私はこれでも融通が利きますので、安全圏から見れます」


残すは後、一つ。


「皆でキチンと良し悪しを判断しながらやれば大丈夫ですよ。それに、駄目なら先生が許可しないでしょう」


全員の視線が、一人を射抜く。


最後の一人――――住吉は、やがて観念したように溜息をついた。


「―――――あーもうっ分かった!俺もやればいいんやろ!」


五つの手が、ようやく掲げられた。


「じゃ、じゃあ……こっこのグループは魔法少女の探求でいくね」


田中が頭を掻きながらそう言うと、住吉が切れたように頷いた。


「あぁ分かったわ。にしてもホンマ赤坂腹立つわー。お前家の権力強すぎやろ、お嬢様め」


「フフフ。代わりに私も出来るだけ協力しますから」


互いに静かに笑う。


その空気には、先ほどの緊張感は見当たらない。


されど、今、一つの机上で何か大きな歯車が静かに動き出す音がした――――――











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