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第43話


 街に入る門を無事に通過し、俺達はナビスへ入ることができた。

 ナビスへ入ってすぐに目に入ったのは、所狭しと軒を連ねる武器や防具屋だった。お、他にもアクセサリーや素材を売る店、見たことがない装飾が施された装備もある。これは・・・まさに迷宮探索の為の街と言えるな。

 その賑わいを眺めながら進むと、宿屋が集まる場所に辿り着き、更に進むと現れたのは傭兵ギルド。ここでリンカさんの傭兵登録を行おう。


 ギィィッ


 木造の扉を開けると、少し閑散とした雰囲気が目に入った。今は昼を少し過ぎたところ。ほとんどの傭兵達は依頼を受けて出ている筈だ。丁度いい、スムーズに傭兵登録ができそうだ。


「登録をしたいんだが。」


「おう、ここでできるぞ。あんたか、そっちの嬢ちゃんか?」


「私がします。よろしくお願いします。」


 受付は、髭を立派に生やした、ガタイのいいおっちゃんだ。


「じゃあ、ここに名前を書いてくれ。」


 渡された用紙に、スラスラと名前を書いていくリンカさん。やっぱりだが、この世界の言語なのに、俺には読めてしまう。


「よし。ランクカードを作ってくるから、ちょっと待ってな。」


「はい、よろしくお願いします。」


 このあたりは、俺が登録した時と変わらないな。これでランクカードが発行されて、そのカードの真ん中を触れる。


「できたぞ。後は、カードの真ん中を触れてくれ。これで登録完了だ。」


 カードの真ん中を触れて、完了。よくある、新人いじめのような輩に絡まれることもなく、無事に登録が終わった。


「これがランクカードですね。聴いたことはありましたが、こうやって持つと実感が湧きます。マサツカさんとお揃いですね!」


・・・喜んでもらえたようで、よきよき。


「あと、魔石の換金も頼みたい。できるか?」


「ああ、今は空いているからできるぞ。どの魔石だ?」


「これだ。」


 ゴトンッ

 重厚な音を鳴らしながら、カウンターに転がる大きな魔石。これは、火山の奥にいたあのゴーレムのものだ。


「・・・ん、んん!?あんた、これをどこで??」


「ああ、まぁ旅の途中で。換金は可能か?」


「ここまで大きな魔石はそうそう無い。だから正確な値段を出すのに時間を貰いたい。明日の昼、今位の時間に来れるか?あと、ランクカードを持っているなら見せてくれ。」


「明日の昼だな。わかった。それと、ランクカードだ。」


 おっちゃんにカードを見せると、何やらフルフルと震え出した。


「マサツカとやら、あんた、ランクはFランクで間違いないな?」


「間違いなく、Fだ。」


「この魔石を持つ魔物を倒したのは、あんたか?」


「それも間違いない。」


・・・・・・じぃーーー、立派な髭のおっちゃんと睨めっこ。むさい。


「・・・本当、のようだな。」


「当たり前だ。」


「わかった。疑ったわけではないが、にわかに信じられなかった。ちなみに、昇格試験は受けないのか?」


「以前は昇格しようと思ったこともあった。だが、今はそんな気は全く無いな。今のままでも、魔石や素材の換金ができるだろ。昇格しないことのデメリットでも?」


「んー、デメリット・・・先にメリットを説明すると、ランクが上がれば実力の証明と同時に知名度が上がる、そうすれば指名依頼なんかも舞い込む。それに成功すれば多額の報酬を得られる。あとは、地位と名誉だな。昇格しないデメリットは、そのメリットを受けられないこと、それにランク指定、例えばCランク以上とか指定されたランク以上じゃないと受けられない依頼があること、だ。」


「なら、俺には関係ないな。知名度も、地位も名誉もいらん。金が欲しくなればその都度ランク指定の無い依頼を受けるさ。」


「あー、それも有りだが・・・珍しいな。大抵は地位に名誉に金を求める。だが、その途中で、残念ながら命を落とすことも多いがな。わかった、気が向いたら昇格したらいい。それと、繰り返すが魔石の換金は明日の昼頃に来てくれ。」


「わかった。よろしく頼む。」



 魔石の換金は明日になる、と。なら、予定通り宿を探そうか。ギルドを出て、街を回るとしよう。


「マサツカさんマサツカさん。」


「ん、どうした?」


「いえ、頑なにランクを上げようとしないので、どうしてかな、と。」


「ああ、本当に地位とか名誉とか、そういうのに興味が無い。それに下手に目立つと、利用しようと言い寄って来る輩、やっかみでトラブルを起こそうとする輩、こういうのが増える。」


「そういうもの、なんですね。」


「ああ。だが、これは俺個人の考えだ。勿論リンカさんがランクを上げたいなら、自由にやってくれ。」


 リンカさんの意思を縛るつもりはない。結局のところ、俺は元の世界に帰るから、この世界で地位や名誉を得たところでなんにもならないわけだ。元々、そういうものに興味は無いしな。


「んー、私も上げようとは思ってないですね。色んな依頼を受けて討伐とか迷宮探索をやってみたかったので登録はしましたが、強くなれればランクは関係ありません。形はFランクでも、その強さはAランクという人が目の前にいますしね。本当の強さは、ランクでは測れないものです。」


 な、なんかかなりマトモなことを言っている。


「お、おう。そうか。」


「それに、マサツカさんとお揃いのカードというのが、ポイントですね!これは欠かせません。」


「なら、例えば気が変わって、俺がEランクに昇格したらどうだ?」


「その時は、私も是非Eランクに!」


「なんだそれ。」


 くだらない、実にくだらない会話をしながら宿探し。ブラブラしながら、可もなく不可もなく、な宿に泊まることにした。


「2人部屋も1人部屋も空いてるよ。2人部屋なら銀貨1枚と銅貨8枚、1人部屋を2つなら、銀貨2枚だよ。どうする?」


 宿の受付で料金の説明を受けている。説明してくれているのは・・・ゴブリンであってるか?ゴブリンのおばちゃんだ。さて、普通なら少しでも安い2人部屋を使うが、同じパーティとはいえ、男と女だ、ここはしっかり部屋を分けておこう。そう返事しようとしたら、


「2人部屋をお願いしますね。」


「ちょ、リンカさん!」


 俺の意思に反して、リンカさんが2人部屋で返事をした。


「リンカさん、ここは部屋を分けよう。」


「何故です?安く済みますし、部屋で明日の予定も話し合えますよ。」


 至極まっとうだ。それはその通りなんだが・・・


「2人部屋ね。銀貨1枚と銅貨8枚だよ。1泊だけかい?」


「あー、一応、2泊しておこう。予定が変わったら、延長できるか?」


「ああ、大丈夫。最近は満室ということもないからな。」


 結局、2人部屋をとることに。2泊分の宿代を支払って鍵を受け取り、部屋へ。




 ボフッ


「んー!ホラ、ベッドですよベッド!今日はゆっくりゴロゴロできますね。」


「ああ、野宿には慣れているが、寝床が柔らかいのは快適だな。」


「ところで。」


「ん?」


「なんで部屋を分けようなんて言ったんですか?ひょっとして、私の事嫌いなんですか?ブーブー言いますよ。ブーブー。」


「もうブーブー言ってるぞ。そうじゃなくて、男と女だ。こういう時は部屋を分けるもんだろ?」


「なるほど、そういうことですね!マサツカさんも中々ウブいです。ご安心ください、私はマサツカさんを信じていますので。」


 なんか、めんどくさくなってきた。悪いが、ここはもう流そう。


「では、その信頼にこたえるとしようか。で、ナビスの観光もいいが、俺は名物の迷宮とやらに行きたい。リンカさんはどうだ?」


「お、いいですね!私も迷宮探索したいです。ナビスの迷宮といえば、エレメント系統の魔物が多いことで有名です。是非行ってみましょう!」


「よし。なら準備しに行こうか。といっても、俺のカバンに必要な物は入ってるし、水は魔術で作って保存してある。だから、食料を買いに行こう。」


「大賛成です!ささ、早く早く。」


 やけに明るいリンカさんと一緒に、買い出しに行くことにした。この感じ、例えるなら、新しいゲームを買ってもらった子どもがはしゃいでいるのと似ている気がするな。


 ナビスにも屋台が集まる場所があったので、そこで食材や料理を買い込む。ホットドッグやサンドイッチが多いな。時間の流れが止まるマジックバッグに入れておけば、いつでも出来立てを味わえる。





 食料を買い終えて、ついでにぶらついたら、もう夕陽が差している。そろそろ宿に戻って夕食、と思ったところ、


「ちょっと、ちょっとだけ。迷宮の入口だけでいいんです。行ってみませんか?」


「んー・・・もうすぐ暗くなる。明日の朝では駄目なのか?」


「いいんです。いいんですが・・・その、待ちきれなくて。入口だけでも!今確認しておいたら、明日はスムーズに行けますよ。」


 まるで駄々っ子がお願いするように、しかしこちらのメリットも示してきてる。


「わかった、わかった。入口を見るだけだ。」


「流石です。女心をわかってます!」


 迷宮を見てみたいというのは、もはやバトルジャンキーの心では?決して女心ではあるまい。


 だが、大切なパーティの仲間がこう言っているんだ。迷宮の入口に行ってみることとしよう。


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