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第30話


 約束の日の、13時より少し前。昨日の打合せどおり、学院の入口へ。






「そういえば、学院内にある結界は、なんですか?」


「結界が見えるんですか!?ええ、部外者を中に入れない為ですわ。もし破られたら、警備部隊が出動します。」


「厳重ですね。その厳重な学院に、私を入れてもよかったんですか?」


「この建物までなら大丈夫です。ここより先は結界を厳重に展開していますので、中に入るには特別な方法が必要になります。ここからは申し訳ありません、お伝えできませんわ。あと、これも申し訳ないのですが、今回の面談でマサツカさんが学院に敵意を持っていないかどうかも見させてもらいました。この方法も、お伝えできず申し訳ありません。ああ、勿論、明日はこの先に進んでもらいますので、大丈夫ですよ。」


「わかりました。こちらも訊きすぎてしまい失礼しました。」


「とんでもありません。では明日、私も楽しみにしています。よろしくお願いたします。」






 というやりとりが昨日あった。なので、部外者である俺は迎えを待つしかない。すると、13時ちょうど、フランシス教授のご到着だ。


「マサツカさん、お待たせしました。早速行きましょう。」


「フランシス教授、よろしくお願いします。」


 フランシス教授の案内について行く。昨日入った建物を、今度は階段を上がらずに真っすぐ進むと、その先にもドアが。なるほど。こうして中に入ることができるのか。ん、ドアにも結界があるようだが、フランシスさんが近づくと消えた。


「この結界、フランシスさんが近づくと消えるんですか?」


「え?この結界も見えるんですか?」


「結界も魔術ですからね。見えるというよりは、わかるという感じですね。」


「・・・どうか、学院秘密ということで、口外無用でお願いしますわ。」


 なんか申し訳無い。


 ドアを出て案内されたのは、広大な広場だった。晴れた青空が気持ちいい。そこには、制服を着こなし、杖だろうか?棒のような物を持った学生達が既に集まっていた。30人はいるだろうか。


「皆さん、これから魔術特論の授業を始めます。出席をとりますので、その場で待機してください。」


 フランシス教授が学生達のところに行き、出席をとる。その間、学生達を眺めよう。ここにいる学生達、言動が偉そうな、いかにも貴族っぽいおぼっちゃんから、平民だろうか、おとなしそうにしている学生まで、いろんな人がいるな。


「全員の出席を確認しました。今回の授業では、特別講師として傭兵のマサツカさんに来てもらいました。ではマサツカさん、よろしくお願いいたします。」


「はい。傭兵のマサツカといいます。私からは、より実践的な魔術を皆さんにお伝えできればと思います。よろしくお願いします。」


 こうして大勢の前で話すというのは、いやはや中々新鮮だな。


「フランシスせんせーい、なんなんですかこの人?私達と同年代みたいですし、強そうに見えないです。いつものように先生が教えてくださいよー。」


「何を言っているのですか?!マサツカさんは忙しい中時間を作って来てくれたんですよ。」


 集団の真ん前にいるあの生意気な学生の特徴は、金髪、男性、偉そうな口調、のっぽ。服装は、皆と同じ制服。俺をいやーな目で見てやがる。まあ、だいたいわかった。あと、その学生のとりまきだな。そいつらも俺を見て失笑してやがる。


「申し訳ありません。すぐ注意してきますね。」


「いえ、大丈夫です。時間も限られていますし、丁度いいので彼を使います。」


「おい、何かやってみろよ!俺はな、もう上級魔術を使えるんだ。お前みたいな」


 ヒュン   ボワッ   ボン


「おわっ!」


 石槍を発生させて、奴の足元の地面に突き刺し、火の玉を発生させて爆発。これで奴を学生の集団から切り離す。


「いきなり何しやがる!卑怯者!燃え上がれ、ファイヤ「遅い」っ!!・・・」


 杖を振りかざして攻撃しようとした、名も知らない生意気な学生の目の前に拳を寸止め。周囲がざわめきだした。


「皆さんは魔術をどのように学んできましたか?座学、必要ですね。では、実際に使いましたか?それはどのような場面で使いましたか?安全な場面で?最初はそれがいい。次はどうですか?戦いの場で使ったことは?実戦では詠唱する時間は無駄です。これから、皆さんがどんな進路を進むかわかりませんが、詠唱している間に猛獣や魔物は喉元に食らいついてきます。盗賊はナイフを投げ、矢を放ってきます。皆さんを本気で殺しにきます。今回は無詠唱と、それから」


 出血大サービスだ。学生達の前に、エクスプロージョン、ディザスターサイクロンを発生させる。更におまけに、アイシクルランスをスタンバイ。


「同時発動。未来ある皆さんへ、無詠唱と同時発動をお伝えします。」


 それでは・・・ありゃ、学生達、固まってる?フランシス教授・・・も固まっている。しまったな。やりすぎた。


 教授~、教授~、フランシス教授~。


「あ、あう。マサツカさん、今のは?」


「無詠唱で同時発動。昨日お見せしたアレです。」


「同時発動を上級と混ぜて?!あなた、何者ですか?こ、こんなの・・・」


「今は授業をしましょうか。コレ、実は単純なことなんです。要はイメージです。よければ教授もやってみてください。」


 ただ、実際にはかなりの鍛錬が必要だがね。


「皆さん、目を覚ましてください。いいですか。皆さんの体内には血が流れています。これと同じように、魔力も体内を巡っています。基本的なことですが、おさらいです。この魔力量には個人差がありますが、トレーニングにより増やせます。で、ここからが大切ですが、この魔力を体外に発現すること、これが魔術ですね。それにはイメージが大切です。このイメージをより具現化する為に詠唱があるのですが、詠唱がなくても念じれば発現できます。要は、無詠唱はイメージトレーニングです。体内の魔力を練り上げる、念じて具現化する。たったこれだけの単純なことです。」


「あ、あの。じゃあ今まで俺達が教わってきたのは・・・」


「楽だけど時間がかかる方法です。結局できればなんでもいいんですけどね。それこそ実際は、剣士等の前衛職が敵を食い止めている間に詠唱する、ことが多い。まぁ、いつもそれができればいいんですが、例えば前衛が全て倒された時、悠長に詠唱なんかしてられません。喋っている間に死にます。あっというまに肉塊です。あと、何らかの方法で声をだせなくなった時はどうでしょうか。その時点で魔術は使えません。余談ですが、ある程度体も鍛えて、魔術が使えなくても素手でも生き残れる位にはなっておいてほしいです。」


「はい、質問です。グレースといいます。無詠唱そのものは聞いたことがあります。ですが、それは過去の魔術技法であり、相当効率が悪いこと、難易度が高いことから主流ではないと教わっています。何故、今無詠唱なのでしょうか?」


 おお!昨日のグレースじゃないか。このクラスだったんだな。


「いい着眼点です。その通り、単純といいましたが、詠唱、この場合は魔術名を言うだけ、というのも含みますが、無しの場合かなり難しいです。イメージを具現化する為の集中力も必要ですね。でないと、無意識に思うだけで魔術を使えてしまったら、事故に繋がります。単純だけど難しい、これが無詠唱です。ですが、今無詠唱を教えるのは、それを補ってあまりあるメリットがあるからです。1つは早く魔術を使えるから実戦で使いやすいこと。もう1つは、複数の魔術を同時に使えることです。詠唱していては、同時発動はできないと思われます。さて、この中で何人の人が無詠唱で魔術を使えるようになるでしょうか?同時発動までたどり着ける人はいますか?始めは初級からで充分です。楽しみですね。」


 その後、ひたすらイメージトレーニングだ。体内を巡る魔力を練り上げるイメージ、それを例えば指先や発動させたい場所へ意識させ、いざ具現化。ほぼネイアさんの受け売りだ。

 まぁ今日明日では中々難しいだろうな。できて1人いるかどうか。だが、これを知っているだけで、今後の生き延びる確率が少しでも上がれば幸いだ。


 お、グレースは中々飲み込みが早そうだ。杖に魔力が集まっている。それにフランシス教授も、学生達にバレないようこっそりやっているが、いい感じ、あと少しだ。実は昨日、フランシス教授に伝授したら、初級魔術単発だが成功している。今教授がやろうとしているのは、中級魔術か。流石教員だけあって、いい線いっている。

あー、俺にちょっかいかけてきた金髪のっぽは、全然ダメだな。魔力がバラバラだ。何をイライラしてるんだか。

 あーあ、その金髪のっぽが俺に向かって来た。あと、その取り巻き連中もぞろぞろと。一人じゃ何もできないのか。


「お前、傭兵なんだよな。ランクは?出自は?」


「Fです。出自?貴族じゃないので、平民といったところですね。」


「なんだよお前!傭兵の最低ランクじゃねぇか!しかも下賤な平民か!おい皆、こいつは最低のFランクだ!さっきのも何かインチキしたに決まっている!この嘘つき野郎め!お前にできて俺にできないことがあるか!ここで俺様に謝罪しろ!」


 大声出して、ダサ。ダサすぎる。なんだこいつ?何様のつもりだ?


「何を言っているんですか?!マサツカさんは嘘つきではありません!謝るのはあなたです!」


「先生、Fランクの言うことを信じるんですか?俺の出自は知っているでしょう?なんなら、このFランクが俺を侮辱したって、父上に言いつけてもいいんですよ。」


「少なくともこの学院では、出自やランクは関係ありませんわ。」


「いくら先生といえど、俺の家系の「なぁ、もういいだろ。」なんだと!」


「お前、体内の魔力量はそこそこ多いようだ。杖の先端でいい、そこに魔力を全て集めろ。そしたら、俺を殺す気で、そこから火の玉でも出してみろ。当然、詠唱するなよ。詠唱する代わりに念じてみろ。」


「生意気な!俺に指図するな!」


「いいからやってみろ。ほら、俺はここにいるぞ。」


「クソが!殺してやるよ!」


 それから、奴は俺に杖の先端を指し向けている。まぁ、頑張れや。





「やった!小さいけど、できました!アクアショットです!」


 終わりの時間が近づいた頃、1人だけ、できたようだ。お、できたのはグレースじゃないか。この短時間でできるとは、かなり優秀だな。


「なんだと!平民の分際で!」


「だからさ、学院では平民とか貴族とか関係ないんだろ?お前の言葉通りなら、平民ができるなら当然お前もできる筈だ。」


「うるさいうるさい!生意気なーーー!父上に言いつけてやるから覚悟しろ!」



 その後、授業終了後も金髪のっぽは延々と俺に対して罵声を浴びせかけてきた。メンドクサイ。あんな奴にかける言葉は無い。残念だが、今日は事故に遭ったとでも思っておこう。


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