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第22話

 この森は、静かだ。不気味な位、静かだ。

 普通は夜でも動物の気配位ありそうなものだが・・・しぃーん、と静まりかえっている。月の光も差し込まず、真っ暗だ。なるほど、町の住人達が言うのもわかる。これは危険だな。なんらかの手段で明かりを準備し、かつ戦闘に備えるとなると、難易度が跳ね上がる。


 ザッ、ザッ、ザッ


 落ち葉を踏みしめて、ライトで照らしつつ進む。人の気配もない。聞こえるのは、俺が落ち葉を踏みしめる音だけ。


 ザッ、ザッ、ザッ


 草や枝をかきわけ、どれ位進んだだろうか。ふいに、開けた広場のような所に辿り着いた。空を遮る木々がないから、月の光が差し込み、若干ではあるが見通しがよくなった。

 ・・・んーー、なんかいるな。見えにくいし、ボワッとだが、黒い影が現れたり消えたり。こいつが、住人達が言っていたアンデッドか。

 この世界でのアンデッドというのは、元の世界で言うところの幽霊だな。ただ、この世界では死んだ誰々の魂というものではなく、不特定の恨み、憎しみ、未練といったものが魔術的要素を得て、レイスというようなエネルギー体として出現したり、スケルトンのように物体を得る、そう考えられている。ただ、スケルトンといっても、人や他の動物の骨は脆くて動けないからか、土や石が骨の形をとって現れている。骨型のゴーレムといった方が近い。


 となると、現れたり消えたりしているコイツは、レイスのようなエネルギー体だな。そして、少々デカくないか、コイツ?気配が明らかに人でもなければ生き物でもないが、念の為ダメージを与えない光球を、そいつにぶつけてみよう。そぉら、よっと。


「ゥゥォォオオオ・・・」


 命中。お、こっちに気づいたな。地獄の底から響くようなおどろおどろしい声、やっぱり生者じゃないな。ここで倒しちまってもいいが、一応なんなのか確認しておこう。

 そいつはゆっくりと、フワフワしながらこっちに来る。やがて俺の前に、首無し馬に乗った首無しの騎士が現れた。あーわかった。コイツ、デュラハンだな。前に潜った迷宮でも見かけた。地上で見かけるアンデッドはレイスかスケルトンが多いから、デュラハンは珍しい。まるで真っ黒い墨のような黒い靄でできたデュラハンが、俺を見下してやがる。や、首無いから見下すも何も無いんだがな、なんか気に食わん。なら、やることは一つ。


 エンチャント、ホーリーレイからの、スラッシュ


「オオオォォォ・・・」


 アイテムバッグから大鎌を取り出し、光を付与して一閃。手に持ったデカい槍で俺を突き刺そうとする前に、これで終わり。さて、消えゆくデュラハンがいたところには、あったあった、黒くて丸い石。これ、ギルドで売れないか?アンデッドを倒したら出て来る、こいつらの核みたいな物。結局こいつらも、恨みや憎しみだけじゃ化けて出られないから、こうやって魔力と結びついて?いるのかは知らんが、倒すと魔力の塊みたいなのを落とすわけだ。これが通称魔石って呼ばれるんだな。縁起が悪そうだが、一応持って帰ろ。

 ちなみに、よく出て来て討伐依頼があるブヨブヨのスライム、あれも倒すと魔石、といか核?みたいな物を残すんだよな。討伐証明代わりにギルドに出すけど、スライムのそれは魔力の塊というか、残りカスみたいな物で、あんましエネルギーにならないみたいだ。


 ・・・なんだ、この広場、デュラハンの楽園か?1体いればなんとやら。いつの間にやらうようよとデュラハンだらけじゃねぇか。

 んー、俺は優しいからな。オイタせずにどっか行くなら手出しはしない。さぁ、さっさとどっかに行きな!


 シッ シッ シッ


 どっか行け、そう念じて手で追い払う仕草をしてやるが、一向に立ち去る気配が無い。


 ・・・ふん、こっちが慈悲見せてんのに、馬鹿なのかな。こいつら皆こっちに来やがる。ゆらゆら、ゆらゆらと。時折不気味な音やら声を出して、気味が悪い、気分も悪い。よーし、ひと暴れしよう。


 槍で突き刺そうとこっちに向かってくる奴、魔術かなんかを打とうとする奴、こいつら纏めて、大鎌で切り裂く。自分を中心に回転させ、サクサクと!遠くにいる奴は光の斬撃で、シュバッっと!

 よしよし、よーし!全部倒したな。他愛も無い。さ、魔石を回収。


 と、忘れちゃいけない、今回はあの小僧の父親捜しだ。さーて、どこかなどこかな?


「ギャーーーー!」


 悲鳴!余裕ぶっこいて油断した。もしや手遅れか?!


 悲鳴がした方向へ、ライトを使いながら急いで駆け抜けた。すると


「ハッ、ハッ、ハッ、た、たす、助けてくれーーー!」


 必死の形相の男が足を引きずりながら、向こうからやってきた。


「ギャーーー!お願いしますお願いします殺さないで命だけはー!」


「オラ!落ち着け。俺は普通の人間だ。お前は生きてる人か?ん?」


「生きてます生きてます!助けてください!」


 あー、よっぽど怖い目にあったんだな。ビビり過ぎだろ、という位、とんでもない顔をしている。


「俺はあんたを助けにきた。あんたの子どもから、戻らないから助けてほしいとな。」


「そうだったんですね。ありがとうございます。ああ!早く逃げないと!殺されます!」


 その男が来た方角から、ゆらゆらと、これまたデュラハンが現れた。あれ?デュラハンってこんなにワラワラ出てくるっけ?


 とりあえず、ホーリーレイ。今度は普通に光のレーザーを打つ。


「ゥオオォォォ・・・」


 命中し、光に包まれて消えていくデュラハン。はい、魔石ゲット。迷宮の時もそうだったが、アンデッドってのはなんでこう、毎回毎回不気味な声出すかね。せっかく浄化の光っぽくしたのに、後味が悪い。


 まぁそれはいいや。とりあえずこの男を連れて帰ろう。


「おし、とりあえず帰るぞ。ついて来い。子どもが心配してたぜ。あと、何があった?帰りながら聴く。」


「こ、こ、この度は本当にありがとうございます。死ぬかと思いました。足を怪我してて、ゆっくりになりますが、お話しします。」


 あ、そうだった。足引きずってたな。


 リザレクト。


「よし。もう痛みはないか?」


「え、え!?はい!もうなんともありません!え、どうやったんですか?」


「秘密だ。そんなことより、早く帰るぞ。あと、他に逃げ遅れた奴とかはいないな?」


 上級の治癒魔術だ。使える人は少ないらしいから、秘密にしとこう。後々良からぬ輩が出てきても面倒だ。


「私1人で来ましたので、他にはいないと思います。」


「わかった。」


 この森を抜けるまでにこの男、名前はトム、こいつから今回のいきさつを聞いた。

なんでも、狩りの為に森に入ったはいいが、今日は全然獲物が捕れず、いつもは入らないような深い所にまで入り込んだ。すると、ある地点で地面が滑落し、巻き込まれて転落して気を失った。トムが気が付いた時には日が落ちようとしており周りは暗くなっていた。その滑落したところには洞窟のような穴が開いていたようだ。


 で、完全に日が落ちる前に帰らなければ、と滑落の時に怪我をした足をかばいながらなんとか這い上がった時には既に日が暮れて真っ暗に。這い上がった直後、真っ暗で帰り道がわからなくなったトムの耳に、先程自分がすべり落ちた所から、地獄の底の亡者のような不気味な声がしたから、怖くなって慌てて歩いたが、道に迷ってしまいアンデッドのデュラハンに追いつかれそうになった、と。


「なあトムさんよ。その洞窟みたいなのって、今までに聞いたことはあるのか?」


「いえ、聞いたことがありません。」


「なら、未発見の迷宮かもしれないな。さっきの、デュラハンっていうんだけどさ、そいつがそっから出てきたんだろ?」


「はっきり見たわけではないですが、おそらくそうです。め、迷宮ですか?だとしたら、国に報告しないと!」


 なんでも、未発見の迷宮が発見された場合は、国に報告義務があるそうだ。この場合、町の守衛でも傭兵ギルドを通じて報告してもいいが、とにかく早く報告して、国の騎士や傭兵ギルドが調査を行えるようにしないといけないんだと。


 迷宮内はどういうわけか高価なマジックアイテムやら武具やらが落ちているらしく、それを得る為に傭兵達が一攫千金狙いで入ることが多いが、中にいる魔物は強いことが多く、凶悪な罠もある。どんな規模なのか、どのような魔物がいるか、一定の調査が行われるんだと。調査の過程で見つかった物は、傭兵なら発見した傭兵が、国の騎士が発見した場合は国の物になるそうだ。

 まあ大抵の場合、最深部まで到達できないから、ある一定の階層まで調査したら、国の騎士は引き上げるそうだ。で、後は傭兵達の新しい狩場になるんだと。


「まずは町に帰るぞ。迷宮の報告は、それからだ。子どもにも会ってやれ。」


「はい。本当にありがとうございます。」


 よし。後は無事に町へ戻れば依頼は終わりだ。



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