第11話 伯父様が役目を成し遂げたその後、問題は片付いてはいないのだろうか・・・
その日の夕食はユーリーンの弟の思いがけない登場で、弟を交えて、四人で和やかにお祝いの料理を囲んだのだった。今までの魔族との争いに遂に勝利したお祝いである。ユーリーンは主に弟と会話し、時々ニキや伯父様とも話して、一家の中心的若奥様ぶりを発揮していた。だが内心、会話は自分だけのおしゃべりで、伯父様及びニキのだんまりぶりは感じていた。弟がいなかったら、もっと悲惨な夕食時間となっていた事は分っていた。
いつも通り、段々我慢できなくなったユーリーンは、伯父様の方は無理だったので、ニキに向って、
「ちょっとどういう事、お通夜みたいなこのありさま、まさか木の根のお通夜があってるの、この席で」
と言ってみた。雰囲気が我慢できない。リューンはうつむいてプルプルしている。男の子でも、箸が転がってもおかしい年ごろって言うのは有るらしいが、今は放って置く。そして、
「せっかくのお料理の味が、イマイチになって来ているんですけど」
ニキが黙っているのでなおも詰め寄る。
「どうしたの、僕は普通にしているつもりだよ」
「普通じゃ無いでしょ、さっきから、そうだねとかの相槌ばかり。木の根だってもっと気の利いた話をしそうなんですけど」
「ユーリーンは分からないみたいだけれど、僕は今、食事に集中しているんだ。そうしないときっとぶっ倒れる」
「どういう事」
すると、伯父さんは、
「ユーリーン、今日はわしの魔力の押さえがあまり効いていないんだよ。それでだろう。ニキを責めるのはやめておくれ。一旦魔力を出してしまうと、引っ込めるのに時間が掛かっているようだ。わしも、もう年だな」
「でも、あたしは別に普通通りだと思うけど。違っているの。今、何かしらが、伯父様から出ているの。魔力って言われても、何なのって感じよ」
「ユーリーンもわしと同じ属性だから感じないんだよ。難儀な能力を持って生まれたが、木の根を退治したら失われるものと思っていたが、そうでもなかったな。やれやれ、この家の使用人も、同じ属性の者を集めたから良いのだが、こうなったらわしは、むやみに他所へは行けない。違う属性の者だと気を失うだろうな。魔力が多すぎるんだよ」
「ふうん、そうなの。昨日もそういう魔力が多いとかの話聞いたけれど。伯父様は本当は王様の宰相なんでしょ。そんなふうで、宰相のお仕事出来ていたの」
「出来ていなかったな。ユーリーンは言う事が的をえているね。今まで誰もそれを指摘する者は居なかったが。言われて見れば、もう引退すべきだろうな。ニキが養子で来たのだから、わしは任を解いてもらい、ニキを宰相職に任命してもらいたいと、王に願い出るべきだろう」
「まっ、あたしが言ったからって、別に早まらなくったって良いんじゃないかしら」
「いやいや、他の奴らはそう思っているはずだ。お前から指摘される前に、とっくに他人は感じていただろう。仰せつかった役目をさぼっているとね」
「でも、あいつを倒したから、どうこう言われる筋合いはないと思うけど、あいつを倒す為に宰相職は疎かになっていたって事でしょ」
「他人はそんなに分かりが良い奴は居ない。やっていない事は、出来た事とは別物で、非難する理由になる。あす、王に書簡を送って任を解いてもらう事を願い出よう。少し魔力が引くまで待って、王に謁見もせねばなるまい。他の奴らが思いつく前に行動しないと、腹が立つからな。奴を始末し終わったと知れば、文句を言い出すに決まっている」
ニキは伯父様の言う事に同意した。
「それがよろしいでしょうね。ユーリーンはよく気が付くから、助かりますね」
そして、ユーリーンを褒めだした。いつのも調子が出て来たニキである。
次の日からニキと伯父様は忙しく、城に出入りし出した。魔力の抑え込みが出来るようになったのだろう。朝一番に王様あてにニキが書簡を持って行き、午後から二人して出かけた。
ユーリーンはというと、弟の部屋を模様替えすると言うので、付き合ってそれなりの意見を言って過ごした。昨晩は客間で眠ったが、豪華すぎてゆっくりできなかったらしいリューン。自室も豪華になりそうで、ユーリーンに何とかしてくれと目で訴える。執事と年寄の近時の意見に逆らえないらしい。
可愛そうなので、
「せっかくだけれど、弟は元気が良すぎて、年季の入った家具は壊してしまいそうだわ。調度品は置かない方が良いし、もっとシンプルなベッドやデスクは無いかしら。無かったらニキに頼んでセピア公国の家具店で注文するから。新しいのが来たら、この古いのは外に出してちょうだい」
豪華なのは止めて欲しいとか言えば、押し切られるので、新しいのが良いと言っておいた。執事さんとお爺さん近時は納得してくれた。
夕食の時やっと二人は戻って来た。
ユーリーンはダイニングルームへ、夕食に間に合って戻って来たニキと二人で向かっていると、
「ユーリーン、朝の開城の時間前に書簡を持って、王に会いに行ったら、何とか他の奴らの訴状の前に渡せたよ。ギリギリセーフだったな。伯父様の力で魔族の王の息の根を止めたのに・・木の根の事情は王は御存じだが、グルード家の秘密だからね、グルード家は宰相職の務めを怠っているという訴状が匿名で6件来ていた。それを王が見たのは、僕に新しく宰相職の命を授けた後だったから、捨て置くと王が言ったよ。それで、僕は思わず笑ったみたいなんだ。そうしたら、王妃に僕の笑い顔は初めて見たと言われたし、結婚したら愛想がよくなったと王にもからかわれた。どうやら今まで僕は、城で一度も笑っていなかったらしいんだ。自分でも驚いたな」
ユーリーンは、伯父様が怒り出すような事態にならなくて良かったと思った。そして、
「あたしはニキのすかした顔も好きよ。初めてお城に行って、王子様のお守役がかっこいいなと思っていたの。そしたら結婚相手はその人だって後から、ピアに聞いてちょっとドキドキしていたわね。うふ」
「最近、ユーリーンは僕をからかうようになったね。駄目だよ、今から夕食なのに」
二人でデレデレ歩いていると、後ろからリューンが来ていて、
「夕ご飯、食べに行くのか行かないのか、はっきりさせてね。僕はお腹が空いて、急いでいるんだ」
「どうするの、ニキ」
「先に行かせたって。揃うまで待たされるさ。でも追い越したいのなら、どうぞ」
「揃うまで食べられないなら、僕は圧で二人をさっさと歩かせる。圧を掛ける練習をする」
むうっと、寄り目になるリューンを見て、
「わっ、怖」
と二人で慌てて急ぐのだった。




