5年後
あれから五年近くがたって、私は十七歳になった。
母と同じお屋敷で、今はメイドの一人として働いています。
(お給料は毎月ぎりぎりだし、このままずっと、この屋敷の使用人として働いていくのかしら)
生きていけるのはいけるけれど、贅沢はできないし、つらくても休めません。
ご主人様は意地悪ではないけれど、お嬢さんのナルシアさまは気位が高くて、私たち使用人を顎でこき使います。
何より、花の青春時代なのに、素敵な殿方と知り合うツテもなし…。
お屋敷の執事はおじいちゃんばかりだし、下働きのコたちはずっと年下、お休みの日は教会に行ったり家の用事をしたりで、男の方と出会う機会もありません……。
そんなときにふと、私は、昔、夜の森で会った吸血鬼のことを思い出した。
あれは夢だったのかもしれない。
吸血鬼なんて、と、一度メイド仲間に話したら笑われてしまいました。
しかし、
「吸血鬼はいる」
と、料理長が神妙な顔である日、教えてくれたのです。
「俺ぁ厨房を任されて、新鮮な肉を買い付けにも行くんだが、ときどき、届けられた肉に小さい歯型があるのよ。
控えめにな、肉に残った生き血をすすったような跡が」
「動物のしわざでは?」
「いやいや、ネズミやコウモリにしちゃ歯と歯の間がちいせぇし、野犬や狼がそんな面倒なことをするわけがねぇだろ。あの歯形は吸血鬼だ。肉屋が肉を吊るしてる間に、そっとしのびこんで吸うんだな、血を」
怪しんだ肉屋がすでに、ヴァンパイアハンターを募集しているらしい。
「吸血鬼を探してとらえ、心臓に釘を打つだけの簡単なお仕事だ。危険だが報酬はそのぶん期待できる。
俺ももっと若くて、料理長にまでなってなければ、行ったかもな」
それ、私、やってみたい。
ヴァンパイアハンターなんて、やったこともないけど。
もちろん、殺すつもりもないけど。
マセリ―さんに、また会えるかも……。
そんな淡い期待だけを抱いて、私は翌日、お暇を頂き、肉屋さんへ向かいました。




