第19話
眼光鋭いレディは言った。
「そう警戒しないでちょうだいな。」
いや、無理だな。ガンガンに睨んでる。まあいい。こっちは教えてもらう立場だ。警戒を解こうじゃないか。
「失礼しました。マサツカといいます。メリッサさんからの紹介で参りました。よろしくお願いします。」
「あら、そんなにかしこまらなくても大丈夫よ。初めまして、私はアマンダ。目つきが悪いのは生まれつき。気にしないで。」
あ、生まれつきね。それは仕方がない。顔つきは普通変えられないもんな。うんうん。
「それで、何を知りたいの?私が知っていることなら、おしえてあげる。勿論、お金はもらうからね。」
「ありがとうございます。お金は用意しています。早速ですが、私と同年代位の、黒目黒髪で、名前はヒサナカ アイ、という女性を探しています。その人について、知っていることがあればお願いします。」
「ふぅーん・・・黒目黒髪。あなたと同じね。珍しい特徴だから情報があれば・・・」
そう言うとアマンダさんは、この部屋の奥にある扉に入って行った。
「なあメリッサ。変わった人ときいていたが、案外普通じゃないか?」
「いやいや、マサツカ君は随分と気に入ってもらえたようだね。アマンダさん、魔術師としても強いから、客の態度しだいですぐに攻撃して追い出しちゃうから。」
「意外と武闘派だな。・・・それは、客の態度に問題があるのでは?」
「あー、それもあるかも。私達商売人は、多少客が横柄な態度をとっても耐えるけど、アマンダさんはそういうことしないからね。気に入らなかったら即バイバイだし。」
そうであれば、職人気質なお姉さんといったところか。うん、嫌いじゃないな。
待つこと数分。重そうな本をかかえたアマンダさんが戻ってきた。
「お待たせ。残念だけど、直接の手がかりとなる物は無いわ。ただ、気になることがあるの。」
「気になること、ですか?」
「ええ。過去の記録だと、侵略者を打倒せし者、漆黒の勇者、とあるわ。あなたの言うこととの共通点は、黒ということだけ。正直、あなたの探している人かどうかわからない。」
「その記録はいつの物かということと、場所はわかりますか?」
「古すぎてわからないわ。ここ数年の物ではなさそうだけど。場所は、そうね。侵略者が拠点としていた場所についてなら書いているわ。おそらく、今の魔導国がある場所ね。」
魔導国、か。新しい情報だな。
「ちなみにアマンダさん、その本、見せてもらっても?」
「いいけど、多分読めないと思うわ。私でないと解読できないんじゃないかしら?」
アマンダさんから許可をもらって、その重そうな古びた本の中身を見た。
ホント、驚いたね。ここに来てよかったよ。メリッサとアマンダさんに感謝しよう。
「この大陸を我が物にせんとする、悪しき者が魔の国に現れし時、漆黒の勇者がその者を打倒した。その勇者、黒目黒髪の美しく気高き者。悪しき者を打倒せし後の行方は知れず。」
本の最後に書かれていたことだ。その他にはめぼしいことは書いていないように思えた。なんだ、スイスイ読めるじゃないか。
「どう?読めないでしょ?私も全てを解読できたわけじゃないし、もしかしたら私の解読も間違っているかもしれない。」
いや、間違っていないさ。そして、読める。何故ならこれは、
俺がいた世界の言葉で書かれていたからだ。これは・・・んー、どういうことだ?
「やっぱり、読めないでしょ?」
動きが止まっていた俺に対して、アマンダさんがそう声をかけた。
「そうですね。これはなんとも・・・」
これは・・・うかつなことは言えないな。もし、俺がこの本を読めるとなった場合、どうなる?そもそも、この本が過去の物なら、俺と同じように、俺がいた世界から来た人物がいたということか?また、わからないことが増えたな。
「せっかく来てもらったのに残念ね。お代はいらないわ。あなたの問いの答えを、私は持ち合わせていなかった。」
「いえ、そんなことはありません。魔導国に何かがあることがわかりました。私は、まずはそこを目指そうと思います。代金はいくらでしょうか?」
「そう。あなたがいいなら。そうね、銀貨5枚でどう?」
おおぅ、破格だな。なんと良心的。感謝します!
「それでは、銀貨5枚、確かにお渡しします。この度は、ありがとうございました。」
「はい、確かに。あなたの未来に幸あらんことを。」
ギギィ。帰りも、年季の入った扉のが俺を見送った。そして、日の光が俺を出迎えた。




