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第44話


 ナビスの迷宮、別名を深淵迷宮という。なんでも、地下へ下りながら進む迷宮だが、底が知れない、終着点が無いとの噂だ。ほとんどの迷宮が地下へ下りながら進む迷宮、俺が最初に踏破した迷宮もそうだった。下へ、下へ、地下へ、地下へ、深く、更に深く。深淵へ飲み込む。ナビスの迷宮のような、街の産業の一部を担っているような迷宮は当然だが未踏破である。踏破して迷宮の核を持ち帰れば、迷宮をただの洞窟と化す。迷宮の機能を維持する為に、最奥に着いても迷宮核を持ち帰らず、アイテムだけを持ち帰る、というケースもあるようだが、ナビスについてはそのような記録は無い。この世界、迷宮の踏破とは、最終地点にある財宝を持ち帰ることを意味するらしく、迷宮核は持ち出さなくてもよいみたいだ。

 まぁ、迷宮というのは大抵地下へ続いている、なので未踏破であれば多かれ少なかれ底がしれない、そういうものだと思っていたが、どうやらナビスの深淵迷宮というのは何かが違うらしい。

 と、傭兵ギルドの受付のおっちゃんから聴いた。


「ほら、見えてきました、あそこが入口です。迷宮から出て来る人の列を辿っていけばすぐに着きましたね。」


 ナビスを出て、歩きで20分位だろうか。迷宮からナビスに戻ってくる人の列を辿ると、迷宮の入口付近に着いた。リンカさんがあんなにも迷宮に行きたがったのは、深淵迷宮が呼んでいる・・・わけはないと思いたい。アレは、明らかに性格の筈だ。


「なるほど、あれが。入口は一見すると普通の洞窟のようだな。さ、道順もわかったから、戻ろうか。迷宮から傭兵達も出てきているし、もう帰り時だ。」


 真っ黒闇の大口を広げ、全てを飲み込もうというような入口がそびえる。なんとなく嫌な感じがする。ここは、備えを万全にしてから挑みたい。


「マサツカさん、逆に考えられませんか?先に入った傭兵達が出てきている今、迷宮内はすいている、つまり私達の独占状態だと!」


「何をバカなことを。リンカさん、アホなの?」


「ちょ、バカって言ったー!アホって言ったー!」


 これは・・・本当に迷宮に呼ばれているのか???


「もうすぐ暗くなる。まぁ。迷宮内はいつも暗いから関係無いんだが、迷宮内で寝ることになるかもしれないから、準備は必要だ。迷宮を舐めたらダメだ。あのな、傭兵登録を済ませて、迷宮に行きたい気持ちはわからんではない。が、楽しみは後にとっておいても損はないぞ。」


「んー、んー・・・やっぱり駄目ですか。」


「そう、だな。せっかくここまで来たというのもあるが、ここは堪えてほしい。リンカさんなら、それができると思っている。」


「わかりました。ちゃんと準備をしてから行きましょう。・・・ゴメンなさい。」


「ああ、俺も少し言い過ぎた。すまない。」


 珍しく?駄々をこねたリンカさんをなだめてここは引き上げるとして、丁度迷宮から出てきた人達がいるから、何か訊いておこう。


「迷宮探索で疲れているところ、申し訳ありません。実は、初めてこの迷宮に来たんですが、ここが深淵迷宮と呼ばれているのは何故かご存知ですか?」


 迷宮から出てきたばかりの傭兵パーティに訊いてみると、


「ああ、あんたら、ここに来るのは初めてか。俺も詳しくは知らんが、終着点が不明だと。未踏破だから当然っちゃ当然なんだがな。現在の到達階層は確か・・・52層目と言われている。だが、大抵の迷宮は階層を進むにつれて魔物が強くなっていくが、ナビスはそうではない。エレメント系の魔物が出現するが、進んでも強さに変化がなく、なんというか、最下層の気配が無い。」


「52層目まで行っても、魔物の強さは変わらないのですか?」


「ああ、そうだ。で、結局食料が無くなる前に、迷宮から戻ってくるわけだ。この迷宮の最大の特徴は、深すぎるということだろうよ。」


「わかりました。お疲れのところ、ありがとうございました。」


 52層目までいっても、まだ底が見えない、か。確か、以前放り込まれた迷宮は100階層あった筈だから、ナビスもそれ位はあるのかもしれないな。やはり準備は入念にする必要がある。



 ブーブーと、今も名残惜しそうなリンカさんを再度なだめながら、迷宮へ続く道を引き返し、無事にナビスへ戻って来ることができた。ここで明日の準備をすべく、追加で買い出しを行う。この街ではポーションも数多く売っていたので、体力や魔力回復用に買っておこう。怪我をしたら魔術で治せばいいと思うが、何があるかわからないのが迷宮。不足の事態に備えておく。

 買い出しとができたら、晩飯といこう。宿の食堂に行くと、仕事を終えた傭兵や商売人やらで賑わっていた。空いている席を見つけてリンカさんと座り、メニューを見ながら注文した。


「マサツカさん!明日の準備もできましたし、明日に備えて英気を養いましょう!」


「わかったわかった。心配しなくても飯は逃げない。落ち着け。」


「わかっていても、待ち遠しいです!野宿じゃないのは久しぶりです。ゆっくりたくさん食べて楽しみましょう!」


 やれやれ。元気なのはいいが、元気すぎる。


「お待たせしました。果実水2つに、キノコのアヒージョ、バゲット、野菜と鶏肉のピザです。」


 と、良いタイミングで料理とドリンクが運ばれてきた。この店のメニューを見て驚いたんだが、元の世界の料理に近い、いや、同じものがある。もしかしたら、食の都と言われるサナカに近づいているからかもしれないな。


「わぁ。とても・・・美味しそうですね!食べましょう!」


「ああ、そうしよう。いただきます。」


「いただきます!」


 言うやいなや、リンカさんが元気よくピザを、アヒージョを、口に運んでいく。ここまで野宿だったし、マジックバッグに入れてあったとはいえ似たような食事が続いたから、今日は格別に美味いのだろう。


「おいしーー!マサツカさんも早く食べてください。」


「わかったわかった。」


「むふふ。あ、そういえば、マサツカさんはお酒、飲まないんですか?」


「ああ。俺は酒は飲めん。」


「奇遇ですね、私もお酒は全くダメです。共通点がありますね。」


「意外なところで共通点があったな。」


「フフフ」


「フッ」


「「ノンアルコールでカンパーイ」」


「や、食べる前に、最初にしましょうよ。」


「何を言っている。いきなり食いついたじゃねえか。乾杯なんてできんだろうが。」


「そうでしたね。テヘ。」


 久しぶりに聞いたな、そのテヘってワード。

 リンカさんもそうだが、俺も野宿生活が続いていたからか、気を張り過ぎていたかもしれん。こうやって、リラックスして笑ったのは久しぶりだな。


「気分が良いようで何より。一応、明日の予定を軽く伝えておく。まず、迷宮探索は午前中にしたい。昼にはギルドに行って魔石の代金を受け取る予定だ。その後、余力があればもう一度迷宮に行ってもいいと思うが、どうだ?」


「賛成です。迷宮も行けるし、お金も貰えて、いいことばかりですね。ナビスの迷宮の魔物はエレメント系なので、倒したらしっかり魔石を回収しましょう。普通の魔石と違って属性が付いているので、少しですが高めに買い取ってくれる筈です。」


「そうなのか。ちなみに、普通の魔石は何に使われるんだ?」


「普通の魔石も属性が付いた魔石も、主に魔道具に使われますね。普通の魔石は、多いのは杖ですね。魔術師が使う杖です。魔術を使うときの媒体に使われることが多いですよ。最も、杖も詠唱も無くバンバン魔術使い放題のマサツカさんには必要ありませんよね。」


「リンカさんこそ、詠唱はするが杖は使ってないだろう。」


「実は、結構頑張りました。」


「それはお疲れ様。で、属性が付いた魔石は?」


「杖にも同じように使われますが、加えて剣とか斧とかの武器にも使われます。例えば、攻撃する時に魔力を込めると、燃える剣や雷を纏った剣になったり。あと、盾とかに使うと、付けた属性に対する耐性が強くなります。使用者が魔力を込めなければ普通の武器や防具として使えるので、重宝しますね。勿論、その魔石が大きい程、効果が強くなります。」


 そうなのか。そういえば、ネイアさん、それにあの師匠もだが、杖を使って詠唱なんかしていなかった。クレイバの学院で臨時講師をした時の学生達は、そういえば杖を持っていたな。


「あと、生活用品にも使われています。火の魔石は料理道具やランプに、水の魔石は飲み水を発生させたり。色々な使い道があります。」


「ほう。そんなに使い道があるのか。だが、飲み水なら、自分で出した方が早くないか?」


「誰もが魔術を使えるわけではないですからね。マサツカさんは別格として、私もある程度は使えますが、やっぱり自分の魔術で全てをまかなうのは難しいです。そういう時にこういった魔石があると、とても便利ですね。」


「そういうものか。わかりやすい説明、ありがとうよ。」


「おおお。・・・マサツカさんがデレた。明日は天変地異ですね。」


 ・・・・・・


「冗談です。拗ねないでください。明日もきっと良い天気です。」


「・・・はいよ。」


 くだらないことを言いながら、その日は食って飲んでを繰り返した。


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