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第8話


 俺と狼は睨み合ったまま、しばらく膠着状態が続いたが、その均衡を破ったのは狼だった。もの凄い速さで俺に突進してきた。俺は回避できず、腹に突進を受けて後ろにあった木に激突した。

 もの凄ぇ痛え。大きさは大型犬より少し小さい位か、と思うが、めっちゃ重い。痛みに悶えていると、次は右腕に痛みがはしり、血がでてきた。狼が何をしたのかわからないが、鎌鼬だろうか。スパッと切れている。魔術を使える狼か!?

 これでは手に力が入らない。大鎌を使えない。マジでやばいな。やばすぎる。油断した。最近調子がいいからと舐めていた。


 逃げないと。全力で逃げないと。痛すぎる。無様だが、命あってこそだ。俺は逃げるために立ち上がろうとした時、


 「ヴォーーー」


 奴が吠えた。そして、俺の前から逃げるように立ち去って行った。助かったのか?

 大鎌を杖にして立ち上がると、森は不気味な程静寂であった。


 今日はここを出よう。ボロボロの体に鞭打って、一刻も早く街に帰ろうと歩きだした。痛みが鋭く全身を刺す。そう言えば、俺は治癒魔術は使えるのだろうか。さっきの奴との闘いで負った傷が痛すぎる。


「ヒール」


 ・・・だめだ。何も起きない。まだ、傷が治るイメージを構築できていないようだ。なら、仕方ない。このまま歩こう。今回の試験の期限まであと2日はあるから、まだ大丈夫だ。悔しいが出直しだ。




 ふと、俺の目の前に人影が見えた。どう思ったか、助けてもらえると信じて、その人影に駆け寄ってしまった。


「すみません。助けてもらえませんか。魔物と闘って傷だらけで。治療薬があれば分けてもらえたら助かります。」


 甘いと思ったが、助けを求めた。声が届いたのか、その人影はゆっくりと俺に向けて向かってきた。助かった、と脱力した。気が抜けたのだ。その人影は、安心した、いや、油断した俺にむけて、


「ファイア」


 感情のない声で呪文を唱え、火の玉を撃ってきた。避けようとが、避けきれずに左腕に火の玉を受けてしまった。


「っ・・・」


 これまで生きてきた中で味わったことのない感覚に、声もでない。俺の左腕は、大火傷を負い、焼けただれている。こいつは、明らかに俺を殺そうとしている。敵だ!


 武器となる大鎌を、なんとか右手に持ち、俺は必死に逃げた。火の玉を撃った奴に背を向け、なりふり構わず走った。


 声にならない痛みに耐え、必死に走っていると、他にも人の気配を感じる。おそらく、こいつらも敵だろう。理由はわからないが、俺を殺そうとしている。

 ああ、囲まれたようだ。周りに複数の気配があり、俺の様子をうかがっているようだ。こいつらに勝てるだけの力は、俺にはない。いや、まだあきらめるのは早い。何か手立てはないか。


 周りに気配を感じつつ、息を切らしながら走っていると、目の前に崖が現れた。引き返すか。いや、駄目だ。殺される。逃げ道はない。


 痛む左腕を抑え、一瞬考えを巡らせていると、背後に衝撃を受けた。その衝撃で、俺は崖を転げ落ちた。


「痛えええっ!」


 もう、俺の体はズタボロだ。全身が痛い。左腕は、もう駄目か!?感覚がなくなってきた。どれ位の高さがあったか、よくわからない。崖を見上げると、黒い人影が複数、俺を覗きこんでいた。その中の1人が、俺に巨大な火炎弾を撃つのを見た。


 最後の力を振り絞って、マントを頭から被ってみたが、俺を焼き殺さそうとする炎は容赦なかった。


「熱い!熱いぃぃぃぃぃ!」


 生きたまま、全身が燃える。熱い!痛い!

 俺はこのまま死ぬのか!嫌だ!まだ死にたくない!まだ死なねえ!死ぬわけにはいかねえ!


「ウアアァーーーーー!」


 叫び声をあげ、俺の意識を途絶えた。


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