第13話 翌日の過ごし方色々だが、気がかりは伯父様
翌日ユーリーンは欠伸しながらひとり、朝食に一階に行くと、伯父様は既にセピア公国に行くべく、身支度を終えて、玄関先に居た。
「伯父様、もうお出かけなの。用心に、ニキも一緒に出掛けて欲しかったけど、昨日夜遅くまで調べ物をしていて、まだ眠っているみたいなの」
「そうかい。だが、わしは一人で行くつもりだったよ。さすがに魔人が二人で行けば、脅しのように見えるだろう」
「そうね、じゃあ、行ってらっしゃい」
ユーリーンは伯父様の昨日からの、直談判という言葉が気がかりだったが、成るようになるだろうと考えない事にして、一人朝食を食べる事にした。
いつもの美味しい朝食を完食後、昨日リューンに買ってやることを約束した感じになっている、彼のベッドやデスクについて考えた。ニキにねだるつもりだったが、これから金欠になれば何だかぜいたくな気もして来た。ある物を使わせるべきではないだろうか。
丁度そこへニキがやって来た。
「おはようニキ、夜遅くまで調べていたみたいね。何か対抗手段はあったの」
「おはよう、ユーリーン。今朝は早いね。そうか、僕が遅かったのかな。部屋が別だと一緒に朝食を食べられないね。今晩から同じ部屋で眠るべきじゃないかな。請求書の異議申し立ては、どうだかねと思うな。こういった訴えか来た場合の、セピアの裁判所の方針は良く分からないが、訴えを却下した方が、自国が潤う事は明らかだからね。一応、証言者はカイザーの彼女だったから、関係者の証言だという証拠はそろえておくけれど。後は伯父様の直談判の結果待ちだな。話の分かりそうな市長なら、交渉に応じるだろうから」
「ふうん、まだどうなるか分からないものね。じゃあリューンの部屋の内装、待っておこうかな。こんな状況なら」
「あ、その話、昨日リューンからも聞いたよ。その位の事、大丈夫だけど、イチに連絡が付かなくなったんだよ、昨日から。で、思ったんだけれど、木の根のガイルがどんどん魔力を吸収していって、木の根の先っぽから魔人や魔物が出来ただろう。だから地上にも奴の一部分が出て来ているんじゃないかな、木が生えてくるように。つまり、地上に生きる魔人のようになってね」
「それで、それがセピアの魔人達で、イチに連絡が付かなくなったのは、木の根がやられたからって言うの」
「そう。だから、リューンの部屋の内装の買い物がてら、イチの家に様子を見に行こうと思っている。
ユーリーンは留守番で良いかな。ここには護衛が大勢居るし」
「まっ、あたしも行きたいわ」
「君がついて行くとなると、リューンもきっと行くと言い出すよ」
「来たけりゃ、来させれば」
「僕は生憎、移動呪文はひとり迄しか効かないんだ」
「前からそんな言い草ばかりだけれど、きっとニキは二人連れて行けると思う」
「僕は、移動呪文は得意では無いから・・・」
そこへ噂のリューンがやって来て、
「僕はその移動呪文、得意なんだ。一昨日だってパパに掛けてもらう事なく、自分でここに来たんだから」
「すごい、パパに教えてもらったの」
「始めから何となく、行きたい所に行ける。ユーリーンの治癒魔法と一緒だね」
「え、あんた知っていたの」
「うん、ユーリーンが誰かと喧嘩するたびに、傷を治して何も無かった様にしているのは知っていたよ」
「やれやれ、グルード家は習わなくても出来る、得意魔法があるんだね。僕は何でも親父から習うしかなかった。ソルスロは習って、段々力を付けていくタイプだったな」
「この間、属性がどうとか、伯父さんが言っていたけれど、僕らは何なの。パパはそういう事、教えないんだ」
「グルード家は、磁力だ。パワーで爆発的な力を出したり、体に作用させて治癒魔法を掛けたり、嫌な奴をはじいて近づけさせなかったり、リューンのように地上から浮いて移動出来たりする。工夫次第で何でもできる万能属性だ。実に羨ましい能力だな」
「羨ましがったりして、ニキは何の属性だと言うの」
「ソルスロ家は色々持っている。火と水と光と闇、他もある奴も居るけど、僕は主にこの四つを使い分けている」
「それって逆属性みたいだね。一人でそんなの持てるの」
どうなっているのかリューンが不思議がるけれど、ユーリーンはなぜ不思議かも良く分からない。
ニキは、
「相殺させて、無力なふりをしている。普段は人畜無害に見えるだろう。僕は」
「そうとも言えないよ。何か訳ありな感じはする」
リューンに言われて、ニキは首を傾げた。ユーリーンは思った。ニキはソルスロ家の魔物退治に特化した迫力満点の戦闘能力が有ると思う。
結局、三人でセピア公国に出かける事にして、始めにニキの一家の持ち家近くに在る、イチ家に行ってみる事になった。ニキは移動呪文で、二人を連れて行ける事が分かった。ユーリーンは、ほら見ろと思ったが、黙って連れて行ってもらった。買い物はニキの懐からの出費にしてもらうので、大人しくしておく。
イチの家はしばらく人が住んでいない様だった。ニキもセピアの家には家族が死に絶えてからは来ていないふうだった。
「イチは最近、ここには住んでいなかったんだな。じゃあ、何処に居たんだろう。こことばかり思っていたが、確かめておくべきだったな。最近、イチの個人的な事を話題にしなかったのは、迂闊だったようだ」
どうやら目的のひとつは、分からずじまいのようだ。仕方なく、セピアの有名家具店に移動する事にしたが、移動呪文は止めて、車をレンタルして移動する事になった。ニキは、
「あの店は郊外の開けた場所にあるから、移動呪文だと到着するタイミングが悪い場合には、誰かに目撃されるかもしれない」
ユーリーンは、なるほどと思った。
少し辺りを歩くと、レンタカー会社があった。ニキは周辺に詳しいのだろう。三人で規模の大きな家具店にレンタカーで行き、リューンの好きなベッドやデスクを買い、北ニールへの発送を依頼した。
その後、家具店の横には、郊外型ショッピングセンターがあり、そこへ行った三人はリューンの普段着を見繕ったり、軽い昼食を食べてみたり、北ニールでは出来ない娯楽を楽しんだ。そして、ソルスロ家の空き家から移動呪文で北ニールの家に戻った。
グルード家に戻ってみると、「お館様がまだ戻って来てはいない」と、執事さんに訴えられた。心配しているようだ。ショッピングを楽しんで来た三人は少し反省した。
「何して居るか知らないけれど、伯父様、お帰りが少し遅い気はするね。ニキ、どう思う」
「そうだね、随分早く出かけたようだが、おそらくアポ無しだから、仕事の開始時間前に会うつもりだったのだろう。だから、帰りが遅すぎると言えるね。僕も同行すべきだったかもしれない。後の祭りだが」
結局、戻って来るのを待つしかないと言う結論だが、ニキに、
「あの能力が有るのだから、心配は要りませんよ」
と言われた執事さんは、少し不満気にしていたが、どうしようもないのは間違いないので、玄関でイライラ、階段の手すりを磨くことにした様だった。
結局、お館様のご帰還は、夕食時間をとうに過ぎ11時近くになり、皆で顔を見合わせて、当てはないが探しに行くべきかと考えていた時だった。




