第18話 次の脅威の気配、ユーリーン大丈夫?
ユーリーンはやっと片が付いたと思ったのだが、パパの言い草にがっくりである。
「パパ、さっき魔力マックスになったとか言っていたのに、伯父様の魔力は全部じゃ無かったの」
「全部なものか、パパは魔力を貯めて木の根を始末する担当じゃなかったからな。木の根を探す担当だから、能力をさずかったわけではない。普通の魔人の能力マックスという意味で言ったんだよ。兄は木の根の息の根を止める魔力をマックスで授かったらしいから、パワーが桁違いだ。あのイチと言う男は木の根から出て来た若木の葉っぱと言った能力のくせに、魔力を取り込もうとして、取り込みきれずに体が膨張した。兄のパワーのわずかな量でしかないにもかかわらずだ。もしかしたら、セピア公国はロケット爆弾のパワーにしたのかもしれないが、そうなると相当な爆弾の数になるだろう。だが、そんなに爆弾を増やして、どうするつもりなのか不思議なんだよな。必要あるとは思えない。ニール国なんぞ北も南も2,3発でお終いになると思うが」
ニキは、
「セピア公国が、戦争を仕掛けるとは信じがたいですから、木の根の端くれがため込んでいると思いますが」
「木の根は燃やしたのにか。イチ家の有様は見ただろう。先っぽでは、あのパワーをコントロール出来っこない」
パパとニキの議論を遮って、リューンは、
「あのう、パパ。重要なお話中だろうけど、僕はいつ元に戻してくれるの」
「ああ、それな。パパは今、魔力コントロールに忙しくて当分無理」
「そんなぁ、僕もう元に戻りたいのに。これじゃあ明日、海に遊びに行けないじゃないか」
ユーリーンは、
「あたしの格好で行けば。二人一緒には外に出られないけど、別行動なら構わないでしょ。さっき、リューンはうろついてたじゃない」
「そうだけど、急いで大男を追っていたから、仕方なくだよ。それにその時、ガラの悪い奴が僕をじろじろ見ていて、嫌な予感がする。海にユーリーンの格好では行けない。おどろおどろしい状況になりそうだ」
「おどろおどろしいだって、何だかあたしもヤな感じ。魔法をかけた人じゃないと解けないのかしら。ニキは元に戻せないの」
「僕も生憎、辺りに磁力が溢れている件の対処に手いっぱいでね」
「あのう、そう言うのって、頼りの二人が本調子じゃないって事でしょ。あたしの運命は大丈夫なの。他の端くれは襲って来ない保証とかあるの」
「そうだね、父上から僕たちは離れて居るべきだろうね。パワーが頭から逃げているはずだから、上の階は都合が悪くなったね」
「じゃあ、パパが3階に行ってよ。あたし達は2階に移るわ」
「そうだな、リューン、上に行こう」
リューンはニキに、もう一度聞いてみる。
「そう言う事なら、ニキさんは2階に居たら、元気が出て来て、僕を元に戻してくれそうなんじゃない」
「分かったよ、2階に磁力溜まりが無くなったら出来るから、明日迄には元に戻せると思うよ」
「わあい」
といって、リューンが部屋の移動をしに行くのを見ていたニキは、
「ユーリーンが二人いるのも、僕の不調の原因のひとつみたいだな。居なくなってほっとした気がする」
「あたしが二人じゃ無いでしょ。偽物と本物よ。何だかニキは重症みたい。しっかりしてよね」
その後、パパの居場所の階下にニキが居るようになって、やっと調子が戻って来たので、リューンを元に戻したニキである。
リューンは元の姿に戻った後、直ぐには3階に戻らず、二人のいる部屋に居座って言った。
「やれやれ、やっと元に戻れてよかった。それにしてもね、ニキさん。この街にユーリーンを狙っている奴が他に居るよ。僕が通りを走っていたら、嫌な雰囲気の奴らが僕と言うか、ユーリーンだと思って見ていた奴。何だか普通じゃなかった。パパが近くに居たから、何もしないで見ていただけだと思う」
「何だと、どんな奴か覚えているか」
「うん、それがね、魔人だろうけど、今まで見かけた奴らと雰囲気が別物だった、ニキさんなら奴らを見れば正体を知っているんじゃあないかな。黒髪黒目で、色黒でさ。僕は日に当たらなければ色白だと思っていたけれど、あれは地黒って言うのかな」
「言いたい事は分かった。そう言う事なら、もう海に遊びに行く計画は止めた方が良いな。君だって何かの足しになると思って、さらうかもしれないぞ」
「えっ、僕が何の足しになるって言うのさ」
「父上が大事にされているから、人質とかだな」
「ひぇー」
そんな会話をして、リューンは3階に戻った。
ユーリーンはリューンが居なくなるまで黙っていたが、二人だけになると、
「ちょっと、さっきの話、どういう事?あたしあんまり意味が分からなかったよ」
「そのまま気にしないでいてくれないかな・・・無理だろうね」
「無理って分かっているなら、教えてよ。誰なの、リューンが見た奴は」
「地底に住む魔人だよ。木の根じゃなくて本物。以前伯父上が言っていた事は憶えているかな。昔、神が魔人を望んで、ニンフにサンプルを作らせたという話」
「うん、覚えている。あの時、不思議な話だと思ったけれど」
「そうだろうね、神がニンフに作らせたという魔人のサンプルは、僕らの祖先の事だ。それと言うのも神が地上に色々な生き物を作って、その頂点に人間を作って地上を楽園にしようと考えたけれど。それと同時期、悪魔が地下に魔人が済む帝国を作った。魔法が使える魔人は人間よりも強くて、地上の楽園を脅かす存在だった。神は人間に神と似たような知恵を授けていたが、知恵だけでは魔族には勝てないので、地上にも魔法の使える人間が必用だと考えた。神は尊すぎて地下の様子を見ることが出来ず、地下の魔族に対抗できる魔法のアイデアを出すことが出来なかった。そこで、ニンフに地下の魔族に対抗できる魔法を使える人間、言わば魔人のサンプルを作らせた。そして神は気に入ったアイデアで魔人を地上に生まれさせた。そういう言い伝えだけれど。本当に地下には魔族が居る。悪魔が作った帝国と言う事に言い伝えではなっているが、命あるものは、神以外には作れはしないと神殿にある書物には記述されているらしい。だから、はるか昔に神が作られた地下帝国があって、その後、地上にも生物を作ったけれど、地下の魔族が、地上の楽園を脅かす心配があったと言う事らしいんだ。だから地上の人間を生き物の頂点に据える計画を変更して、魔法を使える魔人を生物の頂点にしたと言う事だ」
「ふうん、その話、前にあたしが言った時、ニキは知らないって恍けたよね。あたしより詳しく知っていたんだ。ふうん」
「機嫌が悪くなって来たね。怒らないでね。あの時はユーリーンは話すと怖がると思ったんだけれど、最近、自衛もある程度出来ているから、話しておくことにしたんだよ」
そこでユーリーンは、はっと気が付いた。
「つまり、その地下帝国の魔人があたしを狙っていると言う事」
「僕が守るから、心配は要らないからね」
「さっき、あたしが自衛できているとか何とか言ったよね」
「そうだね。でも基本、僕が守るつもりだからね。ずっと僕といれば心配ないから」
「そして、ニキが地下の魔族にやられても、あたしには自衛手段、嫌なものははじく手段があるから、大丈夫だろうと思って話したって事よね」
「んー、そう言う事言っていないつもりだけど」
「ニキがやられるはず無いけど。信じてるのよ。でも、最近は色んなパターンを想定する事にしているの。想定外な事があれば、困るのはあたしだもの」




