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第56話


 やっと!やっっっとサナカに着く!

 そういえば、俺があの迷宮を踏破してから、まずはフィネアに戻ろうとしたな。それから結局フィネアに戻らずメリッサの護衛でマケニアに行って、その後は魔導国ベルゴア、リンカさん達と出会ったラルダ、そして今、ジーン国のサナカに。まずはフィネアに戻って荷物や制服を確かめようとしただけだが、ひょんなことから長旅になったな。だが、本来の目的は久中さんを探し出し、一緒に元の世界へ帰還すること。そのための手がかりを探してここまで来た。フィネアに残してきた荷物や制服は、もしかしたら諦めることになるかもしれないが、仕方あるまい。優先すべきは久中さんだ。

 以上、おさらい終わり。


「やっと!化け物から解放されます!」


「長かった・・・本当に長かった。」


「俺達が今までやってきたことは、そうか、ただの遊びだったんだな。これでやっとこの地獄から・・・。」


「もう、二度と嫌。」


 もうすぐサナカに着くとわかるや、ルウェイル達四人が口々に何かを口にしている。おい、化け物と言ったのはどこのエミリーだ?ん?

まあ、もう依頼も終わりだしいいか。さて、今回の元凶かつ言い出しっぺのエルガーはと言うと、


「めちゃくちゃ死にそうだったが、まあ、いい経験になっただろう。多分。」


 気のせいだろうか。顔面に強烈な土気色の疲労感を浮かべながらそんなことをのたまう。おいおい、多分とはなんだ多分とは?まったく、どいつもこいつも礼儀がなっていない。結果的に依頼通り強くなれたじゃないか。何が不満なんだ?感謝されても、非難される覚えはない。


「サナカに着いたら、依頼は完了。貰う物は貰うからな。」


「ああ、わかっている。誰かさんのせいで、ちょっと疲れただけだ。」


「そうか。ならいい。」


「マサツカさん、見てください!もうすぐ入口です!」


「ああ、見えている。走るか?」


「「「「「やめろ!」」」」」


「冗談だ、多分。」


 まったく、軟弱者どもめ。そういう所のチームワークはいいんだから、戦いの場で発揮しろ。

 とは思ったが、ナビスの迷宮の時と今とでは、見違えるほどに良くなったとは思う。別に偉そうなことを言える立場ではないが、多少はマシになったようだ。ごっこ遊びを楽しんでいた世間知らず達が、少しは一般人に近づいた、というところか。もっとも、エルガーだけは流石というか、一般人から戦士見習いにまではレベルアップしたと言えるだろう。その辺は、まだ訓練生の域を出ないルウェイル達とは違うな。


「マサツカさん、素直によくやったって言ってあげましょうよ。」


「駄目だ。リンカさんは優しすぎる。調子に乗らせたらまた鍛錬を怠って堕落する。俺を憎んでも恨んでもいいから、強くなることへの意欲を持ち続けてもらう。」


 そう、ここで気が抜けたまま帝国へ帰ったら、おそらくまた腑抜けに戻る。喉元過ぎれば何とやら、だ。それじゃあ今回の鍛錬の意味がない。色々あったけど、今じゃいい思い出、なんて甘い物にはさせん。そんなことになると、実戦になったら即アウトだ。






 結局、走ることなく歩いてサナカへの入口に到着。サナカはホワイトレンガで造られた高い城壁に囲まれており、出入口を多くの人が往来し、衛兵がチェックしている。サナカに入ろうとして並んでいる種族も、獣人やドワーフ、ゴブリン、魔族、ダークエルフ等々、様々だ。とても賑わっていて活気がある。




「身分証も特に異常はないな。ようこそサナカへ。」


 衛兵の確認も無事に終わり、サナカへの一歩を踏みだした。


 城壁の中、サナカの街もかなり賑わっており、人や荷物の往来が激しい。白を基調とした街は、一言でいうと綺麗だ。どことなくフィネアを思い起こさせるように、木や水路もあり、過ごしやすそうな印象を受けた。そして何より、入る前から香るこれは、


「いい匂いですね!ステーキでしょうか?ハンバーグでしょうか?あ、ミソスープの香りもします!お肉の串焼きも!マサツカさん、行きましょう、今すぐに!!」


 リンカさんが発狂しているように、そこはかとなく鼻孔をくすぐるいい匂いがあちこちから。なるほど、食の都と言われるだけある。うん、素直にこれはいいなと思える。だが、まずやるべきことがある。


「忘れるな。まずはギルドに行ってエルガー達の依頼達成の手続きが必要だ。食うのはその後でもいい。それに、エルガー達を早く解放しないとな。」


「解放って訳じゃないが、まあ、正直今回は疲れ過ぎた。訓練課程でここまで過酷な訓練は、後にも先にもないだろう。だから、早くこいつらを休ませたい。」


「なら、なおさら早く手続きしよう。依頼完了の手続きは蔑ろにはできないからな。じゃないと、何か新しい鍛錬を思いつきそうだ。どうだ?」


「「「「「無理!」」」」」


「じゃあ、早くギルドに行こう。金貨五枚、よろしく。」




 俺達は人混みをかき分けて、ギルドを目指す。これだけ賑わっているということは、傭兵ギルドに行く人も多い筈。武器や防具を持っている人達について行けば、おのずと辿り着く。ギルドへの道中、エルガー達、特にエミリーの顔色が晴れやかなものになっていった。解せんな。


 そうこうしているうちに辿り着いた。なるほど、デカい。外見も立派なもので、なんというか、いかつい。で、中は当然広く、依頼や完了の受付、飲食のための多数の椅子やテーブル、本棚、その他傭兵業に役立ちそうなものが多数ある。


 俺とエルガーが依頼完了手続きのカウンターへ行き、無事に手続きを終え、金貨五枚を受け取った。それが終わった時のエルガー達五人といえば、泣く、叫ぶ、笑う、とにかくうるさい。正直いうと、かなりヤバイ、ドン引きな様相を呈していた。うん、もうお別れだからさ、まともになれよ。




「じゃあな。お前達には世話になった。ナビスの迷宮で助けてくれたことは忘れねぇ。もちろん、今回のえげつない鍛錬のことも、な。ありがとうよ。」


「かなり厳しくて、あなたに殺意を覚えたことが何度もありましたが、ええ、いい経験になりました。世界は広いですね。ありがとうございます。」


「もう二度とごめんだぜ。ただ、強くなれたのは事実だ。ありがとうよ!元気でやれよ!」


「辛いことだらけで何度も心が壊れましたが、ガートが言うように、今までより強くなれたと思います。迷宮で助けてくれたことも含め、改めてありがとうございました。」


「迷宮で助けてくれたこと、それは今も感謝してます。ありがとうございます。ただ、もう二度とアレは嫌です。悲劇です、惨劇です!ううう・・・あなた達の敵にはなりたくないです。・・・お元気で。」









 依頼を完了し、俺達とエルガー達はここでお別れ。この後、エルガー達はどこか宿を探して、休息するそうだ。このサナカには、食だけでなく、海岸沿いにリゾートがあったり、登山ができる山があったりと、遊びのバリエーションも豊富だとわかった。それに、温泉もあるらしい。エルガー達は温泉にも入って、つかの間の休息をとってからグレルバルカ帝国に戻るらしい。



 さて、俺達だが、


「エルガーさん達、行ってしまいましたね。」


「ああ。」


「また、会えるでしょうか?」


「さあな。」


「少し、寂しいかもしれません。」


「そうか?」


「マサツカさんの賑やかな罵声が聞こえなくなりましたね。」


「罵声、ね。なんだ、嫌になったか?」


「マサツカさんがとても優しいということが改めて実感できたので、それはないです。結局、エルガーさん達全員が五体満足で生きています。フフフ、ツンデレですね。」


「ほー。」


「さて、お腹、すきましたね。」


「なるほど。」


「食の都のご飯が食べたいです。」


 くだらない。実にくだらないやりとりだ。この残念神子は相変わらず食い意地がはってらっしゃる。まあ、生きていれば腹も減るだろう。


「なら、このギルドの隣、多分ここだろう。ここにしよう。」


「お、いいですね!いい匂いがして美味しそうです!ステーキやハンバーグ、スパゲッティもありますね。あと、コーンやネギのスープに、ミソもあります。それにこれは・・・お米の匂いです!サナカ名産のお米です!行きましょう!」


「ああ、わかったって。そう焦るな。」


「二名でーす!」


 焦るなと言うのに、もう店に入っていった。うーん、巫女服姿の女が、木材を基調とした洋装の店に意気揚々と突撃する姿は、なんと表現しようか。そう、シュールだ。


 仕方ない。長旅で疲れたのは、何もエルガー達だけじゃない。リンカさんも相当疲れている筈だ。情報集めをしつつ、美味い物を食べて、一休みするもの悪くない。そう思いつつ、俺もリンカさんの後に店に入った。


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