第15話 伯父様の身に大変な事が、ユーリーンは今後の方針について自説を述べる
翌日、ユーリーンとニキがダイニングルームに朝食に行ってみるが、伯父様はまだ、席には居なかった。珍しい事もあるものだ。配膳係の人達も伯父様を待っているが、誰か声を掛けに行く人は居ないのだろうか。
「何時も伯父様の朝の世話は誰がしているの」
居合わせた執事さんに聞くと、
「お館様には近侍は付けておりません。お力がありすぎて、朝は特に激しゅうございますからね。昨日は遅くお帰りでしたので、お疲れなのかと思っておりましたが、皆さんお揃いになられましたから、私が声を掛けに参りましょう」
そう言って、執事さんは伯父様の部屋へ向かった。
ユーリーンは執事さんを見送った後、
「ねぇ、ニキ、嫌な予感しない」
「ユーリーンがそう感じるのなら、そうだろうね」
リューンもやって来て、
「伯父さんが起きて来ないってね。まさか、くたばっていないだろうな」
リューンの言う事は無視して、ユーリーン達が待っていると、執事さんは走っているような感じで戻って来た。
「大変でございます。お館様は眠られたまま、ご逝去されましたようですっ」
「そんなっ」
ユーリーン達は伯父様の部屋に走った。
執事さんの言う事は正しかった。伯父様は、ベッドで眠って居る様で、息はしていない。昨日は強力なパワーが無くなってしまっていたが、次の日も生きるパワーさえ、無くなっていたのだろうか。
「あいつが伯父様を殺したんだわ。伯父様、次の日まで持たないぐらいパワーを吸い取られていたのよ。おのれ、えーとあの市長、何て言う名前かしら」
リューンは、
「僕、昨日調べたら、リミドラ・イチだったよ、セピア市市長だろ」
「イッチーッ」
ユーリーンとニキはそろって叫んだ。
「ほら」
リューンは自分のセピア製の最新型スマホを見せた。
「ママがガイルからのプレゼントだって言って、くれたんだけど、良い物はもらっておく主義だから」
市長の紹介ページを見て、ニキは、
「あいつの叔母だ。これではっきりした。それから、リューン、このスマホはおそらく位置情報機能が入っているな。リューンの居場所はガイル達に、今はイチ達に筒抜けだな。捨てろ」
「ええっ、何処に捨てるの」
「こうしよう。どうせ此処は知られているが、腹が立つ」
ニキは窓からスマホを投げ捨てながら、ばらばらに破壊して燃やした。
「クソう、やられっぱなしでは不愉快だな」
ニキは割と凄味を出して、呟いた。
「そうよねぇ」
ニキの憤りに、ユーリーンはおそるおそる相槌を打つが、策は無いと思える。
北ニールの魔人の葬式は亡くなった人を白い布でぐるぐる巻いて、神殿の近くに在る滝壺に投げ入れる。白い布で巻くのは魔物との戦いで、遺体がバラバラになってしまった事があった為の処置で、ちゃんとした体の場合でも何時の頃からか、それが習慣になった。魔族の神に体を返すという意味で、滝壺に投げ入れた遺体は、決して上がってくることは無いそうだ。
「本当に神の元に帰ったような気がする」
ニキは言った。何度も葬儀をした結果の感想だろう。
伯父様の遺体も同じく、滝壺に投げ入れる事になった。最近、神殿迄セピアの高級車で遺体を運ぶパターンが流行っていたが、グルード家ではそんな事はやめて、移動呪文で運ぶことにした。
ニキは移動呪文は得意ではない事を、また言い出したので、この事は事実なのだろう。いよいよ遺体を運ぶ時間になって、リューンは僕が運んでみると言うので、ユーリーンは頑張ってもらおうかと考えていると、そこへパパが戻って来た。葬儀に間に合った。パパが運ぶだろうと思う。
「パパ、伯父様死んだのよ」
パパに久しぶりに会うと、何だか涙が込み上げて来た。パパの様子はいかれている感じがしない。正気だったけれど、いかれたような芝居をしていたのだと、今なら分かるユーリーンだった。
「葬儀に間に合えたようだな。苦労を掛けてすまなかった、ユーリーン。酷い育て方だったが、ひねくれもせずちゃんと大人になってくれて、嬉しいよ。まともに話も出来ず別れてしまったが、ソルスロの婚約者と結婚出来ていて安心したよ。ニキさん、あの頃、ユーリーンの面倒を見てくれて有難かった。ソルスロ家に預けておきたかったが、不自然な行動は魔族に怪しまれると思って、連れて帰ってしまった。すまなかった。失望させている事は分かっていたが、あの時分は信用させることが出来るのなら、何でもする事にしていたから、皆に無理させてしまった。兵役に行かせたのは本家では不評だったのも分かっていたが、北ニールとの国境に居させることが出来るので、いざとなれば兄が助けに行くと思っていた。しかし、兄はちゃんとしていたはずなのに、どうしてこんな事になってしまったのか、魔力マックスの体は相当負担だったのかもしれない。役目をやり遂げて、気が緩んでしまったのだろうかと思っている。もう少し早く帰ることが出来ていればと思うが、過ぎた事を悔やんでも仕方なかったな」
ニキはユーリーンのパパに事情を話した。
「グルードさんも、お役目ご苦労様でした。実はセピアに木の根から出て来た、地上に生きる魔人が存在していて、それにパワーをだまし取られて、すっかりパワーを吸い取られて、一晩で命が尽きてしまわれました」
「パワーを奪われたのか。木の根から出た魔人にか」
「はい、セピア人風の魔人に化けていましたが、元は木の根の魔人でした」
「それは不味い事になったな。セピアは高度の兵器を色々開発している。それの動力源に使われたら、北ニールはひとたまりも無いだろう」
「そうなんでしょうね」
只ならぬ会話が始まって、ユーリーンは聞いた。
「高度の兵器の動力源って、どういうのの事」
「ロケット爆弾だ。セピアから撃っても、動力源次第では北ニールまで届く物だ。セピアに何のダメージも無いまま、北ニールは惨敗で負けてしまう。住む家も食べ物も無い瓦礫にして、セピアから魔人が乗り込んできて、ユーリーンをさらっていくつもりだろう」
ニキは、
「そうは、させるつもりはありません」
ときっぱり言い切った。
「そうだ。私もそうそう、奴らの思い通りには、させないつもりだよ。遠隔操作で動かす兵器は、遠隔操作で崩せるとも言えるんだ」
「なるほど、グルードさんは、そう言うことが出来ると?」
「グルード家の磁力属性は、色々出来る事があってね。兄貴はパワーをため込んで出すときに爆発させる大技一本だったが、私は小技専門でね、場所が分かれば遠隔操作での機械類の破壊は得意だ。葬式が終われば始めよう」
そう言ってユーリーンのパパは伯父様の遺体を移動呪文で神殿まで運んだ。そうして、滝壺の中に落として、葬儀を終えたのだった。
本家に戻ると、お館様を忍ぶ知人が集まっていた。生前、伯父様が信用できると思っていた人だろう。葬儀は身内で行ったが、夜はグルード家の領民達もお悔やみにやって来た。やってきた人々は、
「お館様のお力で今まで平和に暮らせていたけれど、これからは、南ニールどころか、セピア公国や、同じ北ニールでもグルード家に思う所のある魔人達が、攻めて来るかも知れません」
と、老若男女言う事は似たようなものだった。ユーリーンは、ぞっとした。
パパは、
「お前達、もう一人居るだろう。王の事を言い忘れているぞ」
とまで言い出した。
今まで皆、伯父様のパワーを恐れて大人しくしていたけれど、亡くなってしまえば、どうやら調子に乗るのが、魔人の習性らしい。
ユーリーンは何だか段々むかついて来て、
「パパ、周りの奴らがグルード家を襲って来るんだったら、セピア製ロケット弾が、その辺に落ちたって構やしないんじゃないの。あたしらは、例えばセピア公国のこちら側の国境とは逆の所に潜伏するって言うのはどう。どうせなら意外な所に逃げるべきだと思うわ。夜逃げ出来たとして、元は木の根の魔族に居所を知られない方法って無いの」
「しかし、そんな事をすれば、このグルード家を頼る民が酷い目に合う。一般の民衆には、グルード家は責任があるんだ」
「随分ご立派なご意見ね、じゃあこの事はどう?この前、伯父様がガイルを倒した後、王様にグルード家は宰相職を疎かにしているという訴状が6件来たそうよ。パパは、誰が出したか見当は付く?」
「それは判るよ、昔からこの家とは仲が悪い魔人一族だ」
「そう、北ニールの馬鹿は見当がついているなら、手始めにそいつらは早めにやっつけておいたらどう?敵は多いんだから、襲ってくるまで待つ必要は無いと思うの。これからは、馬鹿正直は何の役にも立たないと思うの。あたしは元が木の根の魔人達にさらわれる気は無いのよ。土の中のニョロついた虫は大っ嫌いなの」
ニキはユーリーンの演説はもっともな意見だと思った。最後のセリフは、どうやら勘違いしている感があったが、指摘はしないでおくことにした。その勘違いがユーリーンのやる気の元だと気付いていた。
「僕も、ユーリーンの方針に賛成だな。今晩そいつらに夜襲を掛けて、グルード家を襲う気持ちが削げるようなダメージを与えておくのが良さそうだ。僕が行って来るよ、ユーリーン。六つの一族がまとまると厄介だからね」
「そう、でも一人で行くの。大丈夫?」
「ユーリーン、僕は兄達が居なくなってからは、ひとりで魔物を倒していたんだよ。魔人相手は赤子の手を捻るようなものだ」
パパは、
「そうは言ってもやり過ぎないようにしろ。味方になりそうな一族の不評は避けたいからな。恐らく今晩、どこかの一族達はグルード家を始末する話し合いをしているだろうから、手始めにそこからダメージを与えるべきだろうな」
「どこか分かるの、パパ」
「ガブ家に行けば、無駄な移動は無いはずだ」
ネタの思いつき方向が違ってきて、エピソードを投稿していくにつれて、作品の題名が内容と合わなくなっている気がします。こうなったら、合って来るように気合を入れて思いつくつもりです。




