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第7話


「よし、スライム10体目討伐!依頼完了!」


 ネイアさんと別れてから1週間が過ぎた。傭兵生活、最初はどうなるかと思ったが、慣れてみればなんてことはない。依頼も、スライムの討伐や薬草の採取など、簡単なものだが着実にこなし、所持金も順調に増えていった。さて、討伐証明となるスライムの核を取り出して、と。

 大鎌の扱いもなれてきた。あれ、俺ってなかなか筋がいい?


「お疲れ様です。依頼完了を確認しました。こちらが報酬の銀貨1枚となります。」


 スライム10体を討伐で、銀貨1枚。ちなみに、宿代も銀貨1枚である。宿代が安いのか、報酬がいいのかわからないが、今のところ金で困ることはない。


 あと、久中さんの情報だが、街中やギルドで訊いてみるも全然ダメだった。黒髪と黒目というのはこの世界では珍しい特徴だが、見かけた人はいないようだ。ネイアさんの友人のダリオさんに訊いてみても、


「黒髪、黒目の女?見かけないな。黒い髪の人間は珍しいしな。最近ではマサツカ、お前位しか見ていないぞ。」


 ということだった。残念。


 この前ギルドで酒を飲んでいる傭兵達に酒を1杯ご馳走して訊いてみたが、コレといった情報は集まらなかった。代わりといってはなんだが、俺は酒が全くダメだということがわかった。酒の匂いが鼻に近づくだけでダウンだ。世の大人たちはこれを美味いといいながら飲んでいるが、俺は全く受け付けない。うん、いい教訓になった。俺は酒には溺れないぜ。


 さて、気を取り直してこれから先だ。ひとまずこの街で傭兵のランクをEランクへあげておこう。そして次の街へいくための金をさらに貯めよう。次の目的地は・・・そうだ、サナカだ。ネイアさんが言っていた街だ。というか、そこ以外よく知らない。

 そうと決まれば、早速行動だな。ランク昇格試験を受けるには一定回数の依頼達成が必要だが、Eランクへの昇格試験を受けるための依頼数は既に達成済だ。俺はギルドの受付で昇格試験を受けたいことを伝えた。


「こんにちは、マサツカさん。もうEランク昇格試験ですか。」

「ええ、そうですけど、そんなに早いですか?」


「そこまで早いわけではありませんが、大抵の場合は2週間以上はかかるものです。始めの内は戦うことにも不慣れですし、薬草の採取にしても、そこらじゅうに生えているわけではありませんから、薬草の特徴を把握するのにも時間がかかります。それに、失敗する依頼もありますから、案外時間がかかるのですよ。」


 そういうものなのか。ということは、俺って案外傭兵が向いているのかもな。いや、魔術はほとんど駄目なんだがな。未だにファイアボールひとつ打てないし。

 まあ、魔術が使えなくても、なんとかなるだろう。多分。俺ってば腕力バカ?


「そうなんですね。もう必要依頼数は達成しましたし、特に苦労したことはありませんでしたので。昇格試験、お願いします。」


「わかりました。では、こちらが昇格試験の内容となります。」


 と、渡された紙に書いてあったのは、『3日以内にフーレンの採取』だった。


「あの、これは・・・?」


「薬草の一種ですね。どこで採取できるか等を調べることも含めて試験となります。今から3日経つ前に、ギルドの受付、ここですね。ここにフーレンを持ってきてください。期日までに来なかった場合は、残念ながら自動的に失敗となります。その場合、再度試験を受けることができるのは、2日後となりますので、ご注意ください。」


 なるほど。ただ戦ったり採取するだけでなく、調べる能力も試されるわけだな。

 よし、早いとこ終わらせて、Eランク昇格だ。



 街で訊いた。というかダリオさんに訊いた。ダリオさんによると、フーレンは傷の治療や体力の回復に使われるポーションの材料の一つだそうだ。そういえば、薬屋に少し値段の高いポーションがあった。フーレンが使われたものは値段が上がるようで、そこそこ貴重な薬草なのだろう。

 で、採取場所なんだが、この街の近くでは北にある森で採れるようだ。その森までは歩いて2時間位。この世界には車やバイク、自転車なんてものはもちろんなく、歩くか馬車が一般的な移動手段となる。馬車はここから森までは銀貨3枚位が相場なようで、節約のためにも歩いていくことにした。


 着いた。意外と遠かった。いや、メッチャ疲れた。装備重いし。森を前にして疲れた。道中は特に魔物の襲撃もなかったが、この大鎌を持って2時間歩くのは疲れた。いや、途中ペースが落ちたから、2時間半はかかったかも。これからフーレンを探すのに、これじゃあ動けない。探す前から休憩とは情けない。というか腹も減った。先に飯だ。朝起きてすぐにギルドへ行って、依頼を受けてダリオさんに教えてもらって。となると、ちょうど昼の1時位か。少々遅めの昼飯にしよう。

 昼飯は、バジルパンだ。これはダリオさんから譲ってもらったものだ。今日ダリオさんにフーレンのことを訊きに行ったら、


「あの森は遠いぞ。ほれ、途中で食いな。遠慮はいらんぞ。ガハハハ。」


 と、いうわけでありがたくいただいたものだ。一口食べると、柔らかく、後からバジルの香りが広がった。うん、これは美味い。ダリオさんの料理はいつも美味いな。最近は宿の料理とダリオさんの料理しか食っていない。常連というやつだな。


 さて、腹も膨れたことだし、ちょっと昼寝でも・・・

 いや、違う、そうじゃない、そうじゃない。森に入ってフーレンを採らないと。ここ数日で、この世界にすっかり馴染んだ、のか?ずいぶんと図太くなったものだ。いまじゃ地べたに寝転がるのも、寝るのも平気だ。ネットや携帯電話が無くても平気だし、自分の力で生きていけるというのは、思った以上に充実したものだった。

 だけど、残念だがこの世界で永住するつもりはない。久中さんと一緒に元の世界に帰って、デートするという重大な使命が残されている。これを成し遂げなければ死んでも死にきれない。

 その重大な使命のために、俺は今から森へ入り、フーレンを採らなければならないのだ。



 で、森の中だ。森の外は晴れていたから当然明るかったが、森の中は光が差し込まず、薄暗い。見えないこともないのだが、やはり明かりは欲しいところだ。盲点だったな。光るものなんてない。懐中電灯?この世界にそんなものはない。発明するか?いや、そんな場合じゃない。作り方も知らない。俺、化学苦手なんだよな。だから授業は碌にきいてなかった。チキショウ、きいときゃよかったぜ。

 あー、こんなときに魔術が使えたら、どんなに便利だったか。簡単な光や火の魔術が使えるだけでもよかったのに。というか、俺は本当に使えないのか?ネイアさんは、魔術はイメージが大切だと言っていた。今の状況でならどうだ?


「ライト!」


 何も起きない。ダメか?こう、フワフワ浮かぶ明かりでも十分なんだよな。どうにかできないかな?少しでいいんだよ。こう、光の玉が俺の目の前で浮かんでいる、それだけでいい。

 そう考えながら、両手を前にかざしていると・・・


 目の前に、光の玉があった。丁度、かざした両手に包み込まれるように、それは存在していた。


『自分のイメージをいかに具現化し、発現するかが重要だ』


vネイアさんの言葉どおりだった!ただ、俺が未熟だっただけだ。必要に迫られなければ使えないなんて、なんと覚えが悪いことか。

v覚えが悪いのは仕方ない。生まれつきだ。覚えが悪いなら、人の2倍、3倍鍛錬すればいい、それだけだ。とにかく、これでフーレン探しができる。


 探し始めて、1時間といったところか。見つからない。ダリオさんにきいたところ、木の根元に生息する、丸い葉がたくさんついた薬草ということだ。ライトの呪文を使いながら根元を照らすが、それらしきものは見つからない。見つけたものといえば、いつも倒しているスライムだけだ。スライムは街の外の平原だけでなく、このような森にもいる。森にも、というより森に巣でもあるのだろう。いつもよりも数が多い。プヨプヨした透明な外見は一見可愛らしくもあるが、作物を消化し、強い個体は酸の弾丸を吐き出すという、中々に厄介な魔物だったりする。

 

v俺は次々に出現するスライム達を切り倒しながら、フーレンを探す。森に入ってからどれくらいが過ぎただろうか。木々の間からはオレンジの光が差し込むようになってきた。もう夕方だ。帰り道も長いし、そろそろ帰らないと。フーレン探しを切り上げて、森を出ようとした時だった。


 ヒュッ


 何かが、俺の左側を高速ですり抜けた。そして、左頬が冷たい、いや熱い。触ってみると、どろっとしたものが手に触れた。

 ライトの魔術で照らしてみると、赤い液体だった。いや、これは俺の血だ!ということは、斬られた!?だが、そんな感触はなかった。もしや、さっきすり抜けた何かか?


 おそるおそる左を見ると、そこには2つの赤い点が2つ、こちらを覗いていた。これは、ただの点ではないな。暗くてよく見えないが、おそらく、猛獣の類だな。

 

 「ウォーーーッ」


 吠えている!これは狼か!こいつ、威嚇か?いや、こいつは狩りの合図だな。仲間を呼んでいるのか?

 なら、ここでおとなしく狩られるわけにはいかない。俺も大鎌を構え、奴の両目を睨みつけた。


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