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第6話 新婚二日目はさらに続くユーリーンの・・・タイトルでは伝えられない数々、それでもニキはご機嫌取り、何故?

 

 ユーリーンはイチと言う人と目が合って、慌てて奥に引っ込んだ。ショックだった。角が有った。魔人と言うだけあって、角も有るらしい。でも、ニキには無いから、有るタイプと無いタイプがあるのかもしれないと思った。そして思い出した。ユーリーン自身の頭蓋骨が少し凸凹しているのを思い出したのだ。シャンプーの時気になった時もあったが、そういう頭の骨だってあるかもと、最近は気にしていなかった。そして思い出していた、ニキがよく私の頭を撫でている事を。ドキリとして、頭に手をやった。有る。有るじゃないか、角が出て来そうな位置に二か所こんもり盛り上がっている。

「きゃっ。ひぇー」

 思わず叫んだ。

 角、角が出かかっている。

 一昨日、シャンプーしたとき、こんなだったろうか。絶対こんなじゃあなかった。気にも留めていなかったが、気になる形じゃ無かったからと思う。絶対、昨日、今日辺りから出て来ていると思った。

 さてはニキが出て来い、出て来いみたいな魔法をかけやがったな。おのれ、あたしに断りもなく。

「うわーん、お嫁に行ったけど、これじゃあ、離婚して次にお嫁に行けなくなった」

 床に寝転んで、床をぶちまわしながら叫んだ。

 ニキが慌てて部屋に飛び込んで来た。後ろから、イチと言う人も来た。

「どうしたの、ユーリーン。何があったの」

 ニキに抱きかかえられた。思えばニキがそんな魔法をかけるほど、ユーリーンに意地悪する理由は無い気がして、事実だけを言う事にした。

「わぁーん、もうお嫁に行きなおせない。角が生えだしたよー」

 本音炸裂のユーリーンである。久しぶりの大泣きだ。そういえば、あの夢の幼い日の時から、大泣きしたことが無かったのを、思い至った。

「もう大人なんだから、角が生える訳ない。勘違いだよ。ユーリーン、生えていないじゃないか」

 ニキが慰めるが、

「生えかかっているの。前より頭の骨が出て来ているのよ。ここに来てから出て来たみたいなのっ」

 そしてイチを、失礼だとは思ったが、指さして、

「あの人に角があるから、思い出して自分の頭を調べたら、出て来そうになっているのよ。角がっ」

 ニキはユーリーンの頭を撫で、

「角なんか出来ていないよ。勘違いだよ」

「まだ出ていないけど、出来かかっているのっ」

 不毛な言い合いを側で聞いていたイチが、

「皮膚から出て来ない限りは、その『角なんか』と言う奴は有るとは言えないねえ。それに嫁に行きなおす計画は、止めておいた方が良いね。ニキが離さないだろうし」

 と結論を言った。ニキはイチも寝室にいる事に気が付き、

「どうしてお前が此処に居るんだ。付いて来いとは言っていないだろう。さっさと帰るんだ。放り出される前にな」

「はい、はい」

 ユーリーンはニキに抱きしめられて、段々落ち着いて来た。

「ニキが怒っているから、南ニールの家に帰ろうかなと思ったけど、角が生えてきそうだから、戻れなくなった」

 ひくひくとしゃくりあげながら結論を言った。

「僕は怒ってなんかいないよ。勘違いさせてしまったようだね。ユーリーンを手放すつもりはないからね。そんな事言わないでね。良い子だから」

 ニキに涙をキスされながら慰められて、ユーリーンは平常心に戻って来た。

 ニキは、

「そうだ、昼食はセピアへ美味しいものを食べに行こうか。これで良いかな」

 と言いながら、いつの間にか持って来ていた、グルードのクローゼットにあった筈の、普段着のワンピースを見せた。的確な服選びが出来る様だ。それにしても、

「お昼を食べにセピア公国に行くの?どうやって?」

「移動呪文で何処へでも行けるよ」

「ふうん」

 普段のお出かけに丁度良いワンピースに着がえたユーリーンを連れて、ニキはセピア公国まで移動した。着いた所は、首都に在る近頃建ったショッピングセンター内だった。人通りが何故か丁度途絶えた、紳士服売り場の裏通りである。

「この辺りはいつも人が居ないんだよ。紳士服を買いに来る奴はあまりいないみたいだな。あはは」

 どうやら、ニキは何時もこの辺りに移動しているらしい。ユーリーンも子供の頃、旅行でここが古い建屋だった頃来たことがあった。

「何が食べたい」

「えーと、焼き肉かな。高級なお店は予約が居るでしょ」

「平日だから予約無しでも入れると思うけど、僕も肉が食べたい気分だな。7階の焼き肉店が美味しかったな」

「詳しいのね。セピアに良く来るの」

「月に2,3回ぐらいかな。さっき会った奴や、セピアに居る他の奴とも会うことがあるからね」

「じゃあ、南の人達より多いんじゃない。パパはセピアと取引していても、そんなにセピアには行かなかった。二カ月に一度行くかどうかって感じだった。一般の人はお金持ちが年に一度旅行に行くって所じゃないかな」

「そうなの、隣国同士なのにね。何かに乗らなきゃ動けないからな、あいつらは。そろそろ話の内容は気を付けようかな。人通りが多くなる」

「うん、わかった」

 ユーリーンはニキに言われて辺りを見回せば、平日でも昼時になれば、食べ物屋さんの近くは人が大勢集っている。セピア人に混じって、ニール人も時々見かけた。目当ての焼き肉店はユーリーンたちが入って直ぐに満席になった。セーフである。満席の後に来た人たちは、並んで待っているが、一旦席につけは直ぐには出たくないのが、この店である。

「ビール飲む?」

 席についてユーリーンが訊ねると、ニキは、

「僕は運転があるから、ユーリーンだけ飲んでね」

 と言い出した。移動呪文はアルコールが入ったら良くないのだろうと思うが、言い方が可笑しくて噴出した。ここは笑う所では無いはずだが、他所で一杯やって来たような反応のユーリーンである。

「うふふ、あたし、もう出来上がっていると思われそう」

 と言うと、ニキもニヤリとした。店ではテレビがニュースを放送している。そう言えば最近南ニールがどうなったのか、把握していなかったユーリーンである。ニュースの内容は、やはりセピア人でも気になるのだろう、戦後の南ニールの様子だった。アナウンサーが、戦争からもどって来た元兵士が、かなりの人数、急死していると伝えていた。原因不明の突然死や心不全らしいが、識者は戦争のストレスだとか、北の魔人の魔力にあてられたのかもしれないとか言っている。どういう事だろう。ユーリーンは不思議に思ったが、店では話せない。もう少し注文したかったが、ニキは、もう出る事にすると言った。

 それで、店を出ると、ニキが、

「もうすぐ魔族がこっちに来そうだから、さっさと帰ろう。食べ足り無かったかな。また来ようね」

 と小声で言った。

「うん、また連れて来てね」

 帰りは屋上から帰ると言われ、エスカレーターで上がっていると、遠くに義母の姿を見た。横には知らない男が寄り添っていて、何だか仲が良さそうである。二人はこちらを見なかった。私達が上に向っていて、見上げなければ分からないかもしれないが、あいつらが魔族なら、気付くほどの近さだったかもしれない。

「あいつ等の事だったの、魔族って」

 屋上で聞くと、ニキは、

「さあね」

 と言葉を濁した。

「あたしの事気付かれなかったかな」

「ぼくが隠していたからね。気付いていないだろう」

 へぇと思った。

 家に戻ると、用事があるのか仕事部屋に行ってしまったニキを、ユーリーンは追いかけた。ニキは仕事用のデスクにいて、何やらごそごそ引き出しの中を漁っている。きっと何の用もないと思ったユーリーンは、さっきの気になるニュースの事を聞いてみた、

「ねぇ、南ニールの元兵士はどうして急死する人が多いと思う?」

「どうしてだろうね」

 恍けていると思い、

「私はニキがきっと知っていると思う」

「僕が何でも知っていると思わないでね。まだ若輩者だから」

 ユーリーンには教えてくれないつもりらしいが。もう一言、言っておく。

「今朝、どうして泣いていたかも言わないね。夢の話は泣くような内容じゃ無かったと思うわ。変よ、ニキは、私の常識とは違うわね。言っておくけど」


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