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第45話


「ほら、起きろ。朝だ、起きろ。」


「あと5分。昨日飲みすぎて。」


「酒は飲んでいなかっただろうが。」


「・・・一生のお願い。あと7分。」


「一生のお願いをここで使うな。そして待ち時間が増えてる。」


「眠いーーー。」


 やれやれ。ああ、やれやれ。元気なのはいいのだが、少々だらしない。野宿の時はこうではなかったんだが。これが本来の姿ということか。

 起きろーーー。迷宮行くんだろーーー。






「さあ、さあ!飲んで飲んで飲んで!久しぶりの街ですよ。野宿じゃないですよ。」


「飲んでるし食ってる。酔ってるのか?酒は一滴も入ってないぞ。」


「私、お酒が無くても酔えるのです。凄いでしょ。」


「なんにせよ、楽しめるのは良いことだ。」


「マサツカさんも、ようやく雪解けですね。ぶっちょ面だと嫌われますよ。」


「おいおい、誰がぶっちょ面だ。」


「最初、私達を助けてくれた時、火山に行った時、一緒に旅を始めた時。勿論笑って話せる場面は少なかったと思いますが、いつになったら笑顔を見せてくれるのかなーと。やっと、自然に笑っているマサツカさんを見れました。今日は記念すべき日です。なので飲みましょう!」




 昨日、たしかこんなやりとりがあったような。何か失礼なことも言われた気がするが・・・構わん、ノーダメージだ。


 結局、リンカさんが起き上がったのは15分後。旅の疲れも、道中での鍛錬の疲れもあるだろう。それを加味すれば、意外と早く起きたんだと思う。




「お待たせしました!準備できたし、ふかふかベッドで休んだので、元気です!ささ、迷宮行きますよ!」


「わかった、わかったから、落ち着きなさい。」


 一度起きてしまえば、この通り。宿で朝食をいただいて、チェックアウトしてから、迷宮への道を進む。朝ということもあり、人も少なくスムーズに迷宮の入口までたどり着くことができた。





「おー、おー。これが迷宮なんですね。私、迷宮探索は初めてなんですよ。なんだかワクワクします。」


 迷宮に入って、リンカさんが言う。中は大人5人程度が余裕で通ることができる、広めの通路が続いていた。当然ながら明かりは無いので、ライトを発動させながら進む。


「ワクワクって。そんな事、すぐ言えなくなるぞ。」


「マサツカさんがいるから大丈夫です!む、前方に魔物でしょうか。火が見えます。」


 迷宮に足を踏み入れてからそれ程時間は経っていないが、確かに前方、20m程先に火の玉が一つ、揺れている。他の探索者の松明でもなさそうだし、人の気配じゃない。魔物とみてよさそうだ。


「魔物だな。バリアや防御をすぐに。こっちから見えているということは、相手も気付いていると考えていい。」


「はい、障壁は既に。攻撃していいですか?」


「頼む。一層目の魔物だが、油断するな。」


「勿論です。任せてください!」


 言うやいなや、すぐにアクアショットを3発発射、それに気付いた魔物は避けようとするも、一発が命中。だが、まだ魔物は消えない。すぐさまファイアボールのような炎弾を発射して反撃してくるが、リンカさんはまるで予知していたかのように避ける。そして、


「アクアブレード!」


「ギィィィ」


 素早く接近し、腕に水を纏わせ、その腕で魔物を一閃。この間10秒も無い。俺も援護しようと構えていたが、その必要はなかったようだ。


「無事、倒せました。」


「ああ、素直に凄いと思うぞ。火山の時よりも、動作が速く無駄が無くなっている。リンカさん、強くなったな。」


「ありがとうございます。師匠が良かったからですね。少しずつですが、初級魔術も詠唱無しで打ててますし、もっと強くなるのでよろしくです!」


 自信をみなぎらせるその姿は、頼もしい限りだ。普段のおちゃらけ残念神子の姿は無い。まるで別人のようだ。


「魔石を回収したらすぐに進もう。頼むぞ。」


「はい、任せてください!」


 そうして、意気揚々と迷宮を進む。道中、さっきの火に加えて、水の魔物も現れるようになった。水の魔物は、水や氷の塊を飛ばしてくる。致命傷には至らないが、火の魔物は水をかけて火を消せば終わりだったが、水の魔物はそうはならないのが厄介だ。魔物の体内にある核を攻撃しなければ、永久的に水を纏い、攻撃してくる。面倒な魔物だが、


「サンダーブリット」


「プシュ」


 リンカさんにかかれば、一瞬で終わる。最初は少々苦戦したものの、慣れればこのとおりだ。中級のサンダーブリットで一撃、確実に魔物の核を打ち抜いている。


「水、倒しました。周囲に敵の気配はありません。」


「よし、魔石回収。」


 本当、普段の残念さ加減からは考えられない。戦いとなれば、優秀すぎる。ここまで強いなら、俺がいなくても勝手に強くなるんじゃないか?


「マサツカさん、どうやら下の階層への階段に着いたようです。」


「ああ、もう下の階層か。」


「はい。せっかくですし、降りてみましょう。」


「ああ。まだ正午まで時間に余裕がある。降りよう。」


 リンカさんに同意し、階段を降りる。降りた先は上の階層と同じ、特に変化も無さそうだ。あとは出現する魔物だが、早速前方に気配がある。


「リンカさん、前方、火、水。加えて風と土、それに雷だ。障壁用意!」


「はい!既に。」


「数は5体。一度に仕留める。」


 ここはスピード優先、障壁を維持しながら、アイテムバッグから大鎌を出す。大鎌に光の魔術効果を乗せて、横一閃!斬撃を飛ばす。

 

 「ギィィィアァァ・・・」


 5体ともに命中。魔石を残し、気配が消えた。完全に気配が消えたことを確認し、魔石を回収しに行く。


「やっぱり、強いです。私も、もっと頑張ります!」


「その意気は良し。だが、一層目のリンカさんの動き、もう充分強いと思うぞ。身のこなし、技が出る速さ、気配察知。どれをとっても隙が無い。」


「ありがとうございます。ですが、マサツカさんを見ると、私もまだまだと思い知ります。マサツカさんは、自分がどれだけ強くてどれだけ常識外れか、少しは自覚してください。」


「そういうものか。」


「そういうものですよ。」


 自分の強さがどんなものか、よくわからん。それは一旦置いといて、行けるところまで行こう。

 

 引き続き進んでいくと、この階層から出現する、風、土、雷の魔物とよく遭遇する。風は見えにくいが、よく見るとそいつが浮かんでいる場所は空気が揺れているように見え、ウインドエッジを放ってくる。土は、そのまま岩石が浮かんでいるようで、一番発見しやすいが、そいつが放つストーンブラストは、スピードもあり当たるとかなり痛そうだ。雷は、バチバチと音をたてており、発見しやすいが、素早くライトニングを打って来る。一層目から引き続き、火や水も出現し、魔物と遭遇する回数も多くなったが、ここで一番厄介なのは雷だろう。攻撃の速さが、他の種類と比較して段違いに早い。


 時には集団で襲って来るそいつらを、俺とリンカさんで危なげなく倒しつつ、時折現れる分岐する道を、時には行き止まりにもあたりながら、正解を見つけつつ進むと、更に下の階層に続く階段を見つけた。


「リンカさん、お疲れ様。もうすぐ正午だ。ここまでの道はなんとなく覚えたから、一度戻りたい。」


「わかりました。私も丁度お腹がすいたところです。食べ物は準備してきましたが、一度戻って、地上で食べましょうか。」


「よし。帰りも魔物が出るだろうから、油断せずに。」


「はい!勿論です。」


 こうして、予定通り一旦地上に戻ることになった。帰りも魔物は発生するので、2人で倒し、魔石を回収しつつ、無事に地上へ着いた。これから傭兵ギルドで金をもらいに行き、ついでにさっき集めた魔石も換金しておこう。



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