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第9話


・・・俺は、どうなった?死んだ、のか?


 意識が、戻った。熱くない。呼吸は、できる。ほっぺをつねる。痛い。お約束だ。俺は生きているらしい。

 体も動くようだ。右手も、問題ない。左手は、少し違和感があるが、大丈夫だ。

 全身に感覚があることを確認した。ところどころ、動かすのに痺れるような違和感があるが、動くには問題なさそうだ。

 あれは、夢?いや、あんなリアルな夢は無い。


 状況を確認しよう。今、俺は布団、だろうか、その上に仰向けで寝ている。目の前には、天井がある。ということは、室内だ。空や木々や、俺を燃やした火炎弾は無い。

 あの後、誰かが俺を助けてくれたのだろうか。あんな状態の俺を。どんな酔狂な人間だろう。起き上がってみる。

 目に映ったのは、木でできた棚にテーブル、椅子、扉。ごく普通の家のように見える。ここの家主はどこかに出かけたのか、見当たらない。

 さて、どうしようか。助けてくれたのだから、ここの家主は悪い人物ではないのだろう。そう思いたい。


 ギィィ


 思案に暮れていると、年季が入った音を鳴らして扉が開いた。そこには、壮年の、鋭い眼光をもつ、大男がいた。


「目が覚めたようだな。」


 厳つい男はそう言って、俺に近づいてきた。この人が、俺を助けてくれたのか。


「あの、あなたが俺を助けてくれたんですか。」


「そうだ。お前は、焼け野原となったあの場所で、瀕死の重傷を負って倒れていた。辛うじてだが息があったから、助けてみることにした。」


 男が言うには、男が住むこの家から、赤く染まる森が見え、すさまじい爆発音が聞こえたそうだ。現場に駆け付けて火を消した後に、全身大火傷を負いながらも、マントに包まり、息がある俺を見つけたという。


「何があったかは知らんが、正直もう駄目だと思った、放置しておこうと思った。だが、お前はうわごとのように、掠れた声でカエルだの、アイだのと言っていた。意味はわからんが、死にたくない執念があることはわかった。正直、助かるかはわからなかったが、成功したようだな。」


 男は、俺にそう説明してくれた。助かったとわかれば、少しは余裕がでてくるものだ。ふぅ、一安心。余裕がでてくると、この人の外見の怖さがよく見える。メッチャ怖ぇ。ここは超下手にでなければ!


「助けてくれて、本当にありがとうございます。死にたくなかったのですが、正直もうダメだと思いました。あの、俺はどれくらいの間眠っていたんですか?それと、どうやって助けてくれたんですか?」


「お前は、1週間程眠っていた。俺は治癒魔術は得意でなくてな。悪いが、お前の体を魔道具を使って治療した。お前の体のおよそ半分は、魔道具でできている。恨むなよ。」


 ・・・衝撃だ。どうやら俺はサイボーグらしい。え、はは、ご冗談を。


「下半身は燃え残った筋肉や皮膚を初級魔術で回復し、その周りを機械でコーティングした。体は、内部の臓器を魔工具にとりかえた。左腕は、完全に義手だ。元の腕は、もうズタボロになっていた。髪の毛は人口毛髪、そして、左目は義眼だ。」


 え、嘘だろ!?冗談じゃないだと!?嘘だと言ってくれよ!!俺が、半分以上機械の体になって、つまり、半分以上人間でなくなった、ということだ。ちょ、マジ?


「通常、治療には治癒魔術を使う。だが、お前の体は上級の治癒魔術でも対応できるかわからない状態になっていた。それに、先程も言ったが、俺は治癒魔術が得意じゃない。治癒術師を呼ぶ時間もなかった。だから、俺の得意とする魔道具を用いて、お前の命を繋ぎとめた。世間には出回っていない方法だから、口外するなよ。俺だけができる芸当だ。だが、言ってはなんだが、これで済んだのは、お前が装備していたマントだろうな。あれに強力な耐火効果があったんだろうよ。それがなかったら、お前は間違いなく死んでいたな。」


 そう言って、男は俺が装備していたマントを投げてよこした。このマントは、ネイアさんが俺に渡してくれたものだ。俺にさりげなく渡してくれたものだが、こんなに高い効果があるものだとは思わなかった。

 てか、俺ってマジで機械なの???嘘ですやん。


「そんなもの、どこで手に入れたんだ?あれだけの火力を受けてなお、燃えることもなく残っている。それに、お前が倒れていた側にあった、大鎌も無傷だ。装備だけで判断はできないが、お前、只者じゃないだろう。」


 あんたこそ、只者じゃないだろう!


 いや、俺は只者ですよ。ついこの前までただのフツーの高校生してましたよ。なにか?只者じゃないのは、俺を助けてくれたネイアさんだよ。あの人は強すぎる!凄すぎる!只者ではない。であれば、俺が返す言葉は只一つ。


「いえ、只者ですよ。」


「・・・そうか。そう言うなら、いい。で、お前はこれからどうするつもりだ?」


 只者でとおっちゃったよ。まあいいや、そのとおりだし。で、どうするつもりって、そりゃ久中さんと元の世界に帰る!それっきゃない!


「俺、大切な人と一緒に故郷に帰らなきゃならないんですよ。だから、その大切な人と、故郷へ帰る方法を探しています。」


「ほう、大切な人ねぇ。その年齢で大切な人とは、なかなかやるじゃねぇか。故郷ってのはどこだ?」


「日本です!」


 言ってから気づいた。やっべ、この世界に日本はない。当然だ、異世界なんだから。だから、


「ニホン?どこだ、それは?きいたことねぇな。」


 当然、そうなるわけだ。あー、どうしよ。正直に言うか!うん、正直って大切だね!


「この世界とは違う、別の世界から連れてこられました。誘拐、ですね。」


「・・・やっぱ脳みそまではダメだったか。」


「事実です!ダメになってません。俺が証拠です!」


「証拠になるかよ。やっぱ頭イカレテやがるな。確かに、黒目黒髪は珍しいが、全くいないわけじゃない。まあ、なんだっていいがね。で、お前が言う別の世界?に帰るには、お前はこれからどこに行って何をする?あてはあるのか?ん?」


 ・・・俺、どうしよう?マントと武器はある。だけど、帰る方法も知らない。オマケに、俺、体の半分以上が機械?だし。あれ?詰んだ?


「ま、あてもなく、何もないって言うなら、ちょいと俺の実験に付き合えや。何、悪いようにはしない。お前のその魔工の体がどれだけ使い物になるか、試してやる。」


「え、嫌です。怖いです。」


「お前に拒否権はないぜ。何、ちょいと修行して、お前を強くしてやるっていうんだ。強い方が生き残る確率があがる。お前が言う、元の世界とやらに帰る確率もあがるんじゃないか?よし、決定だな。俺はヴァルディス。お前の名は?」


 この男、いや、ヴァルディスさんとやらは、逃がしてくれないらしい。


「大上真司。日本の高校生だ。」


 こうして、この厳ついヤバイ男、改めヴァルディスさんによる俺の辛く厳しい修行が始まった。うう、早く帰りたい。


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