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5話目

こちらは新たな投稿となりますm(_ _)m


長編化した事により、最初の前書き『私転生した〜』みたいな流れは無くなり、一話あたりの分量も減っております。


こちらはかなりののんびり投稿ですが、これからもよろしくお願いいたします。

 私、レティシア・リュコス!


 リュコス辺境伯の次女で、ちょっとおしゃまな普通の幼女!


 だけど最近、ちょっとだけ普通じゃないかもって思うようになったの。


 それは私の手で触れて、撫で回した『相手』は何らかの良い変化を起こすっていう、まるで魔法みたいな話…………なんて、妙なテンションのモノローグが脳内に流れ出したけれど、現実逃避しても仕方ないか。



 目を覚ました直後、目の前には困りきった顔をしたお父様が、植木鉢を持って私を見ているから逃げ場がない。


「レティシア、怒らないから話してくれるかい?」


 よく『怒らないから正直に言いなさい』って言ったのに、正直に言ったら怒られたという展開を聞くが、お父様の場合はそれに関しては大丈夫だ。


 そもそも私はそんな悪い事をして……。


 していないとはっきり言い切れないのは、お父様の持っている植木鉢の出所のせいだ。

 あの植木鉢は、新人メイドさんから私が半ば無理矢理奪うようにもらってきてしまった物だから。


 けど、ここで下手に私が黙っていたら、それこそあのメイドさんが責められてしまうかもしれない。

 覚悟を決めた私は背筋を正してお父様を見る。


 そして、


「おとーさま、ごめんなさい」


 まずは謝罪。これ大事。


 その後はお父様に見守られながら、よいしょよいしょとベッドから降りて、ぺこりと頭を下げる。


 私のベッド、寝心地は良いけれど、今の私には大き過ぎるので、降りるのも一苦労なのだ。


「レティシア、それは何に対する謝罪かな?」


 困ったように問いかけてくるお父様を真っ直ぐに見つめ、私はしっかりはっきりと告げる。


「わたしがわがままをいって、めいどさんからそのうえきばちをむりやりもらっちゃったの。だから、めいどさんをしからないで」


 これでメイドさんは多少は責められても、責任の半分以上は私の方へ来るだろう。

 ふんすと気合を入れた私は、お父様をじっと見つめてお沙汰を待つが、お父様の表情は困り顔から困惑へと変わっている。

 困らせている自覚はあるが、困惑させてしまった理由がわからず首を傾げてお父様を見つめていると、お父様の手が伸びて来てそのまま抱き上げられてしまう。

 お父様が相手なので危険がないとわかっているのか、セレストはベッドで丸くなったままだ。

 決して熟睡していてわからないとかではないと思う。


 あ、よかった。こっちを見て尻尾を振ってくれてたので、起きてはいるようだ。

 やっぱり相手がお父様だからおとなしくしていてくれたらしい。


 私がセレストに気を取られていると、お父様の指が伸びてきて頬をちょんちょんと突かれる。


「レティシア、もう一度説明してくれるかな? この植木鉢はどうしてここにあるんだい?」


「はい、おとーさま。わたしが、しんじんのめいどさんにわがままをいって、すてようとしていたところをむりやりもらってきました」


 怒られている最中によそ見はマズかったと反省し、抱っこの状態ながらビシッと背筋を正して答えたのだが、お父様の反応は芳しくない。


「……レティ、質問なのだけれど、その新人だというメイドにはもう一度会えばわかるかな?」


 真剣な顔でお父様から念を押され、一つ訂正すべき点に気付いた私は、そこを訂正しつつ肯定するためにキリッとした顔をして口を開く。


「おとーさま。めいどさんがしんじんだといったわけじゃないの。わたしがみたことがないめいどさんだったから、しんじんさんかなって……。あ、でも、かおはおぼえてるからあえばわかるよ」


「そうか、よくわかったよ。レティが何処からかコレを持ってきた訳ではなく、見知らぬメイドが持っていたのを目撃して、それをもらったんだね?」


「はい、おとーさま。かれてすてられるなんて、もったいないとおもって……」


 さらに念押しして確認してくるお父様に殊勝な顔をして頷く。


 嘘は一つも言ってない。ただ決して『緑の手』の検証したかったからなんて言ってはいけない。

 これは厳重にお口チャック案件だ。


「もう一つ確認しないといけないんだが。レティ、今ここには苗木のような植物が生えているけれど、枯れて捨てられると思ったという事は、この植物は枯れていたのかな?」


 私と植木鉢を危なげなく抱えているお父様は、植木鉢を私へ見やすいようにしながら優しく問いかけてくる。

 私が最初に謝ったからとはいえ、お父様は優しすぎると思う。

 怒られる原因を作った私が言うなって言われそうだけど。


「えぇと、これぐらいのくるんってなったちいさなめが、くたってなってはえてたの。だから、かれちゃったなのかなって……」


 お父様が優しすぎる件について考えながらも、私は萌黄が宿っている植物の元の姿を何とか言葉と身振り手振りで説明していく。

 山菜のゼンマイに似てた! って言えれば楽だけど、この世界にゼンマイがあるかわからないし、あったとしてもゼンマイなんて何処で知ったと訊ねられたら困る。


 やはり私の拙い説明では上手く伝わらなかったのか、お父様の表情は優れない。


「……特徴は完全に一致してしまったか」


 絵で描いて教えるべきかと視線をさ迷わせていた私だったが、ボソッと呟かれたお父様の独り言を聞いて、お父様へと視線を戻す。

 どうやら伝わらなかった訳ではなく、伝わったからこそ新たな問題が発生した感じのようだ。


「あのうえきばち、ルトおにーさまのじゃなくて、おとーさまのだったの?」


 今さらながら、お父様がこの植木鉢の事を気にしている様子に疑問を抱いた私は、首を傾げてお父様を見つめる。


「大丈夫、レティシアは心配しなくていいんだよ」


 お父様、それ答えになってません。


 それにしても、おかしい。


 お父様の困ったような疲れたようなこの笑顔には見覚えがある。


 私がお父様の上司だと勘違いしていた貴族が、色々難癖をつけて諸々押し付けて来た時にお父様がよく浮かべていた表情だ。

 でも、あの貴族はミーハ伯父様からざまぁされて、表舞台から消えてしまったはず。

 私は幼女なので詳しく聞かせてもらえなかったが、二度と会う事はないから心配しなくていいのよとお母様が言ってたから、まぁそういう事なんだろう。

 頭と体がさようならしたのか、鉱山とかで重労働しているのか……どちらにしろ薄情な私はセレストに酷い事をした人の話なんてどうでもいいのだ。


 なんて、そんな事より、今は目の前のお父様だ。


「おとーさまがくるしいの、わたしいやなの」


 秘技・幼女の涙目の上目遣い付きで、お父様へぎゅっと抱きつく。

 これで駄目なら諦めよう。


「レティは優しいね。レティには少し難しい話かもしれないけれど、この植木鉢の中の植物は、ここにあってはいけない物なんだ。だから、少し困ってしまっていただけなんだよ」


 効果はあったけど……うん? どういう意味だろう。


 植木鉢がここにある事が問題ではなく、生えていた植物そのものが問題って事?


 いや、生えていた植物が問題だから、それが生えている植木鉢も問題だよね。


 というか、お父様の口振りだと……。


「なんで、そんなしょくぶつのはえたうえきばちが、うちのなかにあったの?」


「それが聞きたくて、レティが起きるのを待っていたんだよ」


 苦笑いするお父様を見ながら、やっと私にも話が見えた。



 私が持ってきてしまったこの植木鉢には、生えていてはいけないような植物が生えていた。


 その時点で問題なんだろうけど、それより問題になったのは……。




「だれが、どうやって、このうえきばちをもちこんだか、しりたかった?」


「……あぁ、レティは賢いね。辛いかもしれないけれど、私と一緒にその『新人のメイド』を確認してもらえるかな」


 優しいお父様は、私が気に病むのではと自らが辛そうな表情で私の顔を覗き込んでくる。


 しかし、そんなお父様に対して、私は何にもわかってない、ただお父様の役に立てて嬉しい幼女のフリをして微笑んで頷くのだった。


いつもありがとうございますm(_ _)m


ご意見もいただいておりましたし、自分でも見づらいと思っていましたので長編化となりました。


シリーズに入れなくても良いかとは思いましたが、今まで短編の方をお読みいただいていた方がわからなくなるかも、と一応シリーズへ入れておく予定となります。

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