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第31話


「先程はあのような事になり、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます。とても有意義な時間を過ごせましたわ。」


「こちらこそ、ありがとうございます。教えるということは、難しいものですね。」


 あれから、金髪のっぽの怒涛の罵声を華麗にスルーして、今はフランシス教授と話し中。依頼完了のサインは貰ったし、ここからが本題。


「フランシス教授、折り入ってお願いがあるのですが、よろしいですか?」


「はい!私にできることならなんでも言ってください!」


「ありがとうございます。実は、学院の近くにある図書館、世界の全てがここに、でしたか?その、特別配架の閲覧許可がほしいのです。学院長の許可が必要と司書から聞いたのですが、学院長に取り計らってもらえることはできますか?」


「世界の全てがここに、というのは、バーテクス図書館ですね。その特別配架、ですか?」


「はい。調べたいことがあります。」


 そういえば、そんな名前の図書館だったか。よく確認していなかった。


「んー、私で力になれるかどうか。今回の無詠唱と同時発動の授業はとても素晴らしかったので、それを話してみたら、学院長も聴いてくれるかもしれません。ちょうど私も、学院長へ今回の授業の報告に行く予定だったので、よければ付いて来てください。そこまででしたら協力できそうです。」


「ありがとうございます。そこまでしてもらえて嬉しい限りです。」


 よし。ここで門前払いなら後は忍び込むしかなかったが、まずは糸口をつかめた。今のところ順調と言える。となれば、あとはその学院長の人柄だな。


「ところで、学院長はどんな人なんですか?」


「そうですね・・・、なんと言いますか、厳格?いえ、偏屈ですね。一度受け入れられれば気の良い人なんですが、やっぱり偏屈頑固ですわ。おそらく、マサツカさんにとっては厳しい交渉になると思われます。」


 なるほどなるほど。んー、そう簡単にはいかないか。だが、ここまで来たからやってみるしかないが、どうしたものかな。その学院長のメリットでも出せればいいが。どうせ、

「お前に許可を出すことで、こっちになんの得がある?」

 とか言ってくるんだろうよ。


「おっしゃるとおり厳しそうですね。ただ、こちらも譲れませんので、望むところです。」


「その意気です。頑張ってくださいね。ところで、マサツカさんはそれだけの実力があるのに、どうしてFランクのままなんですか?」


「ああ、ただ単に目立ちたくないだけです。」


「あらら、それはまぁ。残念ですが、今日の授業で目立ってしまいましたね。私もこの件は学院長へ報告しなければなりませんし、一躍時の人ですわね。」


「そんなにですか?難しいですが、慣れればこう、ちゃちゃっとできますよ。」


「それはあなただけだと思いますよ。私から申し上げるのは失礼ですが、自分の力量をよく認識すべきだと思いますわ。ただ、もう遅いと思いますが。」


「んー、以後気を付けます。」


「そうすべきかと。おそらく、今日は全く本気ではないのでしょう?」


「そのとおりです。ただ、上には上がいるもので、私より強い人はたくさんいます。私なんてまだまだ足元にも及ばず、修行中ですよ。」


 少なくとも、ネイアさんは俺よりも絶対強い。師匠?知らんな。


「あなたが修行中なら、私なんて・・・。この学院の教職員でいるのが恥ずかしいですわ。ううう・・・。」


 そんな落ち込まなくても。限界はぶち壊すものですよ。そうすればまだまだ強くなれます。限界なんて、自分が勝手に決めたものですから。


 と、話しながら歩いていたら着いた。荘厳で重厚な扉がそびえ立つ。こりゃ厳つい扉だこと。ラスボス感満載だ。


「学院長、フランシスです。入ってよろしいですか。」


「構わん、入れ。」


「失礼します。」


 扉が自動でスッと空いた。これもまた、なんらかの魔術ですかね。結界といい、この学院は魔術だらけだな。


「学院長、早速ですが本日の魔術特論の授業及び講師のマサツカさんについて報告させていただきます。」


「聴こう。そこにいるのがマサツカとやらか?」


「はい、そうですわ。」


 おわっ!めっちゃ怖そう!2メートル位あるか?筋骨隆々の、赤黒い肌のおっちゃんがドカっと鎮座してるよ。地獄の王みたいだ。


「ほーう。昨日の話では、無詠唱と同時発動ということだったな。実際の授業はどうであった?」


「一部、講師に反発する学生がいましたが、その他は順調でした。同時発動はありませんでしたが、1人の学生が微弱ながらも初級魔術アクアショットの無詠唱発動に成功しました。」


「そうか。それについてフランシス、君の見解は?」


「効率が悪く使いづらいと廃れていた無詠唱でしたが、使いこなすことができれば魔術業界に大きな波乱が巻き起こるかと。まして同時発動となれば常識が変わります。」


「ふむ。フランシスよ。そこにいるマサツカ、君が連れてきたのなら、敵ではないという認識でよいな?」


「勿論ですわ。私も確認しましたが、問題ありません。」


「よかろう。マサツカとやら。質問に答えよ。」


「はい。」


 うわぁ。これは手強そうだ。俺の質問に答えるのが当然、みたいなノリだな。我侭、とは違うかもしれないが、ヘソを曲げだしたら面倒なことになる。


「無詠唱と同時発動、これは自分だけで修得したのか?」


「いえ。師匠がいました。」


「ほう。ということは、少なくともあと一人は同じことができる人物がいると?」


「そうなります。」


「何故、それをここに持ち込んだ?何が狙いだ?」


「学生達の将来の生存率を上げる為です。私は今は傭兵を稼業としていますが、何度も死にかけてきました。今私が生きてここにいるのは、2つ、少なくとも無詠唱ができたからです。」


「ふん。よく言うわ。本音はそこにはないだろう。本当の目的はなんだ?答えろ。」


「では、単刀直入に申し上げます。バーテクス図書館の特別配架、その閲覧許可をください。」


「はっ!何を言うかと思えば。お前に許可を出したところで、我に何の得がある?傭兵というのであれば、ここに留まるとは限らん。そんなお前に許可を出す理由はない無い!」


 予想通りだな。笑える位予想通りすぎて拍子抜けだ。要はメリット次第なんだろ?


「得するところがあればいいんですね。では、許可をくださるなら、無詠唱と同時発動の術を、書面にしてお渡しします。学院の更なる発展の助けになると思います。」


「それが正しいという保証がどこにある?特別配架に行く理由は何だ?特別というだけあって、そう簡単に許可は出せんのでな。」


「では、無詠唱と同時発動、必要ありませんか?」


「お前にできるなら、我にもできる。フランシスから聴いておるぞ、要はイメージであるとな。故に、お前に閲覧許可を出す必要はどこにも無い。自惚れるな小童が!」


 そのフランシスさんから聴いたことも、元々は俺が話したことじゃないか。まぁ、ネイアさんからの受け売りもあるがね。師匠?アレはお呼びでない。

 あーあ、こうなったら埒があかない。もういいや。スパッと諦めよう。


「そうですか。残念です。もし許可をくだされば、更にお伝えできることがあったのですが、もう必要ありませんね。これ以上私がここにいても目障りでしょう。失礼します。」


「何?まだ隠していることがあるのか?申せ。」


「申し上げたところで、あなたが閲覧許可をくれる保証はありませんし、私にメリットは何もありません。失礼します。」


「待たんか!!」


 待たんか!!と言われて待つわけはない。そのまま無視して部屋を出た。無視だ無視!フランンシス教授がオロオロしていたが、申し訳無い。


バーテクス図書館の特別配架、例え結界やら何やらで邪魔されても、ふち壊す。非常に残念だ。もっと粘ってもよかったが、あの部屋には1秒たりともいたくなかった。時間の無駄だ。さっさと学院を出よう。


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