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第36話


 俺達の目前にそびえる、石でできた扉。どこかの民族の模様のようなものが刻まれている。これは、おそらく・・・


「リンカさん、宝玉ってありますか?」


「あ、申し訳ありません。麓の洞窟の台座にあるので、持ってきていません。」


「そうですよね。私も気が付かなかったので。多分、大丈夫です。開けてみます。」


 多分、魔術的な要素が鍵になっているのだろう。扉に魔力が走っているような感じがある。


 そっと扉に手を触れる。なるほど。なんらかの魔力と反応して、扉が開く仕組みのようだ。その魔力というのがあの宝玉だと思うんだが、無いなら仕方ない、俺がその魔力を再現しよう。

 扉に存在する魔力を読み込み、認識。何かが欠けているイメージを受け取った。なら、その欠けたところを埋める。どれだ?どの形が合致する?色んな属性を合わせてみたが、合わない。それでも試し続ける。

 どれくらい時間が経ったかわからないが、ふと、ピッタリはまるイメージを見つけた。

火、土、光、それに水を少々。これが合いそうだ。それらの魔力を上手く混ぜ合わせ、欠けた部分を埋めるイメージで扉にそそぐ。


 ゴ、ゴゴゴゴ


 地響きをたてながら、扉が開いた。よし!成功だ!これで中に入れる。


「マサツカさん!開いたのは嬉しいですが、え?どうやって!?」


「扉に合う魔力を流し込んだだけですよ。」


「えっと・・・よくわかんないです。」


 わかんなくてもいい。それよりもだ。


「それはわからなくてもいいですが、暑くないですか?」


「はい、急に暑くなりましたね。神殿の中からですよね。」


 扉を開けた途端にこの暑さだ。火山内部に作られた神殿は、侵入者を強烈に拒否するように、熱波を放っている。


「リンカさん、冗談抜きで、ついてこれそうですか?本当に、無理はしないでほしいです。多分、昨日と同じ位かそれ以上に、暑いですよ。」


「大丈夫です。どうか!お供させてください。水の膜を展開しますので、遅れはとりません。神殿に何があるのか、村に何が起こっているのか、ラルダで育った者として確かめさせてください。」


 お、おお。急に真面目だな。だがまあ、そこまで言うのなら。


「わかりました。では限界の、そうですね、5、6歩位手前でおしえてください。一度限界まで傷つくと、回復までに大きな時間がかかり、リンカさんの負担が増えます。私なら、これ位の修羅場は潜り抜けてきたので、まだまだ余力があります。」


「わかりました。ついて行く以上、マサツカさんの言う通りにします。」






 神殿内部は、始めはレンガで造られたような構造で、暑いが道は平坦で進みやすかった。途中、昨日洞窟にいた火の玉がフヨフヨと何個も浮いていたので、アクアショットで消火しながら進む。それにしても、火の玉が多すぎる。

 迷路のようになっており、行き止まりにあたれば戻って別の道へ行く。階段を見つけたら降りる。降りる度に、更に暑くなっている気がする。いや、確実に暑くなっている。これを繰り返すうちに、ゴツゴツした岩場が現れるようになった。人口的に造られた部分はそろそろ終わりということだろう。ここから先は、本当の意味で自然との闘いとなるだろう。


「リンカさん、大丈夫ですか?水もたくさんあるので、どんどん飲んでください。」


「ありがとうございます。助かります。いただきますね。」


 今、俺達は休憩中だ。昨日、水魔術で飲料水を造りまくっておいて、それをマジックバックに詰め込んでおいた。あと、干し肉で塩分補給。俺の場合は食べなくても大丈夫だが、流石にこの暑さ、水は欲しい。


「マサツカさん、私も水魔術は使えます。飲み水出て来い、アクアシャワー!」


 そう詠唱すると、リンカさんの頭上から、まさにシャワーが。シャワーに顔を向け、ゴクゴクと飲んでいる。なんかシュールだ。


「マサツカさんもどうですか?水分補給もできて、体も冷やせますよ。」


「ははは、気持ちだけ貰っておきます。それよりも、魔力切れは大丈夫ですか?」


「まだ余裕があります。フラフラもしませんので、まだ行けます!」


「もし無理なら遠慮なく言ってください。私の場合、空気から魔力を取り込めるので。ヒールで魔力を回復させることもできます。実質無限です。」


「え、なんですかそれ!?聴いたことないです。」


「私にはできます。それだけですよ。」


 ホゲー、て顔してる。普段は言わずに隠しておくが、今回の場合は伝えておかないとな。





 休憩を終え、先に進む。岩だらけの道に、小さいが壁や地面から火が噴き出す。ただでさえ進みにくいのに、さっきの火の玉が続々と。しかも、さっきよりデカくなってやがる。更に、体当たりだけでなく、ファイアボールを打ってくるようになった。


 アクアショットだけでは流石に面倒になってきた。俺もリンカさんも、アクアウォールで面攻撃。これで大抵片付くようになった。


 更に進み、降りて行くと、ところどころにマグマが流れている。これはいよいよ終わりが近いか?


 マグマに注意しながら進んでいると、んー?ゴーレムか?岩でできた巨人が鎮座している。先行し、偵察。無視してゴーレムの横を通りすぎてもよさそうだが・・・


「マサツカさん!避けて!」


 言われなくても!こいつ、腕を大きく振りかぶりやがった。やっぱり、ガーディアンってわけだ。

 足場が悪いし、おまけにマグマも流れる。こんなところで戦うのはかなり厳しいが、俺は負けんよ。


 ウオオオオオォー


 どっから声だしてんだろ?ゴーレムが吠えると、マグマの川に飛びこむ。マグマしぶきが!て、あれ?何がしたいんだ?俺、せっかくコイツをぶち倒してやろうと意気込んだのに。


「マサツカさん、あ、あの、大丈夫ですか?」


「勿論、大丈夫です。」


「でしたら、早く行きませんか。何か嫌な予感が。」


「その嫌な予感とは・・・あれのことかもしれないですね。」


 俺達の視線の先には、さっきのゴーレムが。マグマの川から這い上がってきたそれは、全身にマグマと炎を纏った、とってもヤバい奴になっていた。


「は、早く逃げましょう。あれは流石に・・・。」


 リンカさんも、めちゃくちゃ驚いている。ドロドロのマグマを纏ったそいつは、さながら炎のゾンビのようでもあった。


「要望どおり、逃げましょう。動けますか?」


「なんとか動けます。」


「なんとかでは、後が厳しくなります。抱きかかえますよ。ちょっと我慢してください。」


「ちょ、ひゃっ!」


 リンカさんを抱きかかえて、地面が安定してそうなところまで、ダッシュ。水の膜で俺達を包んでガードしながら、進む。


 結構早めに進んだはずだが、後ろからはあのゴーレムが、ズンズン迫ってきてる。うわぁ、執念深い。


 しばらく進むと、比較的足場が安定した場所についたので、タイダルオーシャンで回りの地面を冷やす。急激に冷やした為、地面が割れる音が周りから発生する。地面が冷えて、座れそうになったら、リンカさんを下ろす。この人、だいぶ強がっていたな。かなり疲弊している。今、終わらせるから、もう少しだけ耐えてもらおう。とりあえず、」応急処置のヒール。


 よし、あとは来るのを待つだけだ。


 しばらく待つと、ああ、やっぱり来やがった。あのゴーレム、ラグビー選手みたく、タックルで周囲を破壊しながらどんどんきてやがる。あの見た目で、以外と動きが早かった。普通の傭兵だったら、多分一瞬でアウトだろう。だが、俺は普通じゃないんでね。すぐに終わらせてやる。


 タイダルカノン


 大量の水を、いつもの広範囲ではなく、一点集中。凝縮されたそれは、一直線にゴーレムへと延びていき、直撃。


 ドバシャーーーー


 巨大な水流が、消防車の放水のように、大量の水圧をかけ続ける。消防車に例えたが、タイダルカノンは水量、水圧共に消防車とは比較にならない位強い。


 オオオオオオォォォォォォ・・・


 恨めしそうな断末魔と共に、水蒸気が充満する。まだ油断しない。いつでもタイダルカノンを放てるように待機。

 やがて、水蒸気がなくなり、見えたのはゴーレムの残骸と、大きな魔石。

 その大きな魔石を回収し、先へ進むとしよう。







「もうダメかと思いました。足がすくんでしまい、ああ、ここで死ぬんだ、と諦めかけてしまいました。何度目かわかりませんが、ありがとうございました。」


「いえ、気にすることはないです。アレは、流石に驚きましたね。見た目もそうですし、もう色々と。」


 ゴーレムを倒し、今は休憩中だ。タイダルオーシャンで適度に地面を冷やしながら、休憩。リンカさんに何度かヒールをかけて、水を飲んでもらう。村一番の実力者でも、あれは厳しかったようだ。汗がダラダラで、疲れ切っている


「それにしても、マサツカさん、出鱈目ですよ。なんというご都合主義。もう、何でもありじゃないですか。なんだか私が足手まといで。少しでもお役に立とうとしたのに。無念で、心が折れそうです。ううう。」


 いや、折れてないだろ。ワザとらしく「ううう」とか言う余裕があるなら、大丈夫そうだ。


「回復したなら、そろそろ行きましょうか。」


「あ、ひどいです。乙女が泣きそうなんですよ。優しい励ましの言葉を要求します。」


 余裕だな。流石は残念神子。


「それだけおふざけできたら充分です。早く終わらせてここを出ましょう。この先に魔力の塊があります。もしかしたら、それが今回の原因かもしれません。」


 そう。この先に見える階段、その先から、異様な程の魔力があるのが感じられる。それが、今回の騒動の原因かもしれない。


 回復したリンカさんと共に、階段を降りる。暗闇が支配する階段をゆっくりと降りる。降りるにつれて、熱気、いや、熱波が強くなる。バリアがなければ、既にぶっ倒れてるな。この神殿、とにかく暑い。



 降り続けること数分、やがて、階段にも終わりが訪れた。降りた先では、一面に広がるマグマの湖が俺達を出迎えた。そりゃ暑いわけだ。そして、魔力の塊も、このマグマの中にあるようだ。


「ここが、神殿のゴールみたいです。」


「そのようですね。マグマしかありませんが、何か出てくるのでしょうか。」


 まぁ、それがお約束だろう。


『久しぶりの客人だな。よくぞ参られた。』


 なんだ!どこから!?


『そう警戒するでない。今姿を見せるから、もう少し待つが良よい。』


 年老いた、どちらかというと男性のようなその声の後、マグマの中からゆっくりと、巨大な人型が姿を現した。それは、見るからにマグマの巨人だ。


『ほっほっほっ。来客なんて何年振りだろうか。何もないが、ゆっくりしていくがよい。』


 ゆっくりしたいのは山々だが、暑い。早く出たい。ただ、せっかくここまで来たんだ。訊きたいことがある。なぁ、リンカさん。て、おい、リンカさーん。あらま、驚きすぎてフリーズしてらっしゃる。放置しておこう。


「ああ、ありがとうございます。正直、色々と驚きました。訊きたいことがあるのですが、よろしいですか?」


『ふむ。なんでも訊くがよい。答えられることなら何でも答えようぞ。』


「ありがとうございます。実はですね、昨日からラルダという、麓の村で祭りがあるのですが、この山が荒ぶっており祭りどころではなくなっています。山から火柱が発生し、麓の村もあわや大惨事になりそうでした。何かご存じですか?」


『んー、ふむ。山が荒ぶるか。』


「あ、あの、私はリンカと申します。失礼ながら申し上げます。山があのように燃え盛ったのは、あなた様のお怒りなのでしょうか?何か、私共に至らぬ点がありましたでしょうか?」


 おいい!回復した途端、何を訊いている!?流石に失礼すぎるだろ!


『ほほぅ。そういうことか。いや、実はの・・・』


「実は・・・?」


 ゴクリ。唾を飲み込み、もったいぶる巨人の言葉を待つ。







『わしゃ、知らん。なーんも知らんぞ。わしゃ、何もしとらん。』


 なんてこったい。


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