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第20話


 ふぅ・・・。意外とエネルギーを使った。気難しいと聞いていたが、その想定以上に圧が強かったな。そして、あの本、あの文字。この世界に来てから、この世界の文字の意味は不思議と見ただけで頭に入ってくるし、俺が書いた文字は不思議とこの世界の文字になった。だが、わかる。あれは違う。確実に俺がいた世界の文字だ。


「ちょっ、マサツカ君!すごいね!アマンダさんと喧嘩にならなかったね!」


「意外といい人だったぞ。言い過ぎだって。」


 メリッサはそう言ってくるが、大袈裟だと思う。大体、金額が高いだの、欲しい答えがなかっただので、客がいちゃもんでもつけたんじゃねぇか?


「まぁウチも、誰でも紹介するわけじゃないから、ウチからの客はそんな揉め事はないんやけど、それ以外でアマンダさんのとこに行った人は、エライ目にあったってよく聞くよ。」


 なんだ、ならメリッサ経由なら、ほぼ安全ってことじゃないか。

 しかしまぁ、あの師匠の、修行まがいのリンチ以上の苦行は無いと思っていたが、いやはや俺もまだまだ甘い。驕っていた、気を付けないとな。

 よし!次の目的地は決まった。魔導国へ行かないと。サナカは、一旦後回しにしよう。こういう臨機応変って大事だよな。


「なぁメリッサ、魔導国はどこにあるんだ?」


「え!そこから!?」


「あと、一応サナカってとこも。」


「あー、オーケイオーケイ。世間知らずなマサツカ君に、おしえてしんぜよう!」


「一言余計だ!・・・お願いします。」


「よろしい!まず、通称魔導国、正式な名前はベルゴアで、私が卒業した学園がある国なのだよ!場所は・・・」


 長いので省略。メリッサによると、魔術に優れた魔人族達の国で、研究機関や学園がある国だそうだ。色んな国や街に同様の研究機関や学園はあれど、魔導国のそれはレベルが違うのだそうだ。で、場所はここマケニアから北東にあるのだが、結構距離がある。


「で、サナカはジーン国にある街。食の都やらリゾート天国とか色々言われている、一度は行ってみたい街!ベルゴアの西にあるよ!ああ!ウチも美味しいもの食べたい!サナカのご飯は格別!」


「ああ、ありがとう。助かったよ。あー、ここからベルゴアまでは遠いんだな。」


「だね。馬車で行くか、ベルゴアの学園が運営している定期馬車に乗るのもありかな?入学希望者や学生は無料だけど、そうでなかったらそこそこかかるね。その2通りくらいかな?あ、先にサナカに行きたいんだっけ?」


「んー、いや、先にベルゴアに行く。その定期馬車を利用するにはどうすればいい?」


「マケニアに停留所があるから、そこで待っていればいいんだけど・・・来る日時は、大まかにしか決まっていないからね。待つしかないかな。」


 ふーん。馬車ね。シャトルバスならぬシャトル馬車というわけか。手がかりがない今は、そこに行くしかないな。どこにいけば馬車に乗れるんだろうか。


「なぁメリッサ、その馬車はどこに行けば乗れる?」


「ウチらがこの街に入ってきた入口の近くにあるよ。せっかくだし、案内しよっか?」


「ありがとう。お願いする。」


 メリッサの案内で、馬車の停留所の向かうことにした。そういえば、ここマケニアに来てから、ゆっくり街を見てまわる余裕がなかったな。今見てみると、広いメイン通りにはそこいらに露店が立ち並んでおり、賑わっている。お!あの店から旨そうな匂いがするな。一際大きな人だかりができている。ん!あっちの店は宝石か?綺麗な石が並んでるな。


「マサツカ君、どうよ!賑やかでいいでしょ!」


「ああ。これだけ賑やかだと、退屈しないな。」


「でしょー!なんなら、この街に住む?」


「ありがたい申し出だが、ひとまずベルゴアに行く。」


「むー。仕方ないな。また、戻ってきてよ。」


「ああ。また、ここに来れたらいいな。」


「約束だよ!そのときは、私はもっと成り上がってるから!」


「はは、成り上がってたら、忙しくてそうそう会えなくなるな。」


「マサツカ君と会うなら、他の用事はどこかへポイするよ!」


「いや、駄目だろそれ。・・・まぁ、気持ちは受け取っとく。」


「よし、それでよろしい!元気でいるんだよ!」


「はいはい。で、ここが停留所か?」


 他愛無い会話だ。だが、久しいな。やっぱり人間、誰かと話をして、わかりあって、ていうのが大事なんだ。で、街と外の境目の入口に来たわけだが、入った時には気が付かなかったが、中々デカい看板がある。そこに、時刻表のような物が書いてあった。


「そうそう。えーと、次は・・・明日朝8時になってるね。」


「明日か・・・・・・んー、なら、馬車に乗らず走っていった方が早いんじゃないか?」


「ちょ、何言ってるの?バカツカ、いやマサツカ君、やっぱりバカになったの?いくら君が強いといっても、無茶だよ。」


「ちょっとは隠そうな。俺でなかったらへこんじまうぜ。こう見えて、結構体力には自信がある。だからさ、地図とかあるか?大まかな場所だけでもわかれば、後はなんとかなる。」


 バカツカ、ねぇ。そりゃないでしょ。なかなか毒舌じゃねぇか。


「おおまかな場所の地図なら、傭兵ギルドに貼ってあるよ。というか・・・そんなに焦らなくても。」


「焦っているというか・・・急ぎたくはあるな。すまないが、俺にも色々ある。」


 そう。善は急げ、だ。それに、あと1日早ければ、なんて事がないともいいきれない。久中さんはどうなっているのか。ほとんど手がかりの無い中、あまりのんびりもしていられない。ホントは、観光とかしたいんだがな。


「わかった。深くは訊かない。だけど、馬車無しでなんてほんとに無謀だよ。ギルドで地図を見て、考え直したほうがいいと思うよ。」


 ああ、大丈夫。クソ師匠のとこにいる以上の無謀なんざ、そうそうないさ。さぁ、ギルドで地図でも見て来るか。


 で、傭兵ギルド到着。昨日、ギルドの前で揉め事起こしちまって、中に入るのはこれが初めてだ。うむ、昔の西部劇にでてきそうな、あの感じ。


「おい、あの黒い奴。昨日の・・・」


「ギルド前でやらかした、Fランクの・・・」


「俺、昨日見てたけど、あれでFランクとかありえねぇ。絶対ヤベェ奴だ。」


 おいおいおーーい。聞こえてんよ。なんだよなんだよ、この世界の人間は皆シャイだなー。


「マサツカ君、あれが地図。ベルゴアはここから北東にあるよ。で、その西にサナカがある。ベルゴアに行くには特に障害となるような場所は無くて、平原が続いているだけ。途中に小さな町や村が点在しているから、そこで宿をとったりする人もいるね。」


 ギルド内の壁にかかっている地図だ。そういえばフィネアのギルドにもあったな。ほうほう。結局は距離の問題だな。OK。なら楽勝だな。


「楽勝とか思わないでよ。マケニアとベルゴアの中間地点周辺は、スライムや猛獣が出ることも多いからね。なるべく夜営はしない方がいいよ。どう?やっぱり明日の馬車に乗ったら?」


「ご心配ありがとうメリッサ君。心配には及ばない。俺なら楽勝だ。よって、今から出ようと思う。」


「うわぁ・・・頑固者め。」


「お褒めに預り光悦至極、光栄であります。」


 ふむふむ。メリッサ君もようやくわかってきたじゃないか。そう、俺は頑固でひねくれ者なのさ。


「褒めてないって!もー、どうなっても知らないよ!」


「ああ。心配してくれてありがとうな。俺なら大丈夫。だからさ、また会おうぜ。」


「て、ええ!もう行くの?」


「もう行くぜ。それに、このギルドでの俺の評判は良くないらしいからな。」


「ああ、昨日の。あれはまぁ、マサツカ君は悪くないよ。それじゃ、出入り口までは送るよ。メリッサ様のお見送り、感謝するがよい。」


「よろしい。見送られよう。」


 正直、焦っている感は否めないが、次の行き先が決まった。マケニアにいたのは短かったが、メリッサ達には色々と世話になったな。約束、はしていないが、また立ち寄ろう。

 こうして、早々にマケニアを旅立つことになった。

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