第2話
「ハッ!」
目が覚めた。手足異常なーし。深呼吸、スー、ハーッ。よし、問題無し。落ち着いた。いや、無理だ。ほっぺをつねる、痛い。痛覚正常。現実だ。ほっぺをつねるのは定番だよね。
俺は大上真司。高校2年生。父母は行方不明。しかし、愛情たっぷりの里親に育てられた。ありがとう。直前の記憶は・・・久中さんが変な、怪しい黒い人影に攫われそうになり、とびかかった。俺の記憶はそこまで。気が付いたら、ここにいた。そして、久中さんはいない。俺一人だ。
ここは、どこだ?久中さんはどこにいる?あの人影は?時間は?
夕焼けが見えた。だが、まさに今、その夕焼けが沈もうとしている。暗くなる。
一瞬、さっき起きたことは夢で、今からまた終業式をして、久中さんに告白するチャンスが、んな訳ないか。
さて、そんな混乱だらけに俺にわかる、1つだけ、明らかに異様な点がある。それは、なんと周りの景色が墓場だったのある。墓石だらけである。西洋式だろうか、日本のものとは違う、何やら文字が刻まれた石が、周りに数多く配置されている。
なんの冗談だ?俺は死んで、地獄にでも来ちまったのか?ほっぺをつねる。うん、ちゃんと痛い。俺は生きている。もっかい言おう。ほっぺつねるのは定番だよね。生きていることはわかったが、なんだここは?周りが墓石だらけって、不気味すぎるだろ。
久中さんも探さないといけないし、こんなところに一瞬たりともいたくない。出口を探そうと歩き出したそのとき。
シュ
俺のすぐ後ろで、鋭く冷たい風が吹いた。
やー、まさかね。冗談きついよ世の中の皆さん。きっと何もいない、何も見えない。その期待を一身に背負って後ろを振り向くと、
ヴォォォォ
鈍く輝く大鎌を振り下ろした、ガイコツが、いや、死神が、いた。その死神は、目の奥をギラギラと赤く光らせ、俺を視界に捉えていた。
俺は逃げた。走って逃げた。全力疾走、疾風迅雷。殺される殺される!アレ、明らかに俺を狙ってたな。なんだよアレ!?出口どこ!?誰か助けてくれ!!俺ではどうしようもない。とにかく逃げないと、走れ、動け俺の足!
わからない。どれほどの時間逃げ回ったのかわからない。周りは本当に暗くなってしまった。真っ暗で何も見えない。闇の中だ。だんだん寒くなってきた。暗闇と冷えた空気が、俺を恐怖のどん底へ突き落す。怖い、怖すぎる。逃げ回って体力も限界だ。この状況でアレに襲われたら、もうアウトだろう。俺はその場にへたりこんだ。
そういえば、アレは、あのガイコツ死神はどこだ?心臓がバクバクしてやがる。こんなの、俺が大嫌いな長距離走を走った直後以来だぜ。あー、嫌なこと思い出した。
そんな俺の体に、俺の心に鞭打つ。周囲を見渡す。暗すぎて見えないが、あのギラギラの赤い光も見えない。助かった、のか。
もう動けない。とにかく体力を回復させないと。ゼェゼェと悲鳴を上げる体を落ち着かせ、呼吸を元に戻そうとしたとき、
「ミツケタ・・・」
不気味な、この世の物とは思えない声に顔をあげると、ヤツが、ガイコツ死神がふよふよと浮かびながら、大鎌を構えて俺に振り下ろそうとしていた。
ここまで、か。無理だ。久中さん、ごめんなさい。俺はあなたを助けられず、ここであっけなく死にさらす運命のようだ。もう逃げる体力は残されていない。指一本動かせない。俺は、死ぬんだな。
走馬燈とはこのことか。両親がおらず、施設に預けられ、里親に預けられ、学校に行かせてもらえて。両親のことは遂にわからなかったが、優しい里親に育てられた。感謝の言葉を伝えられないのが心残りだ。
そして、久中さんに出会えたこと、よかったな。また、会いたい。会って、好きだと伝えて、デートしたい。デートするには・・・ここから生きて帰らないと。だけど、もう・・・。
目は瞑らなかった。今、俺を殺そうとしている大鎌が目前に迫ったその刹那、
「ヴオオオォォォッ」
突然、ヤツが赤く燃え上がり、奇妙な叫び声のようなものを発しながら、出鱈目に宙をまわりだした。骨なので表情はわからない筈だが、もの凄く苦しんでいるように見えた。やがて、そいつは地面に落ちて、燃えカスとなり、消えていった。
助かった、のか。俺を殺そうとした死神は、目の前で燃え尽きた。どうして助かったのかはわからない。何が、どうなっているのかサッパリだ。だけど、ひとまず危機は去った、ということか。
俺は、疲れている。疲れ過ぎて、その場で眠りに落ちた。普通、この状況で寝るなんて有り得ないんだろうが、今は何もかもが普通じゃない。俺の本能が、もう動けない、無理だ、と悲鳴をあげている。だから、寝よう。疲れ過ぎた。




