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生命

朝、目覚まし時計が俺を急かすように鳴り響く。


眠気を抑えながら、俺は一階へと降りる。


リビングのドアを開けると、キッチンからトントンと包丁の音がした。


「あらおはよう赤」


母の、馴染みのある声がリビングを木霊する。


「……おはよう」


適当に挨拶をしながら、俺は定位置の椅子に座る。


机には既に朝食が置かれていた。


パン一枚と、一杯の紅茶。


いつもと変わらないルーチン。


傍らにあるリモコンを手に取り、テレビに向ける。


『―――――次のニュースです。昨夜本都市の東部にて大量の遺体が発見されました。見つかった遺体は計15体で、原型を留めていない為身元不明とのことです。

また、聞き込みより修正アンチマギカ派であることが判明しており、当日魔法少女が現場近くにいたことから、現在その魔法少女を被疑者として芸術庁は調査すると発表しました』


「まぁ……結構近場じゃない。 近頃物騒になってきたわね~」


聞いていたらしい母が、少し心配そうな表情を浮かべる。


だが俺にとってはただの杞憂にしか見えない。これこそアイロニーだろう。


俺はテレビをブチ、と消した。


そして、暖かい紅茶を一口、ズズと啜り口に含む。


香ばしい匂いが鼻腔を擽った。


「……そうだな」


「登校するとき気を付けてね~」


「……そうする」


やがて空になったカップと皿をキッチンの食洗機に入れ、昨日読んだ漫画を入れた鞄を手に俺は家を後にした。


昨日と同じ道を辿る。


だが今日もまたいつもと異なっていた。


変化というものが、俺は大嫌いだ。いつからかそう思っている。


道の中央に、大きなブルーシートが張られていた。


風が吹き通り、ブルーシートを揺らす。


昨日ちょうど例の、男達がいた場所だった。


だがブルーシートで道が完全に防がれている。


困った。道を変えるとかなりの回り道になる。


学校の始業時刻に丁度か、遅れるかくらいだ。


「……またも最悪か」


仕方ない、と踵を返した時だった。


体がグン、と横に引っ張られる感覚。


俺は横の行き止まりの細道に引き込まれた。


いやな気分がして、引っ張った主を見ると、同じ年くらいの女子高校生だった。


制服からしてすぐ隣の高校だろう。


「なあ、お前昨日のだよな?」


その女子が、赤い短髪を靡かせながらえらく真剣な表情で聞いてくる。


「……というと?」


「あー……私昨日の魔法少女」


髪をガシガシと掻いた彼女が一瞬光ったかと思うと、昨日見た可憐な少女になっていた。


明るい茶柄の、勇々しさのある見た目で、ショートヘアが風に揺れる。


「……お前は昨日のやつか」


「そ。でさ、昨日何か見てね?」


今度は俺より幾分も低くなった目線から真剣な目を向けてくる。


「何かって何が」


「昨日私がもう一回確認でここ来た時、あいつらの死体が転がってたんだよ」


彼女がブルーシートの方へと視線を送る。


「着く前に赤い光が見えたんだが、何か知らねぇか?」


「……その後普通に帰ったから知らん」


「そか。分かった、じゃあな」


一人で勝手に納得したらしい彼女は、そのまま地を蹴って空へ消えていった。


一人残された俺は、腕時計で時刻を確認する。


ああ、遅刻じゃないかクソ。



■     ■



私は途中の狭い道で変身を解く。


一瞬の光が体を包んですぐに、いつも通りの制服姿に戻った。


「ったく、マジであの光何だったんだ」


脳裡を過るのは昨晩の赤光。


一瞬だけだったが、はっきりと見えた。


その後その場に着いた時には、地獄絵図が広がっていた。


「クソッ、思い出しただけで気分最悪だわ。魔法少女だろほぼ」


あんな芸当は勿論魔法少女にしかできない。


国のお手製魔法少女かとも思ったが、態々そんなことをする理由もない。


「擦り付けやがって全く……取り敢えず学校行くか」


よし次会ったら何回かは全力で蹴ろう。


国に注目されることほど魔法少女にとって恐ろしいことはない。


学校へと向かう私の額を、一筋の汗が流れたが、ついぞ気づくことはなかった。



■     ■



「おーいお前、今日で遅刻30回目だぞー」


「……すみません」


「40回超えたら留年だからなー気を付けろよー」


呆れたような表情を浮かべたが、やる気がないため俺は一瞬にして解放された。


自席の椅子を引き、座る。


「じゃ今日も朝礼するがー、その前に一つ嬉しいお知らせがあるー」


教室がザワザワと騒がしくなる。


あの教師が、あの先公が……と。


なるほど確かにあの教師が”嬉しい”というのは何やら不安だ。


先生が、抑揚なく続ける。


「明日から隣の浅見が丘東部高校と共同でグループディスカッションをしまーすパチパチー」


静かな教師の声に比例して、教室は一瞬にして驚きの声で満ちた。


「何で浅東なんだ?!あそこは超進学校だろ!」


「俺ら櫻花高は精々自称進だろ?!」


各々に叫ぶが、教師がパンパンと手を叩いた。


「はーい静かにしてー後自称とか言わないー。向こうから声を掛けてきたんだー。

断るのもメンド……折角の機会だから受けたんだー」


今度はひそひそと騒がしくなる。


俺も自席にもたれかかった。ギシ、と木の唸る音が耳に入る。


浅見が丘東部か……。


確か今朝の魔法少女もその高校だったな―――――。








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