第21話
「じゃあね!またおいでよ!絶対だよ!」
「善処しよう。メリッサ、ありがとう。世話になったな。」
食料をいくつか買い込んで、いざ出発。見送りの言葉とともに、マケニアの門をくぐった。
名残惜しいが、また会えると信じて。さて、マケニアを出発してしばらくたった。このまま走っていってもいいが、ちょっと試したいことがある。
まず、風の魔術で体を浮かせる。風だと、ふわふわと浮いた状態となるな。では、重力ならどうだ?
結果、風と同じく体は浮く。では、前に進むのはどうだ。風で浮いて風で前進する、重力で浮いて風で前進する。結果、風で浮いて風で前進する方が早い、というかコントロールしやすい。
と、いうわけで、風の魔術で空を飛んで進んでみる。これが大成功!楽すぎる。スイスイ進むな。この方法、機会は無いだろうが、多分宇宙空間では使えないんだろうな。空気ないし。その場合は、目的地に重力を発生させて引っ張ってもらう。これを繰り返すしかないか。それで合ってるか?試すこともなさそうだし、知らんな。
この飛行法、スピードもかなり出せる。風が俺を運んでいるようだ!これなら馬車はいらなかったな!正解だ!このままグングン進もう。だが、俺は慎重だから、低空飛行だ。高いところを飛んでいた場合、見た人が驚いて通報することも有り得るからな。俺はそこんとこも考えることができるのさ。やー、できる奴は違うね。
そんなこんなで、めっちゃぶっ飛ばした。爽快爽快。それで、もうすぐ夕暮れ。どれくらい進んだだろうか。さてさて。何か目印は、と。
あー、なんか町っぽいのが見えるな。丁度いい。そこで宿をとるか。このまま飛んで行ったらパニックになるから、ちょっと手前でストップ、そして走る。
「旅の者、すまんが身分を証する者はあるか?」
マケニア程ではないが、そこそこの規模の町だな。で、出入り口には見張りがいる。仕事、お疲れ様だな。
「傭兵ギルドのランクカードだ。これでいいか。」
「うむ、大丈夫だ。ようこそカルストへ。もう日が暮れる。どこかで宿をとって休息するとよい。」
「ああ、ありがとう。そうさせてもらおう。」
さーてさて。ここはカルストか。確か、魔導国ベルゴアの近くだった筈。おーー!我ながら素晴らしい。もうここまで来たか。普通の馬車が早くて時速30㎞としたら、俺は時速100㎞以上は出してたんじゃなかろうか。もちろん、誰かと衝突するなんてことはなかった。それは特に気を付けたからな。
一日ぶっとばした俺にご褒美を。どこかで宿をとりましょうかね。宿を探してうろうろと。このカルスト、魔導国が近いからか、魔人族っぽい人?肌が赤っぽかったり青っぽかったり、人間族とは違う肌の色の人をちょくちょく見かけるな。
と、うろうろしていたら気になる会話が耳に入った。
「離せよ!早くいかないと!」
「もう外は暗くなる!明日、ギルドから捜索隊を出すから、それまで待て。」
「それじゃあ間に合わないよ!今からでも俺が助けに行かないと!」
これは、何やらトラブルの匂いがするな。どれどれ、口を挟むか。
「穏やかじゃないな。何があった?」
「父ちゃんが狩りに、森に行ったまま帰ってこないんだ。暗くなるとアンデッドが出るかもしんないから、助けにいかないと。」
「お前が行っても何もできないだろうが!いいからおとなしく明日を待て!」
「なぁ、それってギルドから捜索依頼とか出るのか?」
ギルドから依頼が出てるなら、俺が受けてしまえば金儲けできるんじゃね?ふとそう思って訊いてみた。
「ああ、もう依頼は出して参加メンバーを募ってる。だが、実際に動くのは明日だ。外はもう暗くなるからな。」
「なるほど。そこで、だ。今から俺がその依頼を受けて、その子の父親を救出してくるってのはできるのか?」
「何を馬鹿な?!この辺りは暗くなるとアンデッドが出て危険だ。おとなしく明日を待て。」
「俺なら大丈夫だ。早くギルドに案内しろ。じゃないと、その子の父親が死ぬかもしれないだろ。」
「そこまで言うなら、ここをまっすぐ行ったらギルドだ。手続きしてから行くといい。」
「にいちゃん、父ちゃんを助けてくれるの?」
「ああ、今から行くさ。だが、なるべく善処するが、助かるかどうかはわからん。」
「それでもお願いします。少ないけど、お金も払います。一人銀貨1枚だけど、これでなんとか!」
「オーケー、それで充分だ。で、その森というのはどこにある?」
「この町を出て、道なりに行くと森の入口があるんだ。草がはえてない道だからすぐにわかると思う。」
「わかった。すぐ行こう。」
こういう、必死でけなげな小僧は嫌いじゃないぜ。銀貨1枚、充分だ。これで今日の宿代位にはなろうよ。
はい、訪れましたはカルストの傭兵ギルド。赤レンガ造りの建物だ。場所によって、ギルドの造りや雰囲気ってのは全然違うな。
中に入れば、依頼完了の手続きやら何やらでごった返してる。あー、酒場も中にあるのか。早速飲んでる奴もいる。
人混みをかき分け、えーと、依頼受注窓口へ。
「忙しいところすまんが、急ぎで子どもの父親の捜索依頼を受注したい。早く!」
「は、はい!えーと・・・ありました。明日の日の出と同時に出発する件ですね。今参加者を募集しているところです。ランクカードはお持ちですか?」
「ああ、これだ。」
急いでいた俺が怖かったのだろうか。少々慌てている受付嬢にランクカードを渡した。
「Fランク、マサツカさんですね。わかりました。明日の日の出頃にギルド前に来てください。」
「いや、それでは間に合わないかもしれない。今すぐ出る。」
「ちょっと待ってください!Fランクのマサツカさんが今から行くには危険です!」
「俺なら大丈夫だ。」
「危険です!やめてください!」
まったく、ガヤガヤと賑やかで親切なことで。
自信はあるが、過信はしない。止めようとする受付嬢を無視して、森へダッシュ。
暗くなってきたので、ライトの魔術で照らしながら、言われたとおり草が生えていない道を進むと、あー、森が見えてきた。この森だな。
さあ、さっさと終わらせよう。




