粘着
小説投稿サイト『小説家になりお』にホラー小説を投稿しはじめて三年目に入った。
ペンネームの『木岐地 界』もまるで自分の本名のように馴染んでいる。
先日、姥捨て山を題材にした短編ホラーを投稿した。
ポイントは120ちょい。ホラーは人気ジャンルではないのでこのぐらいでもランキングの表紙に載れる。
すると一人の読者からこんな感想をいただいた。
『姥捨て山というのは単なる伝承ですよ。実際に老人を山に棄てるなんてことが行われていたという記録は残っていません』
知っている。
姥捨という地名から創作された話なのだろうということは私も知っていた。
ただフィクションというのは得てしてそういうものだ。特にホラーにおいては、口裂け女やきさらぎ駅といった実証のない都市伝説に自分独自の解釈を加えてコワ面白いものを作ったりする。
私はその感想に返信をした。
『ありがとうございます。そうですね、実際にはそんなことは行われていなかったようですね。ですが、もしあったとしたら、という前提で話を書きました。どうかご了承ください』
するとすぐに、またそのユーザーさんから感想がついた。
『嘘を書いてはいけないんじゃないですか? 創作者なら事実に忠実であるべきです』
私は一言、『そうですね』と返した。
一応そのユーザーさんのハンドルネームを記憶した。『さっぱり三郎』というひとだった。
私の作品は二日間、表紙に載り続けた。さすがは不人気のホラージャンルである。
そうすると、またあの『さっぱり三郎』氏から感想がつけられた。
『長くランキングに滞在してるから再読してみたら、私の指摘したところがちっとも直されていません。どういうことなのでしょう? また、日本語の使い方にも怪しいところがあります。文章作法としても、たとえば括弧の中の文末に読点は不要です。直しなさい』
ヤバい……。
なんか粘着質のひとに目をつけられてしまったかもしれない。
私は今まで使用したことのなかったブロック機能を、初めて使用した。