第41話
前回までのあらすじ
祭りだ!そう意気込んでやって来ましたラルダの村。ひょんなことから山に巣食う魔物と遭遇した。なんてこったい、えらいこっちゃ。バカデカイ包丁をぶん回し、とんでもなく悍ましい外見の、危険極まる魔物を無事に討伐し、無事に祭りが開かれた。ラルダの神子であるリンカさんの案内によって祭りを満喫して、めでたしめでたし。さてさて本題に。久中さんを探し出して元の世界へ帰る為、旅を再開しよう。さらばラルダ、また会おうラルダ。
そう。さよなら、した筈だったんだが・・・なんか・・・おる。
「祭りが始まる時に、決意表明はしましたよ。強く賢くなります。旅のお供に、よろしくお願いしますね。」
「いや、リンカさん。つっこみどころが多すぎますよ。笑いを取りにきたのなら、もう少しわかりやすくお願いしますね。」
「あら、私は本気ですよ。マサツカさんについて行けば、間違いないと思っています。」
「神子の役割はどうするんですか?」
「カザリに引き継いでもらいました。」
「押し付けた、の間違いでは?」
「テヘペロ。」
「やっぱり。」
「迷惑・・・ですか?」
「・・・・・危険な旅になります。何があってもいいように、覚悟はできていますか?」
「はい。どうか、よろしくお願いいたします。」
・・・神子の服装は変わらず。しかし、大きめのリュックに寝袋やテントと思われる荷物。リュックの中身は旅に必要な道具だとか着替えだとかが入っているのだろう。永遠ではないが、いや、これが最後になるかもしれないのに、故郷を離れ、家族と離れ離れになることも、受け入れて覚悟を宿した表情。なるほど、遊びで来るわけではなさそうだ。
「まぁ、私も大層なことを言いましたが、毎日いつも危ないことばかり、というわけでもないと思います。それよりも、急ですね。理由を訊いても?」
「はい。元々村から出て、外を見て回ってみたいというのはありました。ただ、その時は私が村で一番強い、と思いあがっていたので、修練等ではなく軽い観光気分でした。ですが、あの事で自分の未熟さを痛感しました。このままではいけない、マサツカさんについて行き、自分を鍛えたい、そう思いました。祭りの間、家族とも話をして、神子をカザリに引き継いでもらい、そして家族とのしばしの別れを済ませてきました。本当のことを言うと、マサツカさんが村に留まってくれたら、という気持ちも少しはありましたが、それはやはり甘い考えでした。その考えは、もう捨てて来ましたのでご安心ください。」
なるほど、な。それはまた、かなりの決意を。・・・そうか。そこまで考えているのか。家族との別れも済ましているなら、勝手に飛び出した家出少女というわけでもあるまい。
「わかりました。リンカさん、改めてよろしくお願いします。」
「ありがとうございます!しっかり、マサツカさんの役に立たせてもらいますね。よろしくお願いします。」
こうして、旅の仲間が一人増えたわけだ。まぁ、何を言っても聴かないだろう、というのもあるが、この世界の一般的な知識を持っている人がいると何かと助かる面もある、という打算的な側面も、無いわけじゃあない。何にせよ、一緒に旅をするのであれば確認することがある。歩きながら、話そう。
「早速ですが、リンカさんの戦闘スタイルです。前に見た限りだと、魔術師ということですか?」
「はい。基本7属性、特に火と光が得意です。近接戦闘もある程度できますが、より得意なのは魔術主体の遠距離攻撃ですね。」
なるほど。やはり山で見たとおりだな。なら、もし戦う時は、俺が前衛、リンカさんには後衛を任せることになるか。
「では、戦闘になった際は、私が前衛、リンカさんは後衛でいきましょう。傭兵ギルドで依頼を受けて戦うこともありますので、その時はよろしくお願いします。」
「はい、もちろんです。それでしたら、私も傭兵ギルドに行ったら登録しておきますね。村には傭兵ギルドがなかったので、まだ登録していません。」
「ええ、それでお願いします。」
リンカさんを加えて、サナカに向かって歩く。当然、この世界では歩くか馬車が一般的なのだが、飛行魔術に慣れている俺からすれば、申し訳ないが遅いことこのうえない。たまには歩くことも大事だが・・・リンカさんに、飛行魔術を習得してもらおうか。
「リンカさん、飛びますよ。」
「・・・飛ぶ??」
「私が山で使った、アレです。」
「アレを、私が!?」
「はい。何があろうと、覚悟はできているんですよね?」
「・・・ずるいです。ですが、わかりました。そうすると早く進めるんですね。」
そういうことだ。それに、旅の時間の短縮以外でも、何かと便利に使える。習得しておいて損はない。
「意地悪を言って申し訳ない。ですが、今後必ず役に立ちますし、リンカさんを強くできます。」
「勿論、こんなところでくじけません!頑張ります!」
うむ、良い心がけだ。野宿中、寝るまでの間に練習しよう。
サナカを目指す道中、当然だが日が暮れる。夜営の準備をしなければならないので、今日はここまで。俺がアイテムバッグから設営済のテントを取り出してもいいんだが、リンカさんがどの程度準備ができるのか、念の為確認しておきたい。
俺の懸念をよそに、リンカさんは自分の荷物からテントを出すと、手際よく組み立てていった。これは、良い意味で期待を裏切ってくれた。中々旅慣れているな。
「こんな感じでしょうか。」
「ええ。驚きましたね。ここまで手早くできるなんて。実は、以前どこかを旅していたとか?」
「いえ、幼い頃から山に籠ったりしていたので、その時にできるようになりました。自分で料理もできますし、旅に必要なことは大抵できますよ。」
ほう、やっぱり野生児。
「干し肉や乾燥野菜、パンもあるので、簡単な物でしたらスープも作れますよ。よければ一緒に食べましょう。同じ釜の飯、ですね!」
なるほど、良い言葉を知っている。アイテムボックスにも食料はたんまりあるが、ここはありがたくいただこう。
この世界でも砂糖や塩、胡椒等の調味料は一般に流通しており、庶民は味気ない食事ばかり、という訳ではない。丁寧に味付けされたそのスープは、じんわりと体に染み渡る。うん、美味い。
「ご馳走様です。純粋に、ただ美味しかったです。」
「ふふ、お褒めに預り光栄です。」
「食事は旅の醍醐味ですからね。そういえば、一緒に旅をするので、これもお話ししておきましょう。」
「なんでしょう?」
「実は、アイテムバッグ、持ってます。リンカさんの荷物が重そうなので、よければ入れますよ。」
「え、ええ!マジックバッグ!?それ、軽々しく言っちゃダメですよ!」
「勿論、言いふらしたりしません。旅の仲間のリンカさんには伝えておこうと思いまして。」
「あ、ありがとうございます。どうりで、マサツカさんの荷物が少ないわけです。大鎌も、その中にあったんですね。テントも、その中に?」
「あたりです。設営して入れてあるので、取り出して、テントの角を止めるだけで、はい、できあがり。」
目の前でサクッと実演してみせた。当然、俺も一から組み立てることはできる。だが、やはり効率的にしたいものだ。
「なんという。マサツカさんには常識が不足しているようですね。それも、おおいに。これまでどこでどうやって生活していたのやら。」
おおっと、それは詮索しないでくださいな。
「さて、ご飯も頂きましたので、飛行魔術、練習しますよ。」
「はい。ご教授ください。」
「では早速。風の魔術を基に、自分を浮かせてください。自分の足元に風を発生させて、自分を浮かせる。このイメージで、まずはリンカさんなりにやってみてください。」
「わかりました!えーと・・・風よ、我を浮かせよ!」
・・・・・・ああ、そうだった。基本、皆詠唱するんだ。んー、無詠唱が先か。いや、まずは飛行魔術を覚えてから、だな。
で、リンカさんはと言うと、詠唱していることは残念だが、一瞬、1秒あるかどうかだが、ふわっと浮いていた。なるほど、筋はいいようだ。道中、余すことなく伝授しよう。
「む、難しすぎます!」
だろうな。今日は初回なので、数回繰り返してリンカさんがバテたところで終了し、各々のテントで休憩することとした。最後は、声も絶え絶え、かなり厳しかったようだ。なんでも、コントロールが非常に難しいらしい。普段攻撃魔術として発現させることが多いから、攻撃以外の方法に使うようにするのが難しいとか。一応回復魔術をリンカさんにかけておいて、眠ってもらおう。そして、今日は俺が夜営の見張りをしよう。俺は多少眠らなくてもなんともないし、今日はリンカさんにはゆっくり休んでもらうとしよう。
橙に燃える焚き火の音色をバックミュージックにして、夜が明けるのを待つことにした。




