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第50話


 昨日の騒動から一夜明け、朝を迎えた。昨日はかなり疲れたのだろう、起きる時にリンカさんが眠い眠いと駄々をこねたので、強制的に目を覚まさせるというトラブルはあったが、出発には支障は無い。


「ひどいですよー。いきなり水を、しかも氷水をかけるなんて。心臓止まったらどうするんですかー?」


「かけたのは頭だけだし、そんな軟な心臓じゃないだろ。あと、ちゃんと乾かしたじゃないか。」


「目覚めが最悪です。ああ、心が弱って、また眠気が・・・あと10分・・・」


「いい加減にしろ。それに大して面白くない。」


「と、いうことは、少しは面白い?」


「全く駄目だな。」


「ぶーぶー。」


 今日も絶好調でなにより。さて、昨日話した通りなら、エルガー達がいる筈だが。



「待っていたぞ。マサツカ、リンカ。昨日は助かった、ありがとう。」


「ああ。約束通り来たな。」


「おはようございます。」



 宿を出たら、そこにはエルガーと、他に四人が待っていた。エルガー以外は、俺とそう変わらない位の背丈のサラサラ金髪の男、静かそうでシンプルな服装の女、大柄で筋骨隆々の男、ローブと杖を装備した女だった。そういえば、昨日助けを求めてきたのは確か、


「昨日は助けていただき、本当にありがとうございました!ルルといいます。」


 シンプルな服の女は、そう挨拶した。そうだ。このルルという女だった。


「お初にお目にかかります。ルウェイルいいます。エルガーさんから話は伺っています。この度は、命を助けていただき、ありがとうございました。」


 続いて、金髪の男。なんか、えらく爽やかだな。


「俺はガートという。命を助けてくれたと聴いている。ありがとよ!是非とも、教えを請いたいと思っている。」


 更に続いて、大剣を持った大柄な男が大きな声で言う。大剣もいいが、大斧とかハルバートも似合いそうだな。


「エミリーです。私達が生きているのはお二人のおかげです。ありがとうございました!」


 最後は、多分魔術師だろう、ローブと杖の女だ。


「昨日しっかり休んだら、全員このとおり回復した。どうだろう?昨日の話、考えてくれたか?」


 早速その話だな。見たところ、五人共敵意はなさそうだし、不貞腐れた様子もない。これなら旅に支障はなさそうだし、いいだろう。


「ああ、見たところ、全員旅に支障はなさそうだし、依頼を受けよう。聴いていると思うが、受けた以上はきっちり鍛えるから、覚悟しておいてほしい。エルガーもな。」


「おいおい、冗談じゃなく、本気かよ?」


「当然だ。他のメンバー達が地獄に行くんだ。それを悠々自適に見ているだけか?それはないだろう。むしろ、先輩として率先して参加しろ。あー、安心しろ。死なないから。」


「いや、怖いって。・・・たく、しょうがねえな。助けてもらったうえに依頼も受けてもらうんだ。腹くくるわ。」


「そうだ、それでいい。では、行こうか。」


 さて、色々あったが、無事にサナカへ向けて出発できそうだ。




 俺達はナビスを出る。七人、臨時とはいえ、えらく大所帯となったな。しかしまぁ、訓練とはいえご苦労なことで、この五人は徒歩でまわっているようだ。俺と違って飛行魔術もないから、行くだけでも充分修行ではないだろうか。


「言う通り、徒歩ですからかなり時間がかかります。決して観光旅行ではない、訓練だということを身に染みて実感しますね。当然夜営もします。お飾りではなく、本当の実力をつける為にここまでやるんだ、と教わりましたね。」


 とはルウェイン。なんでも、エルガーを除く四人は、グレルバルカ帝国の騎士・魔術士訓練課程?というものがあるそうだが、その過程の上位四人らしい。


「一応、将来は皇帝直属の魔術師や騎士になる為の最短ルートみたいですが、訓練とはいえこんな長くて過酷だとは思わなくて。特に迷宮は常に気を張っているので疲れが抜けないですね。」


 と、ルルが言う。迷宮内には通常店は無いから、全て自分達で持ち込む必要があるし、寝る時も警戒が必要だ。言う通り、迷宮にいる限り気が休まることはないだろう。


 さて、そんな過酷な訓練を受けている途中の、グレルバルカ帝国という大国?のエリート達は、どれ程強いのか。ナビスの迷宮内では不覚をとったようだが、不意打ちではない真正面の実力は測っておこうか。こちらも、一応訓練をつけるという名目で依頼を受けているわけだ、早いうちに見ておこう。











 これは・・・どういうことだ?本当に驚いた。もしかしたら、という可能性も想定していたが、まさか、まさかこれ程とは!

 そうか、わかった。よくわかった。グレルバルカ帝国、超大国の将来を担うエリート達の真実、それは・・・















 弱すぎる!!!






「マサツカさん、これは・・・」


「ああ、リンカさん。言いたいことはわかる、そんな気がする。」


「ですよね。いえ、私なんかが申し上げるのは大変恐縮なのですが・・・」


「そう思うなら、無理に言葉に出さなくてもいい。そこは頑張らなくていいから。」


 リンカさんも思わずため息。そう、グレルバルカ帝国のエリート達は、弱い、弱すぎる!えっと、確か上位4名、トップ4なんだよな。

 かろうじて、エルガーはまだ食らいついているか、という位の実力だ。いや、今回の依頼の根幹はあの4人、エルガーはおまけだ。これは、実際マズイんじゃないか。というのも、いくら訓練課程とはいえ、帝国のトップ4なわけだ。それがこんなに弱いのは、自国の弱点を晒すのに等しいのではないだろうか。この最弱の四人が、帝国のこれからを担います!なんて、恥以外の何物でもない気がするのだが。いや、それをこっちが気にする必要はないな。そもそも・・・


「マサツカさん、どうしましたか。マサツカさん。おーい。」


「ああ、すまん。考え事をしていた。」


 もちろん、あまりの弱さに、だ。


「あの、マサツカさん。多分ですけど、よく考えたらマサツカさんが強すぎなだけで、彼らは世間一般でいうとやっぱり強いんだと・・・思いますよ?」


「連携も見たくて、俺達二人対エルガー達五人で模擬戦をしたんだ。それでリンカさんはそこでバテてる五人のうち、誰か一人からでも、一度でも攻撃を受けたか?」


「いえ・・・なかったです。」


「そういうことだ。」


 今、俺とリンカさんはちゃんと二本足で立っているが、エルガー達五人はバテて仰向けで空を見ている。今日は晴れ渡る青色が広がる快晴、さぞ気持ちいいだろう。


「でも、マサツカさんが鍛えてくれたから、私もここまで来れました。彼らもきっと強くなれると思いますよ。」


「ついてこれれば、な。まあ、依頼は受けてしまったんだ。ギブアップするまで鍛えよう。」


 先行きがかなり不安ではあるが、一度受けた依頼だから、仕方ない。

 彼らの弱点で言えば、エルガー以外の四人は総じて動きが読みやすすぎる。おそらく、実戦経験が乏しいのだろう。直線的というか、教科書通りというか。で、ルウェイルは特に顕著で、綺麗すぎる。与えられた課題はすぐに習得し、訓練課程でテストがあれば、おそらく満点かそれに近い評価は得てきたんだろう。だが、実戦ではほぼ通じないといえる。敵は真正面から堂々と来るわけではない。ましては礼や名乗りなんてするわけもない。ガートは大振りすぎて隙だらけ、攻撃力が高いであろう大剣を使っていたが、武器に振り回されている。それで前衛が崩れてしまえば後衛のルルとエミリーも崩れて終わりだ。エミリーだけでなく、ルルも魔術師だとわかったが、二人共詠唱するのが致命的だ。いくら強力な攻撃も、回復魔術も、詠唱することで隙だらけになるし発動が遅いのが駄目だ。前衛が機能することが前提で考えられているのだろうが、前衛が機能しない状況ではただの的だ。動きも遅いし、回避しながらの詠唱も遅い。

 おそらく、訓練課程レベルで、かつ試合形式となれば負けることは少ないのかもしれない。だが、実戦ではまだまだ甘すぎるといえる。エルガーだけに絞ってみれば、なるほど、動きに隙が少なく、死角からの攻撃により不意をつこうとする等、ある程度の実戦経験に裏付けられたであろうレベルにはなっている。だが、総合的なレベルでは、俺とリンカさんには遠く及ばない。


 んー、んー、なるほど。正直面倒だと思ったが、誰かに教えるということも修行の一環、そう思えば、この面倒ごとも少しは自分達の為になるのかもしれない。これは、そういう試練に直面したということだろう。そうだ、そう思うようにしよう。


 ・・・ああ、前途は多難だな。


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