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敗戦国の訳有り女兵士は、気付かない内に運命の急上昇中  作者: 龍冶


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16/22

第16話 ユーリーンは何時も何かに追われる運命なのか、今回パパもだった

 

 ニキはその夜が更けて、グルード家の護衛数人を連れて、ガブ家に奇襲を掛けに行った。

 ユーリーンは眠れず待っていると1時間もせずに戻って来て、六つの一族の内、四つの一族はそこに居て、やる気が出なくなる程度に痛めつけておいたと言った。パパに報告すると、後の二つはその噂だけで諦める可能性があるから、様子見で良いと言っていたそうだ。

 ユーリーンは安心して眠り、翌朝皆で朝食を食べ終わるころ、驚いた事に国王のお呼びだと、城からパパに迎えが来た。執事さんが知らせに来たので、ニキは外に居る迎えの面々を窓から見て、

「グルードさん、迎えの面々はどうやら、投獄の役回りの役人と兵士の様ですよ。来るなら僕だと思っていましたが、グルードさんの方が投獄される理由がわかりません。どうやらユーリーンの夜逃げの案を、実行しなかったのは浅はかだったようです」

「ははは、とうとう来やがったか。理由はな、20年前俺が王妃予定のユーリーンのママを連れて逃げた罪だよ。兄貴が居なくなったから、捕まえに来おったな。執念深い奴だ」

「まあ、じゃあ今からでも逃げるべきよ。執事さんにお役人は客間に通しておくように言って、さっさと移動呪文で逃げましょうよ。もう馬鹿正直に捕まるなんて止めてよ、パパ」

 ニキは、

「しかし、もう移動呪文阻止の魔法を外からかけている。移動呪文は出来ない様です」

 ユーリーンは、

「じゃあ、外の奴らを倒して逃げるべきね。そいつらを倒して、取り敢えず、セピアのニキの家にとりあえず移動して、それから潜伏場所を決めて、隠れるのよ」

「セピアの家はイチに出会う危険がある。一旦移動するだけなら、ソルスロの家で良いんじゃないかな」

 ニキが言うが、パパは、

「そっちにも兵は行っているんじゃないか。何処へ逃げるか見当は付けているだろう」

 ニキは、

「それでは南ニールの適当な場所は有りますか」

 パパは、

「友人の家がある、一家で移動して来てもさほど驚く奴ではない。私が外の兵を倒している間に、ユーリーン達は荷物をまとめなさい。私の荷物はまだ来ていないから、運搬途中のを後で取り戻そう」

 そう言ってパパは瞬間移動で外に出て、あっという間に役人や兵士を気絶させた。

「これじゃあ、荷物をまとめようがないじゃない。早すぎよ」

 ニキは、

「要る物はむこうで買おう。こういう時は身一つでも逃げるが勝ちだな。次のが来る前にね」

 リューンは、兵士たちを倒して戻ってきたパパに、

「パパ、隣のロードさんちに行くの、だったら僕自分で・・」

「いや、隣には居ない、ガイルに目を付けられて、別の家に引っ越したからね。リューンの知らない住所だ。パパが連れて行くから。何処かはここで言わないでおこう。壁に耳ありとよく言われているからね。さあ、四人で輪になって手をつなごう」

「あ、ジャージが・・・」

 ニキは、

「あれは止めておこうね。位置情報機能を仕込んでいるかもしれない」

 ユーリーンはジャージに仕込めるのかと感心した。と言う事は、それであの時ガイルがユーリーン達のいる場所にやって来たのだと、今になってやっと分かった。

 こうして四人は夜逃げ同様に、グルードの本家から逃げ出したのだった。


 到着したところは、南ニールの南海に面した港町の古びた館だった。パパが言っていた通り、四人でロードさんちの居間に飛び込むと、

「おや、グルードさん、お揃いでようこそ」

 と、ソファで寛いでいたご夫婦に言われた。住人には驚かれなかったが、奥さんの膝で眠って居た猫には、「シャー」と空振りのパンチを貰った。

 リューンは猫を知っていたようで、「チーちゃん、僕だよ」と声を掛けると、猫は歓迎ムードに変わって、ほっとしたユーリーン。猫に引っ掻かれたくはない。

 裏通りに面した古い館は、年代物の古さだったが、部屋数が多く、ユーリーンの一家四人が居候しても十分な広さだった。

 ユーリーンは、よく観察すると、この館は、元はホテルだったらしく、他に数家族は居候できそうだ。ロードさんはパパのお友達だそうなので、パパが逃げて来なければならない可能性が分かっていて、この物件に引っ越しておいたのではないかと思える。北ニールの王様に捕まる可能性とかである。

 ロードさんは、好きな部屋を選んで良いと言ってくれたので、ユーリーンとニキは三階の窓から遠くに海が見える部屋を選ばせてもらった。

 生活用品は、後で買いに行く事にして、ほっとしたので、窓からしばらく二人でビルの間から見える青い海を見ていた。海水浴にはまだ早いが、海岸で遊んで過ごすことは出来そうだ。ユーリーンは、明日行ってみようと思う。

 その時、来て早々とんでもない事が起こった。海岸近くにいたらしい人々が、大慌てで通りを走って逃げて来る。ユーリーンとニキは、何事かと建物の間から小さく見える海の方を、窓から頭を出してよく見ようとすると、ユーリーンが確かめる間は無く、ニキがユーリーンの頭を部屋の中に引き入れた。

「何なの、あたし、まだよく見ていないんだけど」

「ユーリーンがはっきり確認したころには、向こうもユーリーンを確認するだろうよ」

「何なの、誰かいたの」

「誰かじゃなく、魔物がいたという方が正確だ。変だな、位置情報が分かる装置など持って来てはいない筈だが」

「ええっ、魔物があたしをこんなに早く狙ってきている訳、それなら、窓際に近すぎて、通りからあたし達が見えていたとか?でも、そうだとしても早すぎるわね。見だしてまだ5分位よね」

「海の中でずっと持っていたかもしれないね。ここに来ると、見当を付けて待っていたのだろう」

 そう話しているうちに、人々の悲鳴が近くから上がった。

 ニキははっと気が付いて、

「近くまで来たな。この部屋から出よう。で、廊下で行き過ぎるのを待とう。廊下にいれば窓から見られないし」

「窓から見られるって?大きいのね」

 ユーリーンはポカンとしているうちに、ニキに首根っこを掴まれて部屋から放り出された。

「ちょっと、猫みたいな扱いね」

「すまない、ちょっと慌てた。ユーリーンの気配は隠したから、目撃されない限り見つからないから」

 そこへ階下からパパがやって来て、

「どうしてここが判ったのかな。そうか、ユーリーンの気配はもう隠したのか、それなら場所を変えて、あいつは始末して来よう。ニキはここでユーリーンを守っていてくれ。一匹だけとは限らないからな」

 そこへもう一人階下から来たのは、鏡に映したユーリーン状態なのだが、ユーリーンはそいつを見て分かった。

「まっ、リューンふざけないで、それで化けたつもりなの」

「僕じゃないよ、パパがしたんだから。気配さえ同じならいいとか言うけど。変に見えるんじゃない?」

 パパは、

「少しはユーリーンらしくしてみろ。やる気があるのか」

 と怒り出した。リューンは、

「いやーん。この服ださーい。これじゃあ、イチは気に入ってくれないわ。まぁ、あたし、中身は良いけど」

 ふざけたような、妙な事を言うので、

「何よ、それ。どういう意味」

 パパに黙れと拳骨を食らうリューンを見ながら、訳が分からなくなるユーリーン。

 ニキは、

「僕の考えを読めるんですか。グルードさん」

「私じゃない、リューンだ。今まで気付かなかったのか」

 ユーリーンとニキは嫌そうに

「ええっ」

 と言ってしまった。

 パパはリューンが化けたユーリーンをつかんで、

「人通りの少ない所で、こいつを放して、デカくなり過ぎたイチをおびき寄せる。兄のパワーは体に閉じ込めておけず、デカく膨張して、パワーを漏らしながら動いている。体にダメージを受けているから、そう長くは持つまいな。それで、ユーリーンの治癒能力をあてにしているから、偽物と感付かれたら探しに戻ってくるかもしれないぞ。気を付けろ」

「分かりました」

 パパ達が何処かに移動してしまった後、ユーリーンはニキに、

「ニキはさっき見たんでしょ。イチがどうなっていたの。隠していたけど、動揺していたでしょ」

「うん、毛むくじゃらの魔物の様だったけれど、一応衣類らしきものを付けていて、頭に角が一つあったし、毛の色もプラチナブロンドのように見えたから、もしやと思った。だけど、目は一つ真ん中にしかなかった。僕は見られたかと思ったが、認識していない様だった。グルードさんが言っていたように、強烈なパワーを取り込み過ぎで、心身共にダメージが来ているんだろう。おそらく、ユーリーンしか認識しないだろうな。正気の時にユーリーンに治癒能力が有ると分かっていて、それだけは憶えていて行動していると思う」

「何だか、かわいそうな気がする」

「同情したらダメだよ。元の木の根が燃えて、生き残るために伯父様をだまして、殺したんだからね」

「そうだった。不味い事になったのは、神の罰だよね」




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