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第五話 グランメルルの変な客


 メルルと共に店内へ戻ってきたヴェスティアは、先ほどの大暴れが嘘のように家具から何まで以前とまったく同じ事に気づく。壊したはずの家具を思い、今更ながらにヴェスティアは心が痛んだ。


「ほらほら、暗い顔してないでこっち来なさい」


 メルルに手を引かれ、ようやく歩きながら周囲を見る余裕が出る。

 色とりどりの酒瓶が並んだカウンターの前に幾人かが座り、ノエスや従業員らしき女性店員が接客をしているようだ。逆に内々の会話や、食事に専念する者はテーブル席に着いている。そこそこ広い店内だ。

 先ほど、アマルと呼ばれたオレンジ髪の青年が料理を運んでいたり、制服を纏った少年少女の子供達が、せっせとテーブルを拭いているのが見えた。


「ちなみに、日本で子供はこの手の場所では働けないんだけどね? でもま、そんな法律こっちにはないからブリバリ働いてもらってるのよ〜。流石にお酒は控えさせてるけどね。若いと羽目を外しすぎるから」

「はぁ……ニホンでは子供はお酒を飲めないのですか? 変わってますね」


 食前酒は子供でも普通に飲むので、飲酒がどうして禁止されているのか、こちらの常識では理解できない。変わった世界もあるものだなぁ、と思うヴェスティアである。

 メルルの説明を終えてから、二人はカウンターへ近づく。


「ママ〜、連れてきたわよぉ」

「ああ、来たね。そら、店員としてお客の前に立って話し相手になりな」

「は、はい……!」


 カウンターでノエスは煙管を吸っており、ヴェスティアにはカウンターの端に立つよう指示する。

 反対側のカウンターでは、手慣れた様子の女性店員が客と和気藹々に話しつつ追加注文を取っているようで、グラスに氷を入れている。魔法で氷が常備されているらしい。

 それを横目で見つつ、ヴェスティアは面前の客へ愛想笑いを頑張ろうとして、失敗していた。かなり引きつった顔になったようで、男はまじまじとこちらを見ている。

 身なりはあまりよろしくない人相の悪い中年は、ヴェスティアを観察してから唸った。


「へぇ〜、こりゃ別嬪さんじゃねえか。どこで拾って来たんだ、グランマ。かなりの上玉だぜぇ、ってぇ!?」

「あぁら、アタシが居ながら手ぇ出そうとしてんじゃないわよ、このスケベジジイ。次はその皮千切るわよ」


 残像走らせながら隣へ来たメルルが、かなり恐ろしいことを宣いながら中年の手の甲をギリギリと捻り上げている。普通に触れようとしてきたので、ヴェスティアは思わず背後に後ずさった。

 中年は捻られた手をブラブラさせながら、首を竦めた。


「おぉ〜こええ。……んで、グランマはどこでこの嬢ちゃんを? スラム民や浮浪者には見えねぇが」


 気を取り直した男は、ノエスへ話しかけている。そういえば『ママ』はともかく、『グランマ』とはどこの言葉なんだろうか、とヴェスティアは場違いに思ったりした。


「あんたにゃ関係ないことだよ、サッツ。それにタダで情報を搾り取れると思わないことだねぇ」

「へへ、こりゃ手厳しい」


 男は常連なのか、サッツという名前らしい。挙動が読めないサッツへかなり緊張したのだが、それ以上は手を出されることはなかった。ノエスとメルルが目を光らせているのを理解しているのだろう。

 と、そこでサッツの隣席の男性……緑の鍔広帽子の吟遊詩人が、ヴェスティアを見つめて薄く笑う。


「ふふ、店員らしからぬ品のある佇まい。背筋は伸び、重心がブレることはないが、荒事が得意な手ではない。そして憂いを秘めた顔は相手をしっかりと見ている……さては貴族だね、お嬢さん」

「え、ええと……」

「まだ、貴族だよ。手ぇ出したら怖いから止めときな」

「もちろんだとも。ワタシも、この国の権力者を敵に回すつもりはないとも。ああグランマ、貴方とは長い付き合いだが、世話焼きでケチな貴方らしくない、随分とお優しいことだ」

「こっちはこっちで勘定してんのさ。人の計上に口出すんじゃないよ、クオン」


 キザな吟遊詩人はクオンという名らしい。どこか不思議な目をする男性だ、とヴェスティアは胸中で呟く。

 一方、サッツはグラスを傾けながら、斜向かいのメルルへと指を振った。


「それはそうと、新人なら景気付けにこっちも一杯奢るぜ。ほらメルル、出してやれよ」

「あ~らごちそうさま~!」

「おめぇには出してねぇよ」


 などと言い合いながら、メルルから酒の入ったグラスを貰った。瞬きしていれば、客から奢られることもあるのだと、メルルから聞かされる。


「まあ嬢ちゃんは美人だからな、俺ぁ美人には弱いんだよ。隣のゴリラはともかく」

「ドケチのアンタが金出すのなんて珍しいものねぇ。よっぽど気に入られたのねぇ、子猫ちゃん」

「は、はぁ。ありがとう、ございます……ごちそうになります」


 それは喜べばいいのか悪いのか、わからずにヴェスティアはただ困ったように眉を下げつつ、酒を口にした。氷で冷えたそれはスッキリとした味わいで、体が仄かに暖かくなるのを感じて、思わず息を吐いて微笑みを浮かべる。

 それに満足そうに頷いたサッツは、それから思い出すように隣席へ話題を振った。


「さっきの話だが、裏っ側でアトラーゼ国がまたもや魔女を探してるようだぜ。ほら、ずっと昔にもあったが、アレだよ」

「ふむ、十年前の化け猫を使役する魔女……よりも前の話だったかね?」

「ああ~、あったわねぇ。魔女の特徴を持つ者を連れてきたら懸賞金を渡すとかいう、アレ。アトラーゼに再編成される前の国での話だったわよね」


 メルルの同意に、クオンがピンと来たように顎を撫でる。


「ああ、思い出した。四大魔女の特徴を備える人間への懸賞金だったか。流石に四大国へそのような話は入ってはこないが、裏側とはいえ気分の良い話ではないな」

「大方、ほとぼりが冷めたから実験に手をつけたいって事なんだろうよ。二十一年前くらいだったか? 他国へ手を出したのが脱走してきた奴隷達の口から出たことで魔女様たちにバレて、ボッコボコにされたのは。自国だけでやってりゃ叩かれねぇだろうに、恐れ知らずの馬鹿連中だよ。また滅ぶんじゃねーのか?」

「四大国の魔女の子孫には、魔女の特徴が現れる、だったね。特に瞳は魂を映し出す窓とも呼ばれている。『輝ける紅槌にして灼炎鴉の魔女』のような朱瞳、『夜なる白指にして宝星蝙蝠の魔女』は綺羅星の瞳、『明けの青杖にして夢幻熊の魔女』は透き通るような泡の入った青瞳、『黄昏の黒管にして煙竜の魔女』は黄金色。まあ、色がそうだといっても魔法が扱えるとは限らないのだがね」


 黄金色の瞳を持つヴェスティアは、素知らぬ顔で顔を伏せた。どきどきと心臓が高鳴るが、目の前の酔っぱらいは気づいていない様子である。


「しかしまぁ、実験だのなんだと胡乱な噂は入ってくるが、具体的に何してるかはさっぱりだ。一体全体、何をやらかしてるんだろうなぁ」

「……あんた達にゃ、知らなくていいことだよ」


 それを遮るように言うのは、魔女のノエスである。

 サッツの目線に、しかしノエスは答えることもなく、煙管を振った。


「碌でなしの発想はいつだって碌でもないのさ。あいつらは自分達が世界の外でも通用すると思い上がっている。今のままじゃ一方的に蹂躙されるだけだってのに、無駄な努力さね」

「おお、魔女様が言うと洒落にならんな。異世界ってのはそこまで凄いのか?」

「同じような世界もあれば、魔法や科学が発展した世界もある。奴らが開こうとしている門は、はたしてどこの世界に繋がるのやら」

「魔女様が止めないってことは、今のままじゃ不可能ってことか。で、カガクってなんだ?」


 魔女を攫って実験台にするという話は先ほど聞いたが、そこの事だろうか。そこで行われる非人道な行いに、少しだけ胸が痛み、自身が狙われるかもしれない事実に恐れが湧く。

 どうか彼らに見つかりませんように、と、人知れずヴェスティアは祈るのである。


 と、そこでサッツのグラスが空になったので、ヴェスティアはお代わりを訊ねた。


「おお、気が効くじゃねえの嬢ちゃん。同じのを頼むわ。ところでよぉ、嬢ちゃんは貴族みてぇだが、この国の王太子を知ってるか?」

「知って、ます」


 知るも何も、現状では婚約者だ。明日の夜になれば違うが。

 少し震えてグラスを置くヴェスティアを気にも留めず、サッツの酒の入った口が回り出した。

 

「いやなに、最近じゃ王太子殿下がどっかの女にベタ惚れだって噂だろ? そのせいで根暗令嬢の学園での苛めが加速してるって話じゃねえか」

「ああ、ワタシも聞いた覚えがあるね。かのご令嬢は美しい容貌をしているから、とてもよく目立つ」


 自分のことだ、と、ヴェスティアは硬直する。

 他人の口から自分の話がされる時、決まってそれは悪意を持ったものだった。

 だから、思わず身構えたのだが。


「彼女への当たりの強さに、貴族の中では眉を顰める者も多いと聞く。なんとも、お労しい。王太子は遂に狂ってしまわれたようだ」

「教育の問題だろ、ありゃ。王太子教育を主導してたのは、あのアンセル侯爵だろ? 王妃の実家の。十年前の戦争時、魔女様が国王を引き連れて化け猫退治に向かったのを良いことに、保護の名目で王妃と王太子を攫ったってもっぱらの噂だ」

「確か妹君だけは無事だったのだね。国王が帰ってきても素知らぬ顔で、魔女の手の者が紛れ込んでいる可能性がある為、可及的早やかに安全上の問題を解決するために強行した、とか言っていたらしいが」

「それで王太子の機嫌をとって、教育係として地位に収まりやがったって訳だ。前々から勉強嫌いで有名だったが、最近じゃそれすらもすっぽかしてるようだしなぁ。王妃教育を受けてる根暗令嬢じゃなきゃ支えきれそうにないってのに、ポッと出の庶民の女に誑かされるとか、この国も終わりだぜ」

「え」


 意外と悪くない返答が返ってきて、思わずヴェスティアは間の抜けた声を上げた。

 何事かと目を向けてくる二人へ、ヴェスティアは慌てた様子で尋ねる。


「あの、根暗令嬢とは、ヴェスティア・ナーゼスの事ですよね? 彼女は……出来が悪いと評判では?」

「あぁ、表向きは、そうなってるらしいな」

「表向き?」

「ははは、お嬢さん。そこのサッツは情報屋でね、この酒場でさまざまな情報を得て生計を立てているんだよ。だから彼は、王都の事情通ってやつなのだな」

「ええ?」


 瞬くヴェスティアへ、メルルは笑いながら言う。


「子猫ちゃん、この酒場はね、魔女様が経営するだけあって普通の貴族は入れないのよ。だから不敬罪なんてここじゃ意味はないし、王宮を出入りする連中から、この手の話が漏れてくるのよ」


 王宮へは、何も貴族しか入れないわけではない。裏口からさまざまな物資や雑貨を運び入れる商人がいるし、下級使用人の中にもツテを通して働いている平民がいる。それくらい、王宮は広いのだ。

 そんな者たちが見聞きした光景を、サッツはここで集めて外で売っているようだ。不敬罪が適用されないこの店は、貴族には知られていないし、入れない。故に、ここでは誰もが無礼講に物を言う。

 だからか、サッツは心底から馬鹿にするように言い放つ。


「そんな平民から見てみれば、率先して苛めてる王太子の話は胸糞だって言われてんのさ。所詮、お貴族様もただの人間、いや、普通の人間より性悪だなってな。顔が良くても評判はダダ下がり、平民からの受けは最悪だ。それを許してる王様も大概、どうしようねぇ奴だよ」

「ワタシの顧客から聞くところによれば、ナーゼス家も酷い場所のようだからな。伯爵が使用人の前で娘を蹴り飛ばした、などという不埒な話もある。まったく、我が子をなんだと思っているんだか」

「娘を傷物にして何考えてんだかねぇ。治りゃ良いってもんじゃねぇだろうに、オヤジが暴力男とか救いようがねぇ。スラムのヤク中かよ」

「正常な判断が出来ていないのだろう、どちらもね」


 実に言いたい放題である。

 酒のつまみに屈託なく言い放題なそれに、ヴェスティアはなんだか呆れたような、視界が開けたような気がした。


 ずっと、世界は自分を嫌っていると思っていた。世界の全ては悪意に満ちていて、こちらを嘲笑しているのだと。

 だが、違ったのだ。自分が知らないだけで、世界には色々なことを知って、色々なことを言い合う人間がいる。自分が見てきた人間など、その中の一部でしかないのだ。

 狭い世界で生きて、自分の世界は偏見に塗れていたという事実を目の当たりにして、ヴェスティアは、


「……ふふっ」


 初めて、朗らかに笑った。


 自分はなんと小さい存在だろう、世界の広さを知らないで、自暴自棄にも皆を恨んで死んでしまえと願っていた。

 でもそれは間違いで、きっと自分が見てこなかっただけで、手を伸ばしてくれた人は居たのかもしれない。いや、きっと居たのだ。だって、少なくとも王妃様は、ずっと自分を庇っていてくれたのだから。

 メルルやここの人たちのような、自分が想像もしていなかった大勢の人々が、この世界にはたくさんいる。ならば、小さな自分の世界で誰かを呪うよりも、見識を広めて自己の世界を広げる行動こそが、これから成すべき事なのかもしれない。

 それが、魔女として生きていく、第一歩になるのだろう。


 自嘲も込められた、吹っ切れたような軽やかな笑みを浮かべるそれに、男たちが見惚れたように唖然となっていた。


「お、おおう、俺の前に女神様でもいんのか? なんか目が潰れそうなんだが」

「え、あ、すみません?」

「ああ、謝罪せずともよろしいですよ、新人のお嬢さん。そんな薄汚い裏路地の男など捨て置いて、どうです? これから一曲、ワタシとダンスでも」

「え、ええと……」

「おいこら、誰が路地裏在住だ。ちゃんと家はあるぞ、帰ってねぇけど」

「ダンスは別料金だから、忘れるんじゃないよ」


 結局、押しの強さに断りきれずステージの上でクオンとダンスを踊ったり、それを他の客が手拍子で囃し立てたり。

 楽器を弾ける誰かが弦楽器を手に取り、鳴り始めた陽気なそれに、いつしかヴェスティアだけでなく、テーブル席の自由な人たちがそこかしこで踊り始めたり。


「ははは、ダンスは手慣れているね!」

「は、はい、なんとか……!」

「なあ、お嬢さん。見てごらん。この光景を」


 帽子を脱いだクオンと手を繋いでステップを踏みながら、陽気な光景を見回してみる。

 皆が皆、酒を片手に笑い合い、手を取り合って踊りに耽る。痛みも憎悪も存在しない、否、今だけは痛みも憎悪も、皆が忘れて楽しんでいる。貴族のパーティでは決して見る事の出来ない、自由で底抜けに明るい光景だ。

 それは、今まで見たこともないほどに美しい光景だと、ヴェスティアは思った。

 それを指し示すようにクルリと回りながら、クオンは謡うように言った。


「貴族も平民も魔女も異人も、酔いも宵も皆で忘れて手を繋ぎ、空が白むまで踊り明かそう。さすればきっと、世界は鮮やかな輝きで満ちるのだから!」

「……クオンさんの世界も、輝きで満ちているのですか?」

「ああ、もちろん。魔女の卵のお嬢さん。ワタシは魔女ではないが、君たちの痛苦と軌跡を世界へ語り残す使命がある。君の辿る道筋が、溢れんばかりの光で満ちるよう祈っているよ」


 そう言って、クオンは気障ったらしくウィンクする。

 よく見てみれば、彼の耳は尖っていた。

 茶目っ気を感じるそれに、ヴェスティアは思わず微笑んで、軽やかにステップを踏んだ。





 ……明けて、翌日。


 酒場には撃沈した酔っ払いの群れと、酒瓶の山だけが残った。踊り明かした結果は、多大な二日酔いと、


「メルル、全員外に放り出しときな。あと、あんた達の今日の飲み代は後日必ず精算させるから、覚悟しとくんだね!」


 多額の飲み代という借金だけが残されたのである。切ない現実であった。

 そんな連中など素知らぬ顔で、テーブルに突っ伏して夢の世界なヴェスティアと、その傍でハープを鳴らしているクオン。

 ノエスはクオンの傍へと近づいて、煙管を吹かして言った。


「悪いね、クオン。呼び出した挙句に面倒見てもらったようで」

「なぁに、新しき魔女の生誕に我らエルフは喜ぶことこそあれど、厭うことなどありはしないのだよ。なんたって、我らの母だからねぇ」


 長い尖り耳を上機嫌にピコピコさせながら、クオンは二日酔いに苦しむサッツを見下ろして言う。


「ま、彼は気づいていないようだったけど」

「気づいたら瞬く間に万里へ知れ渡るから、ちょうどいいさね。……で、この子の新しい杖は、どうにかなりそうかい?」

「ふ〜む、そうだねぇ……」


 クオンは眠るヴェスティアを見つめながら、楽器の弦を爪弾いている。


「実に暗い、ひどい闇だよ。誰がここまで酷い有様にしたのか、理解に苦しむね」

「ストレスと負の感情のせいで、魔力の質が固定しちまってる。このままじゃ害意を成す魔法でしか真価を発揮できない……闇の魔女なんて、あたしやあいつ以上に業が深い存在だよ」

「魔女の明度は、存在の明度だからねぇ。世界を恨むほどに暗くなるそれでは、他の魔女に殺されかねない……本当に弟子にするのかい?」

「この子が選んだんだ。なら、あたしは全力で応える。そう決めてるのさ」

「ああ、やはり貴方は、何百年も変わらず世話焼きさんだ。見ていて飽きないものだねぇ」


 クオンは微笑みながら、目を細めて指を振る。


「杖は任せてくれたまえ、明日には届けよう。黒き魔女に相応しい、黒い杖を」

「あたしの時みたいに、煙管にするんじゃないよ。杖の為に、好きでもないのに喫煙しなきゃならなくなる」

「薬草の刻みタバコは体に宜しいのだから良いのでは?」

「匂いが青臭い、慣れるのが大変だったんだよ」


 そう言いながら、ノエスは煙管を吸いつつ行ってしまう。

 そんな老婆を眺めつつ、クオンはヴェスティアを再び見つめて、囁いた。


「はてさて、君はいったいどんな魔女になるのだろうか。偉業を成し遂げるか、それとも……」


 最後まで言わず、クオンは天を仰いで楽器を鳴らす。


「ああ、願わくば、貴方の未来に美しき輝きが宿らんことを!」



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