第37話
巨人の「知らん」発言で、コケそうになった。そりゃもう、ズデーーーッとな。
いや、本当にコケはしないんだが。この爺さん、でいいのか?中々イイキャラをしてらっしゃる。
「そうでしたか。それは失礼しました。私はマサツカといいます。あなたは、麓の村のラルダに伝わる、山の神ですか?」
『わしゃ長い間生きている?存在?しているとは思うが、神なんてものを名乗った覚えはないぞ。そういえば、わしゃ何なのかの?あんまし深く考えたことはないわい。』
ガッハッハッハッハ
笑っているのか。笑ってらっしゃるのか?悪い巨人じゃないと思うが、どうにも調子が狂う。
「先程は失礼しました。あの、質問ばかりで申し訳ありませんが、何か、何かありませんか!?村が、このままでは故郷の村が滅びてしまいます。」
『ふむー。そういわれてものー・・・・・・そうじゃ。ここの更に奥に、何かあった筈じゃ。それが原因かどうかはさっぱりじゃが、道を作るから、見にいってみるがよい。』
ゴゴゴゴゴッ
巨人の言葉に続いて地響きが発生し、マグマの中から、岩がゆっくりと出てきた。それは丁度、俺達の前に大きな岩の階段を成して、道を作った。
『その道を行くと、いつの物かわからぬが、その何かが置いてある部屋に着く。なんなら、持っていくがよい。』
「は、はい、ありがとうございます。行ってみますので、お待ちくださいませ!」
・・・持って行って、いいんだよな?この巨人が良いって言うんだから、いいんだよな。
巨人が言うように、岩でできた階段を進む。マグマの中からでてきた岩であるが、既に足場は冷えており、熱くなかったので問題無く進めた。階段の先は壁をくり抜いてできた小さな部屋へ続いており、その中には、見覚えのある台座と、丸い玉があった。これって、昨日の・・・。
「マサツカさん、見てください!これ、麓の洞窟にあるのと同じ、宝玉です!」
「確かにそうですね。昨日見た物と同じです。」
そう、昨日見た宝玉と同じだ。それが、何故ここに?考えても今はわからないな。これ、本来は洞窟の宝玉と一緒にあるべきなんじゃないのか?
「宝玉なら私は扱えないので、持って帰るならリンカさんに任せていいですか?」
「ええ、勿論です!これが原因かもしれませんので、持って帰ってみます。」
なら決まりだ。俺達はこの宝玉を持ち帰ることにして、辿った道を戻り、再び巨人の前へ。
『ごくろうさんじゃったな。何かわかりそうかの?』
「ありがとうございました。見ただけでは何かはわかりませんので、お言葉に甘えて持ち帰って調べてみます。」
『うむ。そうするがよろしい。』
「はい。では、私達はこれで失礼します。」
『もう帰るのかの。して、どうやって帰るんじゃ?』
「元来た道を辿ります。」
『それはまた、難儀じゃのう。よかったら、転移していかんか?ホレ。』
巨人が言うと、すぐ側の地面が青く光りだした。
『そこに入れば、入口まで行ける筈じゃ。そして特別じゃ。次からは、入口にできたこの転移陣に入れば、すぐにここまで来ることができる。たまには話相手にでもなってくれんか。』
巨人の爺さん、今さらっと転移陣とか!何者か知らないが、とにかく凄いぞ。
とにかく、これで入口までショートカットできる。ありがたい!
「それは助かります、ありがとうございました。正直申し上げると、道中暑すぎて厳しいものでした。」
「私からも、ありがとうございます。」
『ほっほっほっ。構わぬよ。また来るがよい。』
巨人に礼を言い、青く輝く地面に入る。すると、目の前が真っ白になり、しばしの浮遊感の後に、視界が開けてきた。文字通り身を焼くような暑さがなくなり、入口の石扉の前にいることがわかった。この転移陣、便利すぎる。俺もこんなことができる魔術を使えるようになりたい。
地上に出る為に、暗い階段を今度は上り、何事もなく無事に地上へ出ることができた。地上に出た後は、リンカさんが入口を大岩で塞いだ。これ、誰かが中に入っている間に塞がれたらどうなるんだ?危ない気がするな。
「マサツカさん、これで山は静まるのでしょうか?」
「まだ何ともですね。洞窟にあった宝玉とさっきの宝玉、何か隠されているような気がしますし。」
「私も同感です。あの巨人?からは敵意も無く穏やかな気配がしていましたが、私の胸騒ぎはまだ治まっていません。」
ああ、それは確かに。なーんか、渦巻いている気がする。
「解決するかはわかりませんが、麓の洞窟の宝玉の前に、さっき手に入れた宝玉を持っていきませんか?」
「そう、ですね。・・・はい!そうしてみましょう。」
リンカさんと相談し、これら2つの宝玉を1か所に集めることに決めたので、麓の洞窟に行ってみることにした。日が沈む途中の、鮮やかな橙色が広がる空の下、洞窟へ急いだ。
洞窟の中、宝玉が鎮座する台座までは特に何もなく辿りついた。さて、ここからどうなるか。何もなければ、今回の騒動が解決すれば一番良いんだが。
「それにしても、さっきの巨人には驚きましたね。リンカさんは、あの巨人のことは知っていましたか?」
「いえいえ、まさか。私も知らなかったですし、多分父と母も、カザリも、村の誰も知らないと思います。本当に驚きました。」
だろうな。もしかしたら、火山の内部事態が迷宮化していたんじゃないか?それで、宝玉がいわゆる迷宮の核という。
仮にこれが迷宮の核だとすると、同じ物が迷宮でもない洞窟にある理由がわからん。それに、迷宮核を持ちだしたら、迷宮としての機能を失うから、あの巨人も消えてなくなるのか。そうだとしたら、安易に持ち出してはいけなかったか。いや、わからんな。なら、やっぱり近づけてみたらわかるもんかね?
「マサツカさん、宝玉を近づけてみますね。何があるかわかりませんので、警戒はしておいてください。」
「わかりました、」
おそるおそる、リンカさんは火山から持ってきた宝玉を台座にある宝玉に近づける。台座は昨日見た時と同じで、特に変わったところは無い、ように見える。
「・・・何も、起きませんね。」
天井に空いた穴から夕陽の光が差し込み、宝玉を照らしている。照らされた宝玉はその光に照らされて鮮やかな橙色に染まる。率直に、綺麗だ、と感じたが、リンカさんが言う通り、何も起きない。
拍子抜けしている俺達。日も沈むし、もうすぐ夜になる。一旦村へ戻ろうかとリンカさんへ提案しようとした。
「ッ・・・」
リンカさんが、宝玉を落とした。カラン、という宝玉とは似つかわしくない音と共に、手に持っていた宝玉が地面に落下した。
「どうしました!?大丈夫ですか!?」
「私は大丈夫です!ですが、わかりません!急に熱くなって。」
見れば、地面に落ちた宝玉は橙から真紅へ、そして黒ずんでいる。台座にある宝玉も、黒ずんでいるように見えた。何が起きた!?
「アアアアア・・・・ブォォォォ・・ゲハゲハ・・・クケケケケケケケーーーーーー」
突如響き渡る、この世のものとは思えない声、恨みにまみれた悲鳴。この世の怨念を凝縮したこれは、何だ?何が起きている?!




