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第24話


「わー!かあちゃん、本当に治ったの!マサツカさん、ありがとう!」


 よーしよしよし。スキャンでも異常は無しだ。


「礼には及ばん。その代わり、さっきの条件、わかってるよな?」


「えーっと、お金は無いよ・・・」


「ちげーよ。金はいらねぇ。このこと、絶対誰にも言うな。書いて示しても駄目だ。ここだけの秘密にしろ。それが条件だ。トムにも念押ししておけよ。いいな。」


「わかったよ。でも、どうして?」


「テッド、マサツカさんにも色々事情があるのよ。詮索しては駄目。マサツカさん、この度は本当にありがとうございました。あなたは命の恩人です。」


 そうそう、俺にも色々事情がある。察しがいいじゃないか。よきよき。明日には出発だからな。あんましよからぬ輩に目をつけられたくない。


「まぁ、そういうこった。明日にも俺はこの街を出る。そうだ、宿を探していた。どこかいい宿は知らないか?」


「それなら、さっきの傭兵ギルドの周りにいくつか宿があるよ。ギルド周りなら、どこもいい宿って聞いたことがあるから、そこで探してみればいいんじゃないかな?」


 オーケーオーケー。なら、ギルドへ戻るか。


「本当にありがとうございました。この恩はいつかどこかで、必ずお返しします。」


「あー、まぁ、気持ちだけもらっとく。さっきも言ったとおり、俺は明日にも旅立つから、もう会わないかもしれない。病気に気をつけて生きろよ。」


「では、いつかまたこの街、カルストに来ることがあれば、また寄ってください。私も元気になりましたので、私達家族で、ささやかではありますがおもてなしいたします。」


「そうか、ありがとう。その時は期待して顔を出そう。じゃあな。」


「うん!マサツカさん、バイバーイ!」


 そうして、ギギィ、と、この古めかしい家を出る。んー、ちょいとでしゃばりすぎたか?まぁ、旅の途中の一幕、これくらいは許されるだろうよ。




『お前は強くなった。まぁまぁ及第点だ。だがな、その力、あまり見せびらかすなよ。欲深い人間がお前を利用しようとたかって来やがるからな。』




 ヴァルディスの野郎が、そんなこと言ってたな。まぁ、今回は大目に見てくれや、クソ師匠よ。





 さてさて、やって参りました、ギルド前。

 ギルド前にはさっきと同じ、いやそれ以上の人だかりができてるな。宝だの、素材だの、あー、相変わらずガヤガヤと。人間というのは欲深いことで。探索解禁は早くても明日、いや、届出やら騎士の調査やら何やらで、明日も無理なのか?どうでもいいや。


 俺はあんまし興味無いな。強い奴と闘えるってんなら多少は興味あるが、今は先を急ぎたい。だけど、ゆっくり寝たい。よし、宿探しだ。



 色々見てまわったが、可もなく不可も無く、夕食付きの宿を見つけた。朝食無しだから安価だ。俺、この体になってからはますます少食なんだよな。何なら食わなくてもいいし。省エネってやつだ。食わなくても太陽光や漂う?魔力を取り込んでいればなんとかなる。あれ?もう俺人間じゃねぇな。いや、心は人間である筈。美味い物は別腹、食べることは人としての営みだ!故に俺は人間だ!



 宿の部屋は、6畳位の広さにベッドが1つ。シンプルだな。風呂は無い。追加料金を支払えばお湯がもらえるようだが、どうせなら風呂がいい。風呂が無いなら、魔術で済まそう。


<クリーン> <メンテナンス>


 体の周りを柔らかい風が吹き、体や服に付いた汚れや埃が取れていくのがわかる。クリーンは通常であれば軽い掃除に使えたりする程度だが、使い込んでいけばほぼ全身を綺麗にできる。素晴らしい。

 それに、メンテナンスという魔術は機械部分だけでなく、生身の部分の疲労もチェックしてくれて、整える効果がある。俺が自分で編み出した。こう、自分をリフレッシュするイメージ?デトックス?これを突き詰めたらできるようになった。

 これで肩こりも無いし、迷宮内でも疲労が各段に減る。便利すぎるな。


 余談はここまで。ちょっくら情報収集へ。1階の食堂へ行ってみようか。


 食堂は、ボチボチと賑わっていた。夕食はパンにスープにサラダ、そしてシチューのような、煮込み料理。味はまぁまぁ。マケニアで食った料理と比べるのは酷だが、普通にいける。ちなみに、肉は鶏肉だそうだ。ビーフシチューならぬチキンシチューだな。トマトの風味が聞いている。訂正しよう。チキンのトマト煮込みだな。


 飯を終えたら、そうだな、隣のテーブルに男女4人組のグループがいるな。ベルゴアについて何か知ってるだろうか?


「お食事中失礼します。私は傭兵のマサツカといいます。実は、傭兵業の傍ら古代史の研究をしてまして。ベルゴアなら何か古代の手がかりがあるかと思ったのですが、何かご存じありませんか?例えば、そういった情報が集まっている場所とか?」


「お、おう!いきなりびっくりしたぞ。ベルゴア、というより古代史のことか?」


「そうです。勿論、タダとはいいません。ささやかではありますが、ドリンク代にはなりますかね。お受け取りください。」


 そういって、俺に応対した男にそっと銀貨1枚を握らせる。デュラハンの討伐でガッポリ儲けたから、俺の懐はホクホク温かい。情報はタダじゃない。これは必要経費だ。


「や、こんなには受け取れない!俺達もたいしたことは知らないが、やっぱりベルゴアの王都、クレイバに行けば何かあるかもな。とてつもなくデカい図書館があるし。」


 こんなには受け取れないと言いつつ、口がまろやかになってないかい?まぁ、話してくれればなんでもいい。さぁ、あらいざらい吐き出せ、吐き出すんだ!


「図書館ですか?」


「そ!なんでも、『世界の全てがここに』をテーマにしているみたいだよ!」


 そのグループの女性が答えてくれた。ほう、世界の全て、か。


「だが、全てが一般公開されているわけでは無いらしい。研究者向けにしか公開していなかったりする場所もあるようだ。誰かの紹介が必要かもしれん。」


 なるほどな。

「見せてください。」

「はいどーぞー。」

 とはならないか。


「あとは、王城跡地とかかな?」


「跡地?」


「魔導国の王都は今のクレイバだけど、昔はその跡地にあったみたい。もう何年も前だけどね。跡地っていうか、あれはもう遺跡だね。王城と言われてるけど、本当に王城かわからないみたいだし。」


 古代の遺跡というわけか。何かあるかも。


「その跡地に興味があります。どこにあるか教えてもらえませんか?」


「クレイバの南西にあるよ。学生達も授業で見に行くことが多いから、クレイバに行ったらすぐわかると思うよ。」


 よしよし。中々面白そうなことがわかった。さっきの話にあった図書館なら、元の世界に戻る魔術とかあるかもしれない。それに、遺跡というのも気になるな。このグループからは、ここらへんで充分だろう。あまり邪魔しても悪い。


「興味深いことを知ることができました。皆さん、ありがとうございます。」


「ああ、礼を言われることでは。あと、この銀貨だが、これは流石にもらい過ぎだ。」


「いえいえ、構いませんよ。これもご縁です。受け取ってくださいな。」


「そうかい、そこまで言うなら。いい発見があることを祈るよ。」


 ありがとよ!それじゃ、次は外の酒場でも行ってみるか。気のいい奴らだったじゃないか。銀貨1枚、本当に気を遣わせたかもな。メンゴメンゴ。




 食堂で話を聴いた後、ギルドに併設された酒場へ行ってみた。これがまー、賑やかだこと。ワイワイガヤガヤと新迷宮の話題で持ち切りだったが、おもしろそうな話も聴けた。

 例えば、

・魔導国は過去に一度滅びている。

・初代の魔導国王、今でいう魔王は不老不死であり、現代も生きて裏で実権を握っている。


 過去に滅びた、というのはあるかもしれないな。原因は何だ?初代魔王が不老不死、これは無いんじゃないか?都市伝説レベルだな。完全に眉唾ものだろう。

 だが、火の無い所に煙はたたないという。調べられたら調べてみようか。初代とは言わなくても、魔王には時空を超える術があったりするかもしれないな。

 元の世界にもどれそうな手がかりはありそうだが、残念だが久中さんについての手がかりは皆無だ。何もない。ここで焦っても仕方ないが、どうしても気になってしまう。ああ、今頃どこで何を?無事だろうか?


 考えてたら疲れた。今日はここまでにしよう。もう一度クリーンをかけて、もう寝よう。


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