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敗戦国の訳有り女兵士は、気付かない内に運命の急上昇中  作者: 龍冶


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第19話 次の朝、やって来たのは・・・

 

 ニキは頭からパワーを漏らしているパパに出来るだけ接しなくなってから、調子良いようなのでユーリーンは安心していた。油断していたとも言える。しかし、ユーリーンが幾ら油断なく、辺りに目を光らせていたとしても、結果が変わる訳ではない。

 その日も少し寝坊した。さしたる用も無いので、いつもの事であるが、ダイニングルームへ欠伸をしながらやって来た。おそらく朝食は皆、食べ終わっている時刻だと思う。

 何の緊張感も無く、部屋に入ると、予想通り全員食べ終わっているようだが、予想外なのは、皆揃って緊張の面持ちの様に見える事だ。

「どうしたの皆、何か悪いニュースでもあるの」

 ユーリーンは相変わらず緊張感無く、誰にともなく聞いてみる。するとユーリーンが開けたドアの側に居たらしい聞きなれない声の奴がしゃべった。

「とんでもない、ユーリーン様。良いニュースでございますよ」

 ギョッとして振り返るユーリーン。言い方は丁寧だが、かなりの圧のある人物が、後ろに居たのだ。それに気づかない自分もどうかしていると思う。いつもの事だが。

 振り返った所には、何時だったか、リューンが言っていた、色黒で黒髪黒い目の男が、三人もいた。

「誰よ、あんた達」

 予想は付いたが、聞いてみた。

「初めまして、ユーリーン様。私は地下にある帝国を収める魔王様の、宰相とでも申しましょうか。グレー・イチと申す者。右に控えますのか騎士団長、弟のセカンド・イチ、左が次の弟、騎士の副団長、サード・イチでございます。魔王様の花嫁、ユーリーン様をお迎えに参りました。どうぞお見知りおきを」

 三人とも約45°ほど、揃って腰を曲げて、礼をした感じである。ユーリーンが覚えのあるパターンの例の事が、また始まったのが分かった。

「あのう、私。もう結婚していますから。お宅の魔王さんは、未婚の人を探してもらえますか。そう言う事で、そのお話はお断りしますから、どうぞお引き取り下さい」

「いえいえ、魔王様はそういった些少な事を気には致しませぬ。ユーリーン様を大変お気に召しており、ぜひ、そいつと別れて魔王様を選んでほしく思われております」

 グレー・イチは、ニキの方を指さすので、ユーリーンはしょげている筈のニキを横目で見ると、椅子に何かぬるっとした気持ち悪い紐のような物でぐるぐる巻きにされていた。

『ひっ』

 ユーリーンは悲鳴を上げそうになったが、辛うじて飲み込んだ。あれはユーリーンの一番嫌いな虫では無いだろうか、やけに長いが。さては、こいつらの嫌がらせだなと察した。怒りが込み上げて来る。

「あんたらねぇ、さっきからあたしが言っているでしょ。分からないの。察しなさいよ。お・こ・と・わ・り。絶対に地面の中になんか行かないから」

 グレーは愛想笑いをしながら、

「ユーリーン様、推察しましたところ。誤解なさっておいでではないかと思います。地下の帝国はこの辺りの地上の町よりももっと栄えて、近代設備などもある大変住みやすい国です。誓っても、モグラのように、土の中で暮らす訳ではございません。この地上の世界よりも、かなり前から栄えていた国でございます。地下に素晴らしく大きな都市があるのです。天井こそございますが、太陽の役割の光り輝く球体がありますし、地上の海と見紛うほどの大海原の様な湖もございます。気温は常夏、何時でも泳ぐことが出来、ボート遊び、釣りも楽しめます。地上のように悪天候の日などはありません。いつも心地よい光に照らされて、食べ物も豊富に育ち、おいしく頂けます」

「そう、じゃあ、あんた達だけでそこで暮らしてね。あたしは行かないの」

「ユーリーン様、魔王様がお待ちです。そこのそいつよりも、魔王様はユーリーン様を愛しておいでです。そいつと暮らすより何倍も幸せになさるそうです。さあ、参りましょう。魔王様は、魔人達の神に永遠の愛を誓うと言っております。そしてそいつよりも、魔王様は数倍はハンサムです。保証いたします」

「あんたの保証なんか、要らないから。何度言えば分かるのかしら。あんた馬鹿なの。行かないって言っているでしょう。お・こ・と・わ・り」

「ユーリーン様、私の説明では不足でしょうから、ここは実際にご覧になった方が、納得される事でしょう。さあ、お前達、ユーリーン様を魔王様の所へご案内しなさい」

 グルーの弟達がユーリーンに掴みかかろうとしたので、

「さわるなっ」

 とユーリーンが叫ぶと、二人は吹っ飛び壁に激突した。三人は驚いているようだ。そのすきに、パパとリューンの座っている方に走って行ってみると、二人も、ニキと似たようなもので一回り縛ってあった。ニキはぐるぐるだったので、能力で縛り方が違っている感じだ。縛り方がどうであろうと、当てにならないのは同じことである。

 グルーは困ったように、

「どういたしましょう。魔王様は少し気が短い御性質なので、そろそろお連れしたいのですが。どうして御承知なさらないのでしょうか」

「馬鹿には永久に分からない筈よ」

 そう言いながら、リューンの食べ残しのパンを掴んで、食べておいた。空き腹では戦えない。

 その様子に地下から来た三人は少し呆れている。ユーリーンは内心、呆れたい奴は呆れろと思いながら、立ったままパンをかじって。相手の出方を様子見である。隣のパパの紅茶でパンを流し込み、まだパンは無いかと探す。ロードさんの奥さんの所にも有ると分かった。三人を睨みながら、移動してまた掴んで食べる。奥さんの紅茶で流し込む。そして、

「あたしって、魔王の嫁にしては下品だと思わない?さっさと帰って、あいつは王妃に相応しくないって、報告したら」

「とんでもございません。魔王様は若くて奔放な女性がお好みです」

「ああ言えば、こう言う。しつこい馬鹿は始末が悪いね」

 ユーリーンは意見を言っておくが、三人はしびれを切らしたのか、三人同時にユーリーンに掴みかかりに来た。

「ぎゃあっー」

 悲鳴を上げると、三人は吹き飛ばされそうになったが、踏みとどまった。

『畜生。慣れたな』ユーリーンは困った事になったと思った。しかし近づくことは出来ないようだ。

 その時、嫌な気配がして来た。前に、ガイルが来た時の様な感じ。ユーリーンは魔王のお出ましと分った。いよいよピンチである。ユーリーンの直ぐ側にそいつは現れた。

 思いたくはなかったのだが、キンキラの服を着た魔王を、とっさの印象でハンサムだと思ってしまった。家来に比べると、かなり色白だから、良いとこの生まれ感はあった。しかし、この嫌なパワーはいただけない。思わず後ずさった。

「ユーリーン様、待ち遠しくなりお迎えに上がりましたよ。さあ、私と結婚式に参りましょう。地下の神殿に素晴らしい結婚式の準備が出来ていますよ。さあ、私と共に」

「触らないで」

 と言うが、触られた。魔王には力負けだ。しかし、

「ぎゃー、触るなと言うのに触った。ぎゃー、ぎあっー」

 やけになってユーリーンが叫ぶと、魔王は流石に眉をひそめ、

「ユーリーン様、どうしてそんなに私を嫌われるのでしょう」

 ユーリーンは危険な方向に行っているのが分かり、怒らせるのは得策ではないと考えた。

「だってぇ、土の中にはあたしの嫌いなニョロつく虫がいるじゃない」

 魔王は機嫌が治ったらしく、微笑んで、

「ユーリーン様、これから行く地下帝国にはそんな虫などいませんよ。むき出しの土などありません。道路は美しく石畳を敷き詰めており、草木は手入れをする係の者が、虫などお目に触れるようにはさせません。さあ行きましょう」

「そんな事言ったって、地下に行くんだから、移動するときは土の中を移動するに決まっているじゃない」

「一瞬の事です。瞬間移動ですから、大丈夫ですよ」

「でも、移動して到着したら、あたしの顔とか頭に、あいつがくっついているかもしれないわ」

「そんな事にはなりませんよ。私が保証します」

「あんたが保証したって、もしも、もしもよ、あいつがニョロついた後の土の中を、その場所を通ってないってどうして分かる訳」

 我ながらよく食い下がると、ユーリーンは感慨深く思う。

 すると魔王は、

「では、これに乗って行きましょう」

 と言って、馬の付いていない馬車の様な、と言うか、車輪が付いていない乗り物の様な箱だけが、部屋の中にドスンと出て来た。綺麗な装飾で窓は無く、魔王が扉を開けると、中は赤いベルベットを張った椅子がある。

『これじゃあ抵抗は無理だな』ユーリーンはそう思った。とうとう、連れて行かれるしかなくなった。

 ユーリーンは、黙って椅子に縛られて座る面々に、

「もう万策尽きたわね。あたしも頑張ったのは分かっているでしょ。じゃあね、みんな」

 と言って、馬車風の箱に入るしかなかったのだった。



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