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この作品に描かれている内容は、
如何なる実在する人物、組織への誹謗中傷を意図したものではなく。
現実世界のいかなる団体、個人を指し示すものではなく、
全て物語でありフィクションであり、実在の人物・団体、実際の事件とは一切
関係ありません。
お金を稼ぐために街に下りる。もちろん育てた野菜やジビエを売るためだ。市場の路面にシートを引き
商品を並べる。
「今日も、頑張ってるね」
「どうも」いつも買い物に来てくれる老人に声をかけてくれる。
「一番高い商品はどれだい」
「え? 一番高い商品? そうですね……穫れたばかりのグランドのサローインなんかどうでしょう」
「ああ、いいねそれにしよう」
「ありがとうございます」希少性の高い肉だが高すぎてあまり売れる肉ではなかったので驚く。
「今日は、祝い事かなんかですか?」もともと有名ギルドの顧問を勤めていた老人なのでお金は、そこそこ持って
いることは知ってはいたがしかし、それにても高い肉。なにかあったのだろうか。
「大変だったね……」
「え?」
「モルガナちゃんがあんなことになって……」
ふざけるな……。一目散にシャドーハートは、走り出す。老人から聞いた情報がまりにもひどいものだった。
シャドーハートは、奴隷市場のBブロックに到達する。もともとこの世界には、奴隷制度は、存在しなかった。
しかし、転生者たちがやってきてから奴隷制度が突然でき次々に女性が誘拐され奴隷にされる事件が起きていた。
「おや、お兄さん。お探しの商品でもあるのかい?」あるお店の前で、シャドーハートは、立ち止まる。
「この女性は……」
「ああ、最近入ったばかりの商品でね。おすすめだよ」モルガナだった。しかし、金額が高すぎて
全く手がでない。
「シャドーハート!」
「返してもらうぞ!」
「ん? 何を言ってるんだい?」
「返してもらうと言ってるんだ」
「どちらさんかな」
「レオ様……」奴隷商店がやとっている騎士が現れる。人相は、非常に悪い。奴隷ビジネスは、騎士たちの
重要な収入源だった。騎士たちは、他にも高い関税や強盗などで生計を立てるものも多く。
人々は、敬意を込めて強盗騎士と読んでいた。非常に凶悪で危険だった。
「俺のパートナー返してもらうぞ」
「金は」
「ない」
「じゃあ死んでもらう!」騎士は、治安を乱すと判断したものを斬る権利が与えられていた。俺は、
武器を取り出す。普段ジビエの魔物を捌いているナタだった。奴隷商人の護衛をしている騎士よりも
腕には自信があった。こっちは、普段から自分よりも遥かに大きな魔物を相手にしているんだ。
シャドーハートは、ナタを構える。離れた距離で騎士が剣を振るう。剣筋も非常に悪く。構えも弱々しい
ものだった。いかにも初心者と呼べるようなものだった。しかし。
あたり一体に何本もの黒い線が入る。縦横上下四方八方に黒い線が入る。そしてその線がシャドーハートの
体を切り刻む。
「シャドーハート!」戦いを見ていた。モルガナが目を見開き絶叫する。血しぶきと肉片が散らばる。
誰がどう見て非道な戦いだった。しかし、野次馬の中に騎士を咎めるものなどいない。咎めれば
次は、自分の番であることをみなわかっていた。
「さすがでございます」消えゆく意識の中奴隷商人と騎士の会話が耳に入ってくる。
「やっぱり、現地民は弱いなぁこれじゃ勝負にならないよ」
「さすが、転生者様でございます。これからもよしなに」奴隷商人は、金貨を騎士に渡す。
「なんで、こんなに強いか知りたいか?」
「いえ、いえ、そんな恐れおおおい、私みたいな下々のものお話されずとも……」
「俺はな、1万年剣術の特訓をしたんだよ」
「?」あまりにも意味不明の発言に一瞬さすがの奴隷商人も素に戻る。
「俺がいた世界で近所のお寺でお賽銭を投げたら、仏様の声がして特別なスキルを付与されたんだよ。
そのスキルは、1万年の剣術修行を体感時間1秒で終わらせるスキルだ。どうだ、お前にもそのお寺
教えてやろうかこんなところでこんな臭い商売せずに世界一の冒険者になれるぞ」
「いえ、恐れ多い。私なぞ、一介の奴隷商にすぎまんせゆえ」
「ふ、ふざけるな転生者……こままで死ねるか……必ず貴様を殺してやる!」バラバラの肉片に怨念が
集積し始める。そして……。
「こ、これは……」薄れていた意識が急に元に戻る。しかし、動くのは千切れた右手だけ。
「ゆ、指は動く」拳を握りしめる。ステータス画面を見る。
「ロー、アンデット……」人間では、なくロー、アンデットというカテゴリのモンスターとして
復活すること成功していた。しかし、本体はわずか右腕だけ。それも手のひらと指だけで腕は存在しなかった。
「こ……こうか……」指を順番に動かしながら、ゆっくりと移動を試みる。
「い、行ける……」大声で自慢を続ける転生騎士とそれを全力でおだてる奴隷商人が建物の中に入った
瞬間、指を足代わりにしてその場から立ち去る。
「モルガナ……いつか必ず迎えに来る。それまで待っていてくれ……」今のシャドーハートでは、到底
チートスキル持ちの転生者などに決して勝つことはできなかった。