第27話
パチパチッ パチパチッ パァン パチ パチ
漆黒の闇の中、橙色の穏やかな火が、俺に極上の休息を与えてくれる。火だけじゃない、この静かな暗闇も、焚火をより鮮やかに演出する重要な舞台の役割を果たしている。
時々薪が爆ぜる音が、なんとも心地いい。いいねぇ。何で焚火って、こんなに落ち着くのだろう。元の世界に帰ったら、久中さんとこうして焚火を囲って・・・。
「フン!中々やるではないか!我は中で休むからな。このまま気を抜くでないぞ!」
夜営の準備。テントを張り、中に寝具を入れて、火をおこす。食事は、ウェスターさんがレクトン男爵の為に何か旨そうなスープを作ったり肉を焼いたりしている。俺は、毎度ながら少食、どころか食べなくても大丈夫だ。だが、食べない人間なんて怪しまれる。用意しておいた干し肉を一口。うむ、美味くない。次から燻製にしよう。
俺の体って、つくづく人間離れ、いや、生き物離れしてるよな。大気中の空気から水分補給したり日光やら魔素やらを養分にしたり。なんなら、ウェスターさんの料理の香りを取り込んで・・・おおお!めっちゃ美味い!食わなくてもいいけど、美味い物はいいよなー!香りだけで満腹!いや、嘘だ。食えるならやっぱり食いたい。
あとは、風呂があれば。流石に貴族の夜営といえど、風呂までは用意できないようだ。
「マサツカ様、お疲れ様です。旦那様は食事を終え、テントの中でお休みです。私達は、交代で見張りを行います。」
「わかりました。順番はどうしましょうか。体力には自信があるので、なんなら私が寝ずの番でも大丈夫ですよ。」
「そういうわけにはいきません。明日も護衛は続きます。休める時に休むのも、傭兵の仕事ではありませんか?」
「これは参りました。おっしゃるとおりです。ところで、流石に風呂はないですよね?休憩の間、風呂にでも、と思いましたが。」
「お気持ちはわかりますが、流石に無いですね。大貴族の旅団ともなれば用意できるかもしれませんが。入浴中に襲撃があった場合、対応できませんからな。いや、マサツカ様の実力なら、入浴中でも問題なさそうですな。とにかく、風呂は無いのです。申し訳ありません。」
「いえいえ、こちらが無理を言っているので。いえね、この前マケニアという街で、龍の目覚めという宿に立ち寄りました。そこの風呂がもう最高だったので、ふと思いだしまして。」
「ほう、マサツカ様も風呂好きなのですね。実は、私も、そして旦那様も大の風呂好きでして。これは寄らないわけにはいきませんな。」
「是非とも、王都での仕事が終わったら、帰り際に寄ってみてください。最高の気分を堪能できますよ。」
「いいことを聴きました。ありがとうございます。いい話をいただいたところで、見張りの順番なのですが・・・ 」
話合いの結果、見張りの順番はウェスターさんからとなった。ウェスターさんが見張っている時は特に襲撃も無かった。で、俺の番の時だが、何かないかと広範囲に注意を向けていたが、魔物や盗賊の襲撃もなかった。トレーニングも兼ねて、周りに魔術障壁も張ってみたが、杞憂に終わった。少々拍子抜けだが、何もないならそれが良い。焚火の音をバックミュージックにして、無事に夜が明けていった。
そして、輝く朝日を迎え、明るい内に進み、暗くなれば休むという行程を何度か繰り返す内に、本当に何事も無く、俺達は王都へたどり着いた。途中、レクトンは相変わらずふてぶてしかったが、ウェスターさんとは道中色々語ることができて、総じて良い旅だった。
「ほら、サインしてやったぞ。これで終わりだ。さっさと立ち去れ。」
レクトンのおっさん、最初から最後までこれだ。本当にふてこいな。それに比べて、
「無事に辿り着けたのも、マサツカ様のおかげです。この度は本当にありがとうございました。また縁がありましたら、是非とも一緒に旅をしましょう。」
ウェスターさんはよくできた人だ。
二人とはここで分かれて、依頼完了の報告と報酬を得る為に傭兵ギルドへ向かう。
王都クレイバは、レンガ造りがメインの街で、どこかアカデミックな、ヨーロッパのような綺麗な風景の街だ。行き交うのは、傭兵らしき人に、あれは学生か?エルフか?色んな種族に、職業の人が行き来している。
えーと、まずは傭兵ギルドへ。中は、おー、何というか、学校の図書館みたいだな。酒場があるわけではなく、壁には本棚がびっしり並んでいる。
「失礼。依頼を完了したので報告に来た。問題無ければ報酬をいただきたい。」
「かしこまりました。サインを拝見します。・・・・・・はい、確かに。では、報酬を受け取ってください。」
虫眼鏡のような道具でサインを見ていたが、どうやら問題は無かったようだ。こうしてギルドの受付ではスムーズに報酬を受け取ることができた。さて、時刻はまだ昼を過ぎたところ。本来の目的である、図書館と王城跡地のことでも調べてみるか。
「あー、すまないが、『世界の全てがここに』だったかな?その図書館はどこにある?そこに行きたいんだが。」
「その図書館でしたら、王城近くにありますね。ここからだと少々遠いので、馬車を利用することをおすすめします。ただ、一般の方が利用できるのは図書館の一部なので、全てを閲覧するには図書館、学院又は王城の関係者の許可が必要です。」
ギルドの受付の人、魔人族かな?丁寧におしえてくれて助かる。さて、許可が必要なのか。面倒だが仕方ない。幸い、ではないが、学院も王城と図書館の近くにあるようだ。こういうのを一極集中と言うんだろうな。図書館に、ヒサナカさんに繋がる手がかりがあればいいんだが。
まぁ、宿も探さなければならないし、馬車がいいって言われたけどせっかくだ、焦る気も無いわけではないが、観光しながら図書館を目指すとしよう。




